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20話

 

 俺は【受領箱】を発動し、登録リストを表示させる。

 

 

 ――――

 傲慢剣パロマイティ

 強欲剣アルバト

 嫉妬剣セファル

 憤怒剣アエシュマ

 色欲剣ヴェレノ

 暴食剣バンマリ

 怠惰剣ザウルヴァ

 ――――

 

 

 そう言えば、傲慢剣は既に装備しているが、この状態でリストの傲慢剣の項目をタッチしたらどうなるだろう。やってみる。ピッ

 

 すると、俺の腰に下げられていた傲慢剣が一瞬で消えてなくなった。その途端、空気が重量を増したかのように重くのしかかってくる。朝焼けの淡い日差しが、横殴りの業火のごとく襲いかかる。俺はうめき声をあげて暗い場所へと身を隠した。その様子はまさしくゾンビである。

 

 魔剣から与えられていた力が消えたのだ。今感じている状態こそ俺が本来持つ身体能力なのだろうが、到底信じられない。天と地ほどの別世界だった。

 

 身体的な変化だけではない。魔剣と引き離された精神が、生木を裂くような悲鳴をあげる。みなぎっていた自信が瞬時に消失し、その反動のように不安がなだれ込み、心を埋め尽くしていく。

 

 たまらず受領箱のリストをタップした。すぐに傲慢剣が箱から出てきた。魔剣が無事に手元に帰ってきたことに安堵する。呼吸が整い、平常心が戻って来た。

 

 もはや取り返しのつかないレベルで、俺はこの魔剣に依存しているようだ。片時も手放せない精神安定剤と化している。ごく短い時間なくなっただけで、こうまで取り乱してしまうとは。剣を持つ手が、まだわずかに震えている。

 

 少し落ちついてから考察に入る。どうやらこの【受領箱】は、登録リストをタップすると、該当するアイテムを箱の中に呼び戻す機能が備わっているらしい。箱にそのアイテムが入った状態でタップすると、外に取り出すことができる。ダブルタップで一発取り出しだ。

 

 つまり、魔剣が俺の手から離れてしまっても、受領箱を操作すればどこでも魔剣を呼び戻せるのだ。これは盗難防止に役立つ機能である。魔剣を全部呼び出してしまいさえすれば、ただの空き箱同然のスキルかと思ったが、これは地味にありがたい。

 

 気になるのは転送時間である。さっきは一瞬で転送できたが、ディートリヒと戦う前に呼び出したときは転送にかなりの時間がかかっていた。この違いは何だろう。距離が離れるほど転送にかかる時間も増えるということだろうか。

 

 あと、登録の仕方については相変わらずわからなかった。しかし、それならそれでいい。リストの変更が可能だと、うっかり魔剣の項目を削除してしまうなんて事故が起きないとは言い切れない。それなら最初から変更できない仕様である方が安心できるというものだ。

 

 今のところ、受領箱の機能でわかったことはこれくらいか。次はお待ちかね、新たな魔剣を呼び出してみるとする。どれを選ぼうか。どれも強そうではあるが……上から順番に見て行くか。

 

 強欲剣アルバトを選ぶ。

 

 

 ――――

 転送中…

 ――――

 

 

 なかなか出て来ない。何度タップしても音沙汰なし。やはり初回呼び出し時限定で時間がかかるのかもしれない。気長に待つことにする。

 

 傲慢剣を布切れで磨きながら待つこと数分、箱から吐き出された何かがボトッと地面に落ちた。

 

 「これが強欲……剣?」

 

 少なくとも剣には見えなかった。形状は盾に近い。扁平な御椀型の丸い盾、ラウンドシールドだ。片手で持つのにちょうどよさそうなサイズである。

 

 特徴はその盾の表に施されたコーティングだ。鏡のように光を反射している。のぞき込む俺の顔が鮮明に映し出されている。

 

 「……」

 

 ただ、凸面鏡になっているため、映っている俺の顔はへちゃむくれだった。まあ、目鼻立ちは整っているように見える。俺の顔の美醜については、またの機会にちゃんと確認しよう。

 

 要するに鏡の盾だった。思い出すのは、ギリシア神話で英雄ペルセウスが神々から与えられた青銅の盾だ。見た者を石化させる怪物ゴルゴンを討伐するにあたり、この磨き上げられた鏡の盾を使って直視することなく首を取ったと言われる。

 

 強欲“剣”じゃないのかよ、と思いつつ、盾なら盾で別に良い気もした。剣は傲慢剣パロマイティがあるからいいや。剣と盾、どっちも使えばいいのである。防具はあって困るものではない。よし、そうと決まればさっそく装備だ。俺は強欲剣……強欲盾を拾い上げる。

 

 バチィッ!

 

 「あだっ!?」

 

 電流のごとき衝撃が走った。静電気ってレベルじゃねえぞ。もう一度触ってみるも、やはりビリッときて触れない。よく観察すると、反発しあう磁場のようなものが発生している気がした。傲慢剣と強欲盾が反発しあっているのか?

 

 試しに強欲剣を手放しつつ、強欲盾を触ってみる。今度は何ともなかった。一度に二つを装備することはできないようだ。残念。

 

 強欲盾から力が流れ込んでくるのがわかった。傲慢剣のときと同じだ。ただ、高揚感みたいなものは特になく、かといって別に不安も感じない。良い意味で、精神的な変化はそれほどなかった。

 

 ステータスが強化されている感覚はある。傲慢剣を装備しているときと遜色はない。これだけでも強力な魔剣……魔盾であることは間違いない。だが、もっと何か秘密があるはずだ。

 


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