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29話

 

 エントリーナンバー2『強欲剣アルバト』

 

 これはついさっき面倒を起こしてくれやがった問題児である。その能力は『コピー』。その鏡面に取り込んだ物体を、そっくりそのまま複数に増やす力を持つ。本体よりも明らかに大きい物も、吸い込むように取り込むことができる。

 

 そのせいで俺が二人に増やされてしまうという事件が起きた。もう一人の自分と戦うとか、物語のクライマックスあたりで展開される演出じゃないか。どうしてこんな序盤にぶち込んできやがった。

 

 そしてこの強欲剣、能力は『コピー』だけではないことが判明した。気がついたのは少し前のことだ。少しさかのぼって説明する。

 

 「クーデルカVSオリジナル俺」戦が終わり、七つの魔剣がオリジナルからドロップされた。そこで、その大量の魔剣をどうやって収納するかという問題が発生する。魔剣は二つ以上、装備することができない。持ち運ぶには、受領箱にしまうのが最も安心できる手段となる。

 

 オリジナルが死んだことで所有権がなくなったと判断されたのか、散らばった魔剣は俺の受領箱に収納できた。だが、受領箱には各魔剣につき一本しか収納できなかったのだ。俺がもともと持っていた『傲慢剣』『強欲剣』と、オリジナルが持っていた『傲慢剣』『強欲剣』、さらにコピーで増やされた『傲慢剣』……とてもではないが持ち運べる数ではなかった。

 

 そこでこの状況を作り出した元凶、『強欲剣』を再度調べることにした。物を増やせる能力があるなら減らすこともできるのではないかと考えたのだ。その結果、減らす方法は見つからなかったものの、強欲剣の新たな機能を発見する。

 

 形からして盾だと思っていた強欲剣だが、その持ち手側にギミックがあり、なんと盾の中に小ぶりの剣が収納してあったのだ。20センチくらいの短剣だった。刃の先端にイカの耳のような返しがついている。そのせいで逆に動作が制限されそうで、あまり実用的には見えない。矢印のような形をした変な剣だ。

 

 だが、この短剣の切れ味は、はっきり言って傲慢剣をも上回る。なぜならこの剣は空間そのものを切り取ることができるからだ。

 

 正確には剣で切るのではなく、剣を使って指定した範囲の空間を“収納”する。アイテムボックスの上位互換のような機能を持っていた。

 

 アイテムボックス、インベントリ、次元収納、色んな小説で呼び方があるが、この手の能力には制限が付くことが多い。容量の問題であったり、入れられる物の問題など、たとえば生物は入れられないというように。何でもかんでも生き物でも入ってしまうとなると、取り留めがつかない。

 

 が、この魔剣にはそういった自重がなかった。俺の眼前、見える範囲の森を一瞬で更地に変えてしまったときは、開いた口がふさがらなかった。魔物だろうが何だろうがもろとも別次元に収納してしまうのだ。ベルタはその光景を見てションベンをじょぼじょぼ漏らしていた。

 

 使い方もそう難しいものではない。短剣の刃先を切り取る対象の方へと向け、斜め横に滑らせる。すると頭の中に、切り取れる範囲の空間が浮かび上がってくるのだ。

 

 この操作方法は意外とすんなり理解できた。パソコンで使う『ドラッグして範囲指定』と同じ要領なのだ。どうして短剣の形が矢印型なのかもわかった。これはマウスポインタを象徴しているのだろう。

 

 ただ、奥行きの指定の仕方にはちょっと手間取った。どうしても平面的なイメージが先行してしまって、あまり遠くまで奥行きを設定できない。特に遮蔽物の多い森の中のような場所は奥行きがつかみにくい。要練習である。

 

 それに指定範囲が大きくなるほど収納が実行されるまでにかかる処理時間が長くなるようだ。手元の物を収納するくらいなら一瞬で済むが、先に述べた森を更地に変えた件では1分くらいの時間がかかった。

 

 このように多少の制限はあるものの、性能がぶっ飛んでいることは言うまでもない。そしてこの能力はあくまで“収納”。切り取った空間は取りだすこともできるのだ。この能力を俺は『カット&ペースト』と名付けた。

 

 今のところ、収納できる空間の量に制限は見えない。切り取った空間は個別に名前をつけて、フォルダ分けして管理している。パソコンに似た操作法なのだからできはしないかと試しにやってみたら、できてしまった。受領箱に入りきらなかった魔剣も収納して管理済みである。

 

 どういうわけか強欲剣を装備している間は、脳内でそういう風な処理が可能なのだ。強欲剣を装備から外すと収納物の情報は失われるが、装備し直すと情報も復帰する。

 

 以上が、判明した強欲剣の能力の全容である。『カット&ペースト』の能力はアイテムボックスの代用として非常に使いやすい。しかも攻撃にも転用できるときている。むしろ無差別に空間を切り取る非常識な攻撃性能こそこの魔剣の真価と言えるのかもしれない。

 

 それに加えて盾による『コピー』能力まで備わっている。戦闘以外でも多様な使い方が考えられる魔剣だ。

 

 ステータス強化:B

 攻撃性:A

 防御性:D

 特殊性:A

 精密性:D

 射程距離:B

 攻撃速度:C

 ペナルティ:A

 デザイン:C

 

 強欲“剣”と名がついているため、矢印短剣の方が本体になるのだろうか。見た目の存在感では盾の方に軍配が上がるが。そもそもなんで盾と剣のセットで扱われているのか気になる。強欲剣だけに欲張りセット、ということだろうか。

 


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