やらかしの119
「そう言えば、最近メームを見ないな。」
「メームなら、ベカスカの孤児院を卒院した男の子たちとパーティーを組んで、ベカスカのダンジョンを潜ってるにゃ。」
「そうなのか、ミーニャ。」
「はいにゃ。」
「そうか、タービに宜しく言っておかないとな。」
「なんでにゃ?」
「いや、殺すなってな。」
「主、顔が怖いにゃ。」
「よし、タービに会ってくるか。」
「ついて行って良い?」
「あぁ。」
「やった、主とデートにゃ。」
「んじゃ、行くか。」
「はいにゃ。」
「紫炎。」
「はい。」
俺はそこを潜る。
「久しぶりだな。」
「ダンジョン攻略の方は、こちらにお並びください、入場料はお一人様10Bです、ただ今の待ち時間は一刻です。」ギルドの受付嬢が声を上げる。
「おぉ、盛況だな。」
「はい、ケイジ様のおかげで。」アイリーンが言う。
「うぉ、どこから現れた、アイリーン。」
「ふふふ、ケイジ様が来ると聞いて、思わず来ちゃいました。」
「来ちゃいましたじゃねーよ。」
「で、このダンジョンにどのような御用で?」
「は?」
「まさか、ダンジョンを踏破しようとか?」
「違うよ、ここのマスターに挨拶しに来たんだ。」
「へ?」
「此処のダンマスは陸王タービだ。」
「そうなんですか?」
「あぁ。」
「知りませんでした。」
「あれ、言ってなかったか?」
「聞いてませ、あれ? そう言えば聞いたような。」
「だよなぁ。」
「では?」
「あぁ、踏破するために来たんじゃないよ。」
「安心しました。」
「何だよ、俺信用されてないな。」
「ふふふ、すみません、ケイジ様。」
「お待たせしました、次の方どうぞ。」
「おぉ、俺達だな。」
「はい、お一人様10Bって、ギルマス?」
「あぁ、私はおまけです、気にしないで。」
「あぁ、4人な。」俺はそこに40Bを置く。
「え? 3人しか?」
「あぁ、サラン。」
「はい、マスター。」サランが指輪から現れる。
「はぁ、サラマンダーの主体? あぁ、ギルマスの旦那様ですか?」
「あぁ、そうだ。」
「はひぃ、どうぞお入りくだしゃい。」
(盛大に噛んだな。)
「あぁ、ありがとう。」俺達はダンジョンに入る。
「アイリーンは初めてだな。」
「はい。」
「俺は常識外だから、引かないでくれよ。」
「はい、ケイジ様。」
「あぁ、前に入ったパーティーは何処だ?」俺はギルド職員に聞く。
「今、3階層です。」
「え? それじゃ追い抜いちまうな。」
「は?」
「悪いな、俺は最下層まで半刻で行ける。」
「え?」
「あ~、ケイジ様ならそうでしょうね。」
「な、ギルマス?」
「私の夫は、魔王を平定して、国王のバラン様の明友と国王自らが言う人。」
「はい、了解しました。」
「うん?」
「後半刻お待ちください。」
「解った。」俺はその横で待つことにする。
「ケイジ様、お飲み物はいかがですか?」アイリーンが聞いてくる。
「サラン、番茶を頼む。」
「はい、マスター。」
「何で私に言ってくれないのですか?」
「何度も言うが、お前のお茶は甘すぎる。」
「お茶は、甘いのが普通です。」アイリーンがぷんすかと言った状態で言う。
「そうなの?」俺は、受付のお姉さんに聞く。
「いえ、甘くないです。」
「だよなあ。」
「お待たせしまた、前のパーティが3階層で全滅しましたので、お入りください。」
「え? 全滅?」
「はい、全滅したパーティーのギルドカードを持ち帰っていただければ、ポイントになるのでよろしくお願いします。」
「いや、冒険者の命、安くないか?」
「「「「「「「「ぎやぁぁぁぁぁ。」」」」」」」」」
「いや、ケイジ様から聞いてはいましたが、本当に凄まじいんですね。」アイリーンが頬を引きつらせながら言う。
「あぁ、只の作業だ。」俺はそう言いながら紫炎にドロップ品を集めさせる。
「さぁ、只の散歩に行くぞ。」俺はそう言いながら2階層に行く。
サクサク進んで行き。三階層では冒険者たちのギルドカードを拾う事も出来た。
遺体や装備はダンジョンに飲まれたらしい。
ギルドカードは、ダンジョンに飲まれないように、ある術式が施されている。
「レベルはいくつだったんだろう?」
「お貸しください。」アイリーンが言うので、カードを渡す。
「ギルマス権限で、カード情報を開示します。」アイリーンはそう言うと、カードに触れる。
カード所有者:タロウ
ギルドランク:D 31G
「Dランクなら、レベルは10を超えてるよな、いったい何にやられたんだ?」
「お待ちください。」アイリーンは更に何かをする。
「サキュバスに眠らされて、そのまま精気を吸われたようです。」
「うん、苦しまずに逝けたのか。」
「その様です。」
「うん。」
*************
「ケイジ様、お久しぶりです、今回はどのようなご用件で?」タービが平伏して言う。
「あぁ、お前にお願い事があってな。」
「はぁ、恐れ多い。」
「メームと言う、俺の弟がこのダンジョンを回っているらしい。」
「はい。」
「殺すな。」
「はい、仰せのままに。」
「要件はそれだけだ。」
「申しつかまりました。」タービが腰を折る。
「では、宜しく。」
「ははぁ。」
「紫炎。」
「はい。」
俺達はそこを潜る。
「此処はダンジョンの入り口?」アイリーンが口にする。
「あぁ。ギルドに帰るなら送っていくぞ。」
「お願いします。」
「紫炎。」
「はい。」ギルドの前に繋がる。
「ありがとうございます。」アイリーンがそこを潜る。
「あぁ、ギルドカードだ。」俺は、全てのギルドカードをアイリーンに渡す。
「はい、承りました、カードを。」
「あぁ。」俺はアイリーンにカードを渡す。
「これを、決済して。」アイリーンは、ギルドカードを受付の獣人に渡す。
「はい。」
「遺品カード5枚、10Gです。」獣人が端末を操作して言う。
「カードの残金とかはどうするんだ?」
「家族登録がして有れば、その方にお渡しします。」
「していなければ?」
「カードを持ち帰った者への支払金に充てられます。」
「成程。」
*************
「兄者!」俺をそう呼ぶのは?
「メームか。」
「おぉ、久しぶりだ、兄者。」
「なんだ、一回りでかくなったな。」
「俺ももう、12歳だぜ。」
「ベカスカのダンジョンを回っていると聞いたが?」
「あぁ、こいつらと一緒に潜ってる。」そう言いながらメームは後ろの男たちを紹介する。
「お久しぶりです、ケイジ様。」見知った顔の男たちが俺に挨拶する。
「おぉ、久しぶりだ、頑張ってるか?」
「はい、今4階層に挑戦中です。」
「おぉ、凄いな。」
「兄者、俺は絶対に踏破するぞ。」
「おぉ、頑張れ、メーム。」
「おぉ。」
「あ~、ダンジョンマスターは、一応俺の配下だから、見逃してやってくれ。」
「え?」
「言ってなかったか? この辺のダンジョンは、俺の配下が管理してるんだ。」
「兄者、初めて聞いた。」
「別に、秘密にはしてないけどな。」
「ベカスカはタービと言う奴だ、俺の名前を出せばすんなりと終わると思うぞ。」
「解った、兄者。」
「メーム、困っている事は無いか?」
「あぁ、今は充実している。」
「そうか。」俺は、メームの頭を撫でる。
「うわ、子ども扱いしないでくれよ、兄者。」そう言いながら、メームの顔は赤い。
「ははは、悪かったな、メーム。」
「俺の頭を撫でて良いのは、兄者だけだからな。」そう言いながら頬を膨らませて横を向く。
ツンデレか?
俺はそう思いながら、食事に誘う。
「今から、飯にしようと思うんだが、付き合わないか?」
「兄者が言うなら仕方ない。」
「俺達も良いんですか?」
「勿論、何が食いたい? 何でもいいぞ。」
「俺、すき焼きが食いたい。」元孤児が言う。
「あ~、それにパオも。」
「ここ(ベカスカ)じゃ、食べられないもんな。」
「そのうち食えるようにはなると思うけどな。」俺が言う。
「兄者、俺は兄者が作る料理が食いたい。」
「ははは、メームは甘えん坊のままだな。」
「な、違う。」
「紫炎、華厳の店に。」
「はい。」
「お~、久しぶりだ。」
「またあれが食えるのか。」
「やばい、よだれが止まらない。」
「さぁ、行くぞ。」
「「「「「は~い。」」」」」孤児の顔に戻った男たちがそこを潜った。
「あっ、メームにゃ。」
「他にも、懐かしい顔が。」ムーニャとエルが声を上げる。
「あっ、エル久しぶり。」
「あれ? イロハ達もいる。」
「此処で、修業をしています。」
「へぇ~。」
「しばらく前まで、エスとフィンもいたけど、今は遠い町で店をやってるにゃ。」
「ふ~ん。」
「よく見ると、知らない人も増えてるね。」
「あぁ、エル達の婿候補だ。」
「え?」
「まじか。」
「俺、エル好きだったんだよな。」
「悪いけど、私とお店をやってくれる人でないと無理よ。」
「まじかぁ、今からここに見習いで入ろうかな。」
「おい、裏切るなよ、パーティーが駄目になるじゃないか。」
「良いんじゃないか?」メームが言う。
「おい、メーム本当になったら、駄目じゃないか。」
「好きな人と何かが出来るんなら、良い事じゃないか。」
「まぁ、華厳さんが雇ってくれればだけどな。」
「やる気があるなら、歓迎しますよ。」
「おぉ。」
「お前、料理なんかできるのか?」
「多少はな、冒険者なら普通だろ。」
「マジか、俺、出来ないぞ。」
「お前、野宿の時に材料しか集めてこないもんな。」
「メームの作る飯が美味すぎるんだよ。」
「俺は、兄者をずっと見てたからな。」
「メーム君とか、それもありだね。」エルがにっこりと微笑む。
「いや、俺はそう言うのは。」
「エルだけズルい、私も立候補する!」とエヌも名乗りを上げる。
「あたしはパス。」エムは興味無さそうに言う。
「何で?」
「だって、獣人の人ってすぐに死んじゃうから。」
「あ。」
獣人の寿命は、平均20歳。
メームは12歳だから、あと8年だ。
「あたし、何年も思い出を引きずって生きたくない。」エムが言う。
「あ~。」
「御免、私止める。」
「私も。」
「何で、俺が振られたようになってるんだよ!」
「メーム、ドンマイ!」
「だから、何でディスられてるんだよ!」
「お前ら、仲良しだな、さぁ、用意が出来たぞ。」俺はすき焼きやパオを用意して言う。
「メームにはこれな。」俺はバハローシチューをメームの前に置く。
「兄者、これは?」
「俺が最近作った、シチューだ、色は悪いが旨いぞ。」
「兄者。」何故か頬を赤く染めながらメームがそれをスプーンで口に入れる。
「はぅ。」
そして、肉の塊を口に入れ、更に固まる。
「!」
「あの、ケイジ様、俺もそれが食べたい。」
「俺も。」
「僕も。」
「おいらも。」
「あぁ、勿論良いぞ。」
「「「「やた。」」」」
「まだ、あれの再現が出来ないんだよな。」ユーゴが言う。
「あぁ、全く解らない。」ショウマも答える。
「リョウが言うには、野菜と肉のスープを合わせる物らしい。」ビーアが言う。
「色々試したが、あそこまで行けない。」
「このままじゃ、結婚なんて程遠いな。」
「誰が、この試練を最初に攻略するかだな。」
「負けないぞ。」
「勿論俺もだ。」
「で、お前ら、誰を狙ってるんだ?」ユーゴが言う。
「俺は、イロハだ。」ビーアが言う。
「え? そこに行くか?」
「だって、イロハは可愛いじゃん.」
「それは認めるが、良いのかな?」
「ロリ?」
「違う・・と思いたい。」
「僕は、エヌだ。」ショウマが言う。
「おっと。」
「ふくよかな女性は好みなんだ。」
「ほぉ。」
「そう言うユーゴは誰を狙ってるんだ?」
「エムかなぁ?」
「疑問系かよ。」
「いや、スレンダーな娘が好きなんだ、好きなんだけど。」
「あぁ、エムは、スレンダーって言うより。」
「ぺったんだな。」
「ぺったん言うな。」
「まぁ、あっちがオッケーしてくれないと、どうにもならないけどな。」
「それな。」
若者たちは悩みのスパイラルに陥っていた。
「頑張れ、お前ら。」俺はこっそりとエールを送った。
今回も、もう一話投稿します、よろしくお願いします。




