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やらかしの117

 ココノツになったので、俺はエスの店に行く。


「おはよう。」俺は店に入って挨拶をする。

「おはようございます、ケイジ様。」

「おはようございます。」エスとアルが作業をしながら答える。


「どんな具合だ?」

「ライシーに火を入れて、ポテトサラダと、オークカツの用意をしています。」

「エス。」

「はい?」

「まさか、毎回全部を用意していないよな?」

「してますけど。」


「弁当も、毎日変えよう。」

「でも。」

「大丈夫だよ、今日は他は何にするつもりだった?」

「一応、ハムと卵とコロッケを用意しています。」

「んじゃ、他のサンドウィッチは卵とレタとハムで、ランチはコロッケと、カレーと、オムライスにしよう。」

「コロッケと、ポテトサラダは良い組み合わせだな。」

「はい。」


「エス。」

「はい。」


「この辺りの仕込みも、孤児に任せれば楽にならないか?」

「そうは思いますが。」

「経費が馬鹿にならないか。」

「はい。」


「例えば、一人や二人だけなら?」

「あぁ、その位なら、ねえ、アル?」

「そうですね、僕の分をやってくれる感じで。」


「じゃぁ、明日はココノツ前に二人越させよう、アルはその分休んで良いぞ。」

「解りました。」


 エスは、サンドウィッチ用のオークカツを揚げている。

 その横で、アルが茹でたダンシャを一生懸命につぶしている。

「アル、全部潰さなくて良いぞ。」

「はい、判っているつもりです。」


 俺は、卵を50個茹でて、皮を剥いていた。

「地味な作業が疲れる。」そう言いながら無心に卵を剥いていく。

「剥き終わったら、卵をみじん切りに。」そう言いながら、風魔法で卵をみじん切りにする。

「終わったら、半分にマヨネーズと塩胡椒を入れ、みじん切りにしたタマネを入れてよく混ぜる。」そう言いながら、再び風魔法で混ぜる。


「卵の半分は、ポテトサラダに入れよう。」俺はそう言うと、アルが潰したダンシャを半分大き目の鍋に入れて持ってくる。

「これに、茹で卵、みじん切りにしたタマネ、薄切りにして塩で水抜きしたキュリを入れ、マヨネーズと塩胡椒を入れてこれもかき混ぜる。」そう言いながら、これも風魔法で混ぜた。

「よしいい具合だ。」


「エス。」

「はい。」

「今日のおにぎりの具は?」


「はい、梅干し、塩じゃけ、高菜にしようかと。」

「う~ん、塩じゃけは手に入れる算段は付いたのか?」

「ギルド経由で仕入れようと思っています。」

「う~ん。」

「たらこは?」

「たらこは、ここでも安く仕入れられます。」

「ほぉ。」

「高菜は、この地方の特産らしく、いくらでも手に入ります。」


「梅干しは?」

「それもギルド経由で。」

「在庫は?」

「2樽ほど。」


「じゃぁ、今日のおにぎり弁当は、梅干し、たらこ、高菜の混ぜご飯だな。」

「はい。」エスが頷く。


「「「「「おはようございます。」」」」」孤児たちがやって来た。


「おぉ、おはよう。」俺が言う。

「ケイジ様、昨日逃げた奴も連れて来たよ。」

「おぉ、ナギモ、ご苦労。」

「えへへ。」


「あの、昨日は逃げて御免なさい。」そこにいた少女が頭を下げる。


「あの、モツの処理方法を知らなくて、怒られると思って逃げました、ごめんなさい。」

「あぁ、別に怒っていない。」

「はい。」

「で、働く気はあるんだよな?」

「私でよければ。」

「何ができる?」

「解りません。」

「あ?」


「あぁ、リョウは言われた事は再現できるぞ。」ナギモが言う。


「ほぉ。」


「んじゃ。」俺は昨日エスが作ったパンを手に取って言う。

「これを再現しろ。」俺はそう言いながら、食パンを12枚に切っていく。

 そして、切った食パンに、常温に戻して柔らかくなったブッタを塗り、エスが揚げたオークカツをウスターソースに漬けて、ソースをよく切り、キャベの千切りを少し置いて、オークカツを乗せ、辛子を少し塗って、ブッタでコーティングしたパンを置いてカツパンを作り2個に切る。

 同じように、俺が作った卵を挟んだ物、ポテトサラダを挟んだ物、ハムとチーズとレタを挟んだものを俺が作り、全て半分にした。

「サンドウィッチは、水で戻したモウチクの皮に置く。」

「はい。」

「切ったモウチクをサンドウィッチの横に置き、レタを置いてポテトサラダを置いたら、モウチクで包んで、モウチクのひもで縛り、油紙で更に包んでサンドウィッチ弁当の完成だ。」

「解りました。」リョウがそう言いながら、それをやり始める。


「終わりました。」5薄ほどで8個のサンドウィッチ弁当が目の前に置かれた。


「いや、再現度凄いな。」

「ありがとうございます。」

「よし、リョウはパン在庫分全部で同じものを作ってくれ。」

「はい、判りました。」


「ナギモ。」

「はい、ケイジ様。」

「此処に、おにぎりを作る道具があるんだが。」

「はい。」

「見本を見せたら、楽勝か?」

「多分。」

「じゃぁ、具の用意な。」

「具?」

「おにぎりの中身だ、今回は梅干しとたらこな。」

「まず、たらこを焼く。」俺はオーブンに網を乗せ、オーブンを起動する。

「で、網が焼けたらたらこを乗せる」俺は網の上にたらこを15個乗せる。

「ちょっと、火から放して焼くのがポイントだ。」


「表面がぴちぴちいってきたら、裏返すポイントだ。」俺はそう言いながらたらこを裏返す。

「少し焦げ目がついたら、完成だ。」俺はそう言いながらたらこを皿に取る。

「梅干しは、種を取って。」そう言いながら俺は梅干しから種を抜く。


「で、型を洗って、良く拭いたら、軽く水を降って、塩をぱらぱらと振りかけ・・・」


*************


「最後にアサクで包んでおにぎりの完成だ。」

「おぉ~。」

「梅干しと、たらこは今の手順でな。」

「はい。」


「で、高菜は、ボールにライシーを入れて、高菜を刻んだ物を混ぜる。」

「はい。」

「これを、型に入れて、これで押し込んで、・・・」


*************


「で、このおにぎりを、モウチクに乗せ、漬物を横に添えてモウチクで包み、油紙で包んで、おにぎり弁当の完成だ。」

「はい。」

「じゃぁ、ナギモとワトリはおにぎり弁当を作ってくれ。」

「「はい。」」


「私達は何をやれば?」


「あぁ、ネーカとシーヘは在庫を確認して、不足しそうな物を発注してくれ。」

「え?」

「やったことないです。」


「あぁ、判らない事は俺に聞いてくれ。」

「はい。」

「食材だけでなく、備品や、消耗品もな。」

「頑張ります。」

(あれ? アルの存在価値が無くなってないか?)俺が思うが、気のせいとしておこう。


*************


「弁当は、サンドウィッチは30個、おにぎりも30個だ、どっちも80Bな。」俺が言う。


「おにぎりを2個くれ。」

「あたしは、サンドウィッチを2個。」

「俺は、おにぎりとサンドウィッチを一個づつだ。」


(ははは、戦場だな。)俺は思う。


「ケイジ様、完売しました。」ナギモが俺に報告する。

「よし、今からランチタイムだ。」


「今日は、オムライス定食とカレー、更に限定20食のオークカツカレーだ、勿論ラガー付きな。」俺が言う。


「やった~、俺、オークカツカレー。」

「120Bです。」サランが言う。

「おぉ、ここに置くぞ。」

「はい、確かに。」

「カツカレー定食お待ち。」俺がそれをカウンターに出す。

「うひょ~、これだよ、これ。」そう言いながらその男がそれを持って机に行き、食べ始める。

「うをぉ、マジで美味い!」その男は無心にカツカレーを口に運ぶ。


「あたしは、オムライス!」

「は~い。」ナギモがエスが作ったオムライスと、サラダの小皿、ラガーをお盆に乗せて提供する。

「サラダに付いている、まよねーずが好きなんだよね。」そう言いながら、女冒険者が席について食べ始める。


「ケイジ様、まよねーずって?」ナギモが俺に聞いてくる。

「後で、教えてやる。」俺がそう言うと、

「はい。」笑顔で答えてくれる。


*************


嵐のような、ランチタイムが終わった。


「さて、お前ら、食いたいものを食べて良いぞ。」俺の言葉に孤児たちが反応する。


「やた、あたし、オムライス。」

「私カレー。」

「あぁ、俺が特別にオークカツを提供してやる。」

「え? じゃぁ、オークカツカレー。」

「あたしも。」

「私も。」


「あぁ、今日は俺が密かに作っていた、デミグラスソースがあるから、オムハヤシでも良いぞ。」俺が言う。

「ケイジ様、でみぐらすそーすとは何ですか?」エスが食いついた。

「流石だな、エス。」

「はい。」

「肉と野菜の旨味を合わせたソースだ。」俺が答える。

「ふふふ、それも教えて下さるのですよね?」

「あぁ。勿論だ。」


(また、料理教室を開くのか。)俺は思う。

(参加人数が増えているのは、気のせいか?)


「じゃぁ、あたしオムライスじゃなくてオムハヤシ。」

「私も、カレーを止めてオムハヤシ。」


「う~ん、オークカツカレー。」

「あたしも。」

「あぁ。」俺はそれを用意する。

「わーい。」ナギモ達がそれを食べる。


(こいつら、意外に使えるな。)

(一週間でこいつらを使い物にする!)俺は心に誓った。


*************


「さて、夜の仕込みだが、ナギモ。」

「あい。」

「リョウに、オークのモツの仕込みを教えてやってくれ。」

「あい。」

「頑張る。」


「私達は?」

「あぁ、ネーカとシーヘは、料理を覚える気があるなら、給料は出ないがいても良いぞ、そうでなければ、イツツに来てくれれば良い。」


「料理を覚えたいです。」

「んじゃ、見て覚えろ、解らない事は聞く事。」

「はい。」


「エス、パオの準備。」

「はい。」

「シーヘとネーカは、パオを手伝え。」

「「は~い。」」


「ナギモは、モツの煮込みを作れ。」

「あい。」


「私は?」リョウが言う。

「みんなが作る物を見て覚えろ。」

「はい。」


 エスは、カレーを仕込む。

 リョウは、全てを見て覚えていく。


(天才かよ。)


*************


 5日後には、リョウはエスが提供する料理を全部再現した。


(マジか。)


「ケイジ様、終わりました。」リョウが言う。

 リョウは、他の孤児達が3刻掛かることを、1刻で終わらせた。

「リョウ。」

「はい、ケイジ様。」

「別の土地に行く気はないか?」

「はい?」

「いや、お前の技量があれば、もう少し修業すればと思ってな。」

「そうですね、ここに思い入れは有りませんので、問題ありません。」


「そうか、では、身支度を。」

「私物は全くないので、大丈夫です。」


「紫炎、華厳の店に。」

「はい。」


「これは?」

「俺の魔法だ。」そう言いながら、俺はそこを潜る。

 リョウは、一瞬だけ躊躇したが、俺に続いた。


「此処は?」

「あぁ、ヤミノツウにある店だ。」

「お店?」


「これは、ケイジ様。」華厳が奥から出てくる。


「あぁ、華厳。」

「はい、ケイジ様。」

「この娘を、ここで鍛えてくれないか?」

「はい、勿論です。」


「ムーニャ。」

「はいにゃ。」

「こいつは、リョウって言う、ここで修業させるから、色々教えてやってくれ。」

「はいにゃ。」


「あぁ、屋敷の一室を貸してやるから、その用意も頼む。」

「はいにゃ。」


「では、早速着替えるにゃ。」

「え?」

「その恰好は、この店では不釣り合いにゃ。」

「そうなの?」

「こっちに来るにゃ。」

「うん。」

「うんじゃないにゃ、店の中では、『はい、承り。』と言うにゃ。」

「はい、承り。」

「うん、うん、上出来にゃ。」そう言いながら、ムーニャがリョウを、店の奥の控室に連れて行った。


「華厳。」

「はい、ケイジ様。」

「あの娘、一週間でエスが作る料理と同じものを再現しやがった。」

「なんと?」


「ふふふ、鍛えがいがあるだろう?」

「同感です。」


「あぁ、それと、これは俺から華厳への宿題だ。」そう言いながら、バハローシチューを虚無の部屋から取り出す。


「この茶色いものは?」

「バハローシチューだ。」

「バハローシチュー?」


「あっ、ケイジ様が、また新しい料理を作ってる。」目ざとく見つけたエルが店の奥から走ってくる。

「え~、ずるい。」

「何かやる時は教えてって言ったのに。」エヌとエムも集まってきた。


「何か、美味しくなさそうな色です。」イロハ達も寄ってくる。


「ふふふ、まぁ、食ってみろ。」俺はそう言うと、スプーンを人数分取り出す。


「あ、ムーニャも欲しいです!」ムーニャも目ざとく見つけて走ってくる。

「あっ、デミグラスソース。」リョウがポツリと呟く。


「あぁ、それをもうちょっと改良したものだ。」

「へぇ?」リョウも興味を持ったようだ。


「あぁ、肉が人数分無いな。」俺はそう言いながら、追加で4皿を取り出す。


「さぁ、食べてみろ、主に肉を。」

「では。」

「「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」」華厳以下、そこにいた者達がそれを口に入れる。


「うぉ。」

「はぅ。」

「うへ!」


 反応はそれぞれ違うが、美味かったようだ。

 全員、争うように、口に入れている。


「肉が溶けました。」

「見た目で判断した自分が恥ずかしい。」

「ここまで。」

「これは、どのように作るのですか?」華厳が聞いてくる。


「宿題だと言っただろう、どうやったらこの味が出来るかを考えろ、次の料理教室はこれをやる。」

「はい、判りました。」


「肉の煮汁と、野菜の煮汁を・・」

「リョウ、カンニングになるから黙れ。」

「はい。」


「ぐふふ、ケイジ様、見事な再現です。」

「再現って言うな、ダンサ。」


「ぐふふ。」


「実は、魔法で時短が出来ることに気付いたんだ。」

「時短ですか?」

「あぁ、こいつ等には、ちゃんとした作り方を教えるが、俺はそれを30分位で作れる事に気付いた。」

「ぐふふ、流石はご主人様です。」

「内緒な。」

「ぐふふ、ぐふふ。」



本日、もう一話投下します。

宜しくお願いします。

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