1話 「人生最後の記憶」
トゥルルル……トゥルルル……
「はい、もしもし」
『おう円、元気にしとるか?』
「うんまあ、それなりに。どうしたんだよ爺ちゃん、こんな時間に」
『実はな……お前に折り入って相談があるんじゃ』
「無理。じゃあ切るわ」
『待つんじゃ! なんじゃそのおざなりな対応は!?』
「だって爺ちゃん、いつも厄介事持ち込んでくるし」
『……確かにそうかもしれん。今回の相談は、お前にとっては重荷となるかもしれんものじゃ……』
「ど、どうしたんだよ。いつもの爺ちゃんらしくない」
『先日、病院で健康診断を受けた。そのとき、医者から言われたんじゃ……『お前の寿命はあと』……』
「そんな、まさか……!」
『30年くらい……』
「十分天寿を全うしとるわ!」
『わしも、そろそろ老い先短い。その前に、どうしてもお前に譲り渡したい家宝があるんじゃ』
「え、家宝? なんで俺に?」
『わしの跡目を継げる者はお前だけじゃ。この家宝は我が家に伝わる由緒ある逸品。その名も“七業剣”』
「そ、そんなのがあるんだ。知らなかった。いったいどんな由来のある品なんだ?」
『先月、ネトオクで買った』
「歴史もクソもねーよ! もう電話切るぞ!」
『待て! これが凄いお宝であることは本当じゃ! ただし、恐ろしいほどの邪念が込められた妖刀、魔剣の類であることに間違いない。現に、所有者であるわしの命も危険にさらされておる』
「妖刀て……馬鹿馬鹿しい」
『本当なんじゃ! わしの(財)力をことごとく使い込んでしもうた……このままでは(婆さんに)殺されてしまう……!』
「なんかボソッと小声で言わなかったか?」
『頼む! 少しの間でいい、わしの代わりにこの“七業剣”を預かってくれ!』
「やだ」
『もう郵送しといたぞい』
「このジジィ……!」
『おじいさん、誰と話をしているんですかねぇ――』『はっ、しまった婆さんが来た!? とにかく後は頼んだ!』
プツッ
「もういいや……ねむ…………ねよ……」