やらかしの125
残酷な表現があります、苦手な方は飛ばしてください。
「さて、3人を罠にかけるか。」俺は悪い顔をして言う。
「ボルガ、アッキーノ男爵、イッターイ男爵、そしてウツームーキ男爵がターゲットいと言う事で良いか?」
「はい、ケイジ様、其の3人が馬車の護衛の有無について知る者達です。」
「よし、馬車の用意は良いか。」
「はい、仰せのままに。」
「まず、アッキーノ男爵の馬車は、サランに任せる。」
「はい。」
「次に、イッターイ男爵の馬車はリアンに。」
「お任せください。」
「ウツ―ムーキ男爵の馬車は、俺が担当する。」
「宜しくお願いします、ケイジ様。」
「おぉ、ボルガ、今回で片が付くと良いな。」
「御意。」
「では、出発だ。」馬車が3方向に向かって走り出す。
半刻後に、連絡が入った。
「マスター、襲撃を受けています。」
「おぉ、サラン、制圧は可能か?」
「問題なく、制圧しますか?」
「許す。」
「はい。」
「終わりました。」
俺は、俺が乗っていた馬車にミーニャを呼んで、サランの所に潜った。
馬車の周りには、足が炭化した男たちが転がっていた。
「サラン、ご苦労。」
「いえ、マスターの為に。」
「さて、どいつがボスだ。」俺が辺りに転がっている男たちに問いかける。
「かははは、誰もお前達に屈しない!」一際豪華な鎧を着た男が言う。
「ほぉ。」俺は、その男の所に行く。
「見たところ、お前がリーダーだと言う事で良いか?」
「いや~、何のことかなぁ。」その男はとぼける。
「いや、違うならそれで良い、自分の足が炭化していて、ここは魔獣が出る荒野だと気付いているんならな。」
「げ!」
「まぁ、どのみちお前らは死ぬ事になるがな。」
「うぅ。」
「そうだなぁ、情報をくれるなら、死なないようにしてやっても良いかなぁ。」
「本当か?」
「あぁ、だが、暫くはと言う縛りが付くがな。」
「話せば、見逃してくれるか?」
「内容次第だな。」
「ダヨトの領主、ライダツマ様の依頼だ。」
「ライダツマはすでに死んでいるぞ。」
「え?」
「おいおい、情報は最新の物にしようぜ。」俺が言う。
「アッキーノじゃないのか?」
「何故それを。」その男が狼狽する。
「おまえ、もう少しポーカーフェースを心掛けろ、もう遅いけどな。」
「うぐぐ。」
「紫炎、全員を虚無の部屋に。」
「はい。」そこにいた全員が消えた。
俺は、御者に帰るよう命じて、馬車に戻る。
結局、他の馬車には襲撃は無かった。
イッターイとウツームーキは一応白と言う事だ。
ボルガの所に戻った俺は、ボルガに言う。
「なぁ、お前らの部下、酷過ぎないか?」
「面目ございません。」
「どうなってるんだ?」
「はっ、調べたところ、人事を担っていたものが、長年に渡り不正を行って、どうしようもない貴族の子弟を雇い入れていたことが解りました。」
「はぁ。」
「申し訳ご「膿を出そう。」俺が言う。
「は?」
「いい機会だから、王城の使えない奴らを一掃しよう。」
「それは。」
「出来ないか?」
「いえ、ケイジ様の仰せのままに。」
「とりあえず、アッキーノの処理だ。」
「はい、前と同じように。」
「俺が捕らえている者はどうする?」
「前回と同じように、市民の娯楽に。」
「解った、その時に無くなった四股は回復してやろう。」
「ありがとうございます。」
俺は、ボルガの肩に手を置く。
「何言ってるんだ、俺達はマブだろう。」くそ臭いセリフを言ってみる。
「ケイジ様。」ボルガがキラキラと輝く。
「おい、大丈夫か?」俺が心配してボルガに問う。
「はい、なんという高揚感、私ボルガはケイジ様の眷属に認められました。」ボルガが天を仰いで言う。
「え?」
(魔王種、難関攻略種の攻略を完了しました。)
(なんだそれ?)
(ケイジ様に下りながら、心から下っていない魔王の攻略イベントクリアです。)
(乙女ゲームのように言うな~。)
(事実です。)
(つまり、今、ボルガの真の忠誠が開花したと?)
(はい。)
(はぁ。)
「どうしました、ケイジ様?」
「何でもない。」
「そうですか。」と答えるボルガの視線が痛い。
*************
「なんで、王国の馬車を襲おうと思ったんだ?」俺はアッキーノ男爵に聞く。
「貴様には関係ない。」アッキ―の男爵が俺に悪態をつく。
「やれ。」俺が言う。
「はい。」ボルガの用意した処刑人がアッキーノの親指の爪の間に楊枝を差す。
「うぎゃっぁぁぁぁ。」
「五月蠅いな、早めに吐いた方が、苦しみは少ないと思うぞ。」俺は親切心で言う。
「この程度の苦痛、精霊紳様の教えを受ける苦しみに比べれば日常だ。」
「嫌なワードが聞こえた。」
「精霊紳?」
「ふははは、お前達でも祈れば色々な事を叶えて下さるぞ。」
「今、お前を助けてくれないのか?」
「ははは、精霊紳様はお忙しいので、この程度のことではご降臨されないのだ。」
「はぁ、そうか、解った、おい、処刑方法を変えるぞ。」
「貴様、今処刑と言ったな。」
「あぁ、拷問は止めた。」
「なぁ。」
「まず、指を間接ごとに切り落とすか。」
「げぇ。」アッキーノが狼狽える。
「加護の力で、繋いで貰え。」俺はそう言いながら、処刑人に右手の人差し指の第一関節をよく切れない挟みで切るように命じる。」
「うぎゃああああ。」アッキーノが絶叫する。
「う~む、なかなか切れないな。」そう言いながら、処刑人が、鋏の刃をぐりぐりとねじる。
「はぎゃぁぁぁ!」アッキーノが気絶する。
「起こせ。」俺が処刑人に言うと、アンモニアのようなものを嗅がせる。
「ふぐうう。」アッキーノが目を覚ます。
「指の関節は28、全部切る前に、正直に話してくれ。」俺がアッキーノに言う。
「くそう、くそう!」
「次だ。」その言葉で処刑人が中指の第一関節に鋏を当てる。
「まて、は、話す。」アッキーノが言う。
「なんだ、これからだったのに。」
「最初は、ライダツマ男爵と、テンダロイン男爵に話を持ち掛けられたのだ。」
「ほぉ。」
「曰く、王国の所属の荷物なら、強奪しても補填されるから問題無いと。」
「馬鹿かお前、それは国民の税で補填されるのだぞ。」
「最初は、一度だけで止めるつもりだった。」
「何で続けた?」
「ライダツマ男爵や、テンダロイン男爵が、その後何度も馬車を襲っても対策がされなかったからだ。」
「実際には対策されて、ライダツマ男爵も、テンダロイン男爵も鬼籍に入ったがな。」
「そうらしいな。」
「知らなかったから、馬車を襲わせたのか?」
「いや、二人が捕まったから、次の一回ぐらいは大丈夫だと。」
「奥さんたちは、この事を知っているのか?」
「いや、これは、私の一存で行ったことだ、妻や子は勘弁してやってくれ。」
「出来ませんね。」
「な、ボルガ様?」
「ライダツマ男爵家も、テンダロイン男爵家もお取り潰しになり、一族郎党奴隷落ちしました。」
「なぁ。」
「貴方にも、そういう記憶があるでしょう。」
「あぁ、すまない、●●●●●●!」アッキーノが妻の名前を叫ぶが、聞き取れなかった。
*************
翌日、アッキーノ、妻や妾、その子供達、そして4親等までの親類が先の処刑者たちと同じ様に、国民の娯楽になった。
俺は、バランの城のテラスで、眼下に広がる広場で開催しているお祭り騒ぎを見ながら、バランに言う。
「家臣の見極めを、ボルガばかりに押し付けるなよ。」
「わはは、我にはその才能がないらしいのでな。」
「ケイジ様、良いのです、バラン様はこの様なお人柄ですので。」
「凄いな、ボルガ。」
「な、勿体ない誉め言葉です。」
「俺が口を出す立場でもないが、ダヨトの領主はどうするんだ?」
「あ~、それな。」バランが困ったように言う。
「良さげな奴はいないのか?」
「いや、ボルガの息子のボルゲが良いと思うんだが。」バランが言うと。
「とんでもない、あ奴にはまだ、政は無理です。」ボルガが否定する。
「何故だ?」
「実務経験がありません。」
「ふむ、では補佐が要れば大丈夫と言う事か?」
「え?」
「俺の嫁さんに、適任がいるよ。」
「なんと。」
「1年で、使える奴にしてやろう。」
「お願いします、ケイジ様。」
*************
「ほほほ、ご主人様、此の者を政が出来るようにすれば良いのですね?」ヒドラが口元を扇で隠しながら言う。
「あぁ、そうだ。」
「ほほほ、ご主人様のお望みであれば、1年と言わず、半年で一人前に鍛えて見せましょう。」
「だ、そうだ、ボルガ。」
「おぉ、ヒドラ様、我が愚息、宜しくお願い致します。」ボルガが格上であるヒドラに最敬礼する。
「宜しくお願いします。」ボルガの息子、ボルゲも最敬礼をする。
「ほほほ、ご主人様のご依頼です、厳しく行きますよ。」
「はい、ご指導、宜しくお願い致します!」
「では、早速実務に行きます!」
「はい、ヒドラ様!」
ダヨトがどの様に繁栄するか楽しみだ。
*************
「見つけたぜ。」
「あぁ、これがそうだな。」
「ははは、これで、俺達は大金持ちだな。」
「あぁ、美味い飯、良い女、選び放題だぞ。」
「やったなぁ、あの古文書を信じたおかげだ。」
「俺が、手に入れたんだからな、俺が一番だぞ。」
「あぁ、譲ってやるよ。」
とあるダンジョンの最深部で、高位冒険者たちが話している。
そこにあるのは、虹水晶。
古の昔に、最強と言われた勇者が、倒しきれなかった最凶の存在を封印した物。
勇者により、何重にも封印されていたが、最凶の存在により長い年月をかけて、封印が解かれていた。
そして、冒険者たちが読んだ古文書は、最強の勇者の封印を見ていた勇者の仲間であった、賢者が書き記したもの。
それは、御伽噺として後世に語り継がれたもの。
「良し、取るぞ。」
「おぉ。」
冒険者が、それを手にする。
「綺麗だ。」
「あぁ。」
其の途端に、虹水晶が虹色に輝く。
「うぉ、何だ?」
「ふははは、お前達、我の糧になる事を許そう。」虹水晶から声がする。
「へっ。」その瞬間に、その冒険者がミイラ化する。
「なっ。」横にいた冒険者も、同じようにミイラ化した。
「ふむ、供物としては足りないが、受肉は出来たようだな。」最凶の存在が言葉を発する。
「地上に出て、糧を得れば良いか。」そう言いながらその存在は、服を魔法で生成して身に付けながら、地上に向かって歩き出す。」
「ふふふ、数百年ぶりの受肉か。」その存在が言う。
「この世は、どのような世界なのだろうな。」
「楽しませてくれれば良いのだが。」そう言いながら、その存在はダンジョンの出口を目指す。




