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勇者探偵~Fantasy・Quest~  作者: Posted
3/3

不運のCastle!!悲しみのShout…

今回も更新が遅くなって申し訳ありません……読んでくださってる方には本当に感謝しています。

俺と神様が着地した草原から一時間程歩き、ようやく街らしきところに到着した。日頃から嗜んでいる……いや、嗜み過ぎていると言ったほうが語弊がないようなタバコのせいでボロボロになった肺にはキツすぎる道のりだった……


「ついたわよ、ここが始まりの街『エリーゼ』。奥に大きなお城が見えるでしょ?あれが王様のお城よ」


神様の言う通り、RPGゲームにありがちな中世ヨーロッパ風の家が軒を連ねている城下町の奥のほうに、とても謙虚とは言い難い派手な城が見える


「見えるな、バッチリと。まぁ…ありがちな城だな」


それより俺はこの街が栄えていることに驚いた。大勢の人々で賑わい、とても魔王の手が迫っているとは思えない。

商人達は皆「へいへい!安いよ!お買い得だよ!」などの台詞を声を張って叫んでいる。まるで大阪の商店街のようだ…


「お城のデザインなんかどれも似たようなものよ。それより葉巻とか買わなくていいの?タバコの代わりになるかは分からないけど……」


神様が指を差したところをよく見ると葉巻屋があった。だが今は金がない……

ゲームというのだから魔王討伐の前にクエストやらなにやらをクリアして金を貯めるしかない


「こんなとこで金は使ってられんだろ…

装備とかも整えなくてはならんのだし。心配してくれてるのは有難いが…」


「ふーん。だったらこの機会に禁煙してみれば?」


「それは……」


難しい……そう言おうと思ったが……医者からも禁煙を勧められていたのを思い出した。確かにそろそろやめるべきか…


「……そうだな。やってみるか…禁煙」


口に出してしまったからにはもう撤回はできまい。俺はやると決めたらやる男なのだ


「じゃあ私が見張っておいてあげる!こういうのは周りの人の協力も大事って聞いたことがあるし」


思わず「物知りだな」と呟いたが神様なので当たり前なのだろうか。それにしても神様に禁煙を手伝わせるというのは些かバチ当たりの様な気がするが


「お、おう!頼むぜ」


断るのも無礼だろうし、喜んで手助けしてもらおう


「それじゃあお城に行くわよ!できればあんまり粗相はしないでね。ま、神様の私は別だけど」


粗相か、俺だって礼儀ぐらいは心得ている。伊達に縦社会の警察にいたわけじゃない


「んなことはわかってる。下手なことはしねぇ」


そんなことを言っているのに神様にこんな口を叩くのはおかしいと思うだろうが、これは性分である。ライオンなどの肉食獣が常に肉を求めるのと似たようなものだ


「わかってるならよし!じゃあ行くわよ」


俺は頷いて、先に歩き出した神様の後ろについて歩き出した。

そういえば神様の名前をまだ聞いていなかったな。後で聞いてみるか………


◇◇◇


俺と神様は、珍しい…いや、神様には別に珍しくもなんともないのかもしれない昔のイギリスだかどこかを参考に作られたであろう街並みを眺めながら城への道を歩き、今現在、眼前に巨大な城を捉えてた。門もないとはなかなかに警備が手薄だな


「大きいわねー。目の前だと余計に大きく感じるわ」


神様は城を見上げてそんな感想を漏らした。確かに大きい、首が痛くなりそうだ


「そりゃ城なんだから大きいだろうさ。そんなことよりさっさと入ろうぜ」


とは言うものの正直こんな城は始めて見たので興味津々である。しかしこれは所詮ゲーム、虚構なのだ。だが些か……俺の中に存在する少年心を掻き立てるものがある


「はいはい。どんだけ早くクリアしたいのよ?もうちょっと楽しめばいいのに」


楽しむか、確かに……楽しんだ方がいいかも知れん。軽い旅行に来たのだと考えれば…よし、なかなか楽しくなってきたぞ


「……そうだな。最近そんなに良いことが無かったから少しネガティブになってた様だ」


「そうそう。人生楽しんだもん勝ちよ!」


お前が言うな。俺はその言葉をグッと押し殺した。元はといえば……俺が金に目が眩んであの怪しい依頼人の依頼を受けたのが悪かったのだ…一概に神様が悪いというわけではないしな


「そうかもな。神様のおかげでちょっとポジティブになれたぜ!よっしゃ!

王様のとこに突撃だ!」


なんだか急に楽しくなってきた。こうなったらこのゲームの世界を漫喫してやるぜ!!


「その調子よ!楽しもう楽しもう!」


そう言って城の扉に近づくと、扉の前に立っていた兵士らしき二人組の一人が話しかけてきた。厳つい男だ、きっと番兵かなんかだろう


「貴様!なにものだ!名を名乗れ!」


怖っ!つーか高圧的!


「あ、えと……ケイジです。コガネイケイジ。ちょっと王様に用があって…」


「私はパーティメンバーです。ちなみにジョブはウィッチよ」


神様はあくまで普通のプレイヤーとしていくのか。ウィッチって魔法使いのことか?だとしたらただ英語にしただけじゃないか


「パーティ……ということは勇者希望の者か…ふん!まぁいい中に入れ」


こいつただの番兵にしちゃあ随分偉そうだな。俺は勇者だぞコンチクショー。そんなことを思っていると、ギィィィという大きな音がして扉が開いた。


「おぉ……」


城の内部を見て俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまった……

恐らく金を豊富に使っているのであろう装飾品の数々、天井に吊るされたシャンデリアの様なもの、大理石のようなものでできている床と壁。

形容するならばフランスのベルサイユ宮殿の様だ……


「案内してやる。ついてこい」


すっかり悦に入っていた俺に厳つい番兵がニヤニヤしながらそう言ってくる。何か面白いものでも見せてくれるのだろうか?否、なにか嫌な予感がするがついていかない訳にもいかないので素直についていくしかない


「ねぇ、ケイジ。いったい何がおかしいのかしらね?あの番兵まだニヤニヤしてるわよ」


歩きながら神様がヒソヒソと俺に尋ねてきたので「そんなこと俺が知るか」

と返す。我ながら無愛想だと思うが本当に知らんのだからしょうがない


「なにをヒソヒソしているかは知らんがついたぞ。ここがローレン王の部屋だ」


バレていたようだ。だがまぁ別に悪いことを考えていた訳ではないので悪びれる必要もないだろう。王様の名はローレンというのか、覚えておこう


「失礼します、ローレン王。勇者希望の者を連れてきました」


番兵が扉を開け軽くお辞儀をしながらそう言った。開け放たれた扉の向こうには玉座があり、そこには王冠と赤いマント、よくゲームで見るような王様の服を身に付けている小太りのじぃさんが座っていた。だがその顔は呆れに満ちていた


「ふむ……またか」


またか……とはどういうことだろうか。

普通勇者が来たとなれば希望に満ちた表情で「よく来たな勇者よ!!」ぐらい言ってもらえるものではないのだろうか。神様も少し困った顔をしているし、事情を知らないのは俺だけなのか


「正直もう勇者はいらんのだ……今まで何人の人間が勇者になったことか……

君達の国を救おうとしてくれる気持ちは有難いが、もう十分なのだ。勇者は増えすぎた」


これか!あの番兵のニヤニヤの理由は!くそったれぇ!

俺に込み上げてきたのは驚きではなく怒りだった、あの番兵はこのことを知っていて俺たちを連れて来たのだ……


「すまないがお引き取り願う。その代わりとしてはなんだがこれを君に授けよう」


王様は申し訳なさそうな顔で何かを持ってこっちに近づいてきて、その何かを俺に手渡した。なんだこれは?ポーチか?


「これは無限ポーチ。勇者になる者には私から一つだけ授けているのだが、これはなかなかの優れものだぞ。なんとこれはどんなアイテムでも好きなだけ入れられるというものなのだ。大事に使ってくれ」


俺は王様から貰ったポーチをポケットに突っ込み、開けっぱなしになっている入り口に向かって走り出した。

もう勇者は十分だとぉ?ぶざけんじゃねぇぇ


「あ!ちょっとどこ行くのケイジ!!」


もう知らねえぇぇ!!いいぜ!勝手に魔王ぶっ倒して勝手に家に帰ってやらぁ!!


「もう!あの馬鹿!!」


△△△


思わず飛び出して変な路地裏に迷い混んでしまった……

くそっ!まさか勇者にすらなれねーとは…俺には正義の味方は似合わねーってことか……?


「はぁ……タバコでも吸うか……」


あ……無いんだった……しょうがない、

禁煙の約束を破ることになるが、少ない金を消費して買ってくるか……


「おいおっさん!」


いつの間にか目の前に一人の若い男が立っている。

こんな路地裏じゃあチンピラにからまれるのもしょうがないか……ってそんな冷静になってる場合じゃねぇ!


「ちょっとだけぇお小遣いくれねぇか……いや寄越せよおっさん」


まずいな……目が逝ってしまっている……

それに手に持ってるのはナイフか……フフフ、俺をただのおっさんだと思うなよ!警察で培った護身術を今こそ使う時だ!!


「嫌だね…お前に金をやるぐらいなら溝にでも捨ててやるぜ……!」


「そうかよぉ!じゃあ死ねよぉ!!」


男はナイフを俺につきつけながら突っ込んでくる。ここで重要なのはパニックにならないことだ。ただ俺は素手、刺される覚悟も必要だが……


「くっ!!」


俺は男の突撃を間一髪のところで右に避け、ナイフを持っている男の右手の手首を左手で掴み捻り上げると男は「ぐぅ!」と短い悲鳴を上げナイフを落とす


「離しやがれクソジジィがぁ!!!」


「そうかい!じゃあ離すぜ!」


俺は男の頼みを快く受け入れ男の右手首を掴んでいた左手を離し、右手に拳を作り思いきり男の顔面を殴る。くそジジィとは失敬な……俺はまだ20代だ!


「おらァ!!」


「がぁっ!!」


顔面に拳を受けた男は2、3歩後ずさったあとバタンッと仰向けに倒れた。

警察で培った護身術は使っていないがまぁいいだろう、怪我もしてないし


「ふぅ……むしゃくしゃしてたんだ、悪いな。やんちゃすんのはいいが程々にしとけよ。後々痛い目見るぜ」


俺は倒れている男に少しばかりの謝罪と人生の教訓を述べ早々にその場を後にしようとしたが「あ!やっと見つけた!」という聞き覚えのある声が聞こえたので後ろを振り返ると、神様が近づいてくるのが見えた


「もぉ~これどういうことよ!いい年して喧嘩!?」


これは弁解するしかなさそうだ……

まったく災難だな俺は。勇者にはなれずチンピラにはからまれ……


「いやいやこれはこいつが絡んできたんだよ!ナイフ持ってやがったんだぜ?正当防衛だろうが!」


この神様が信じるか信じないかは別としてこれは真実だ。まぁ憂さ晴らしも兼ねてだが……


「そうなの?それならしょうがないけど……でもね!勝手に出ていくってのはどういうことよ!!王様ポカーンとしてたわよ!!」


そうだった……その問題もあったんだった……


「うっ……それは…すまない…」


これに至っては謝ることしか出来ないが誰だって勇者になれなかったらむしゃくしゃしてしまうことだろう……


「でもまさか勇者が多すぎて勇者になれないなんてね……やっぱり自我を持たせたのは失敗だったかしら……」


ううん??なにか今神様の口から驚きの一言が出たような……自我を持たせた?どういうこった……


「自我を持たせたってどういうことだ?」


ゲームでいわれるNPCと呼ばれるものということだろうか……だからあんなチンピラが……


「簡単に言うとね。ちょっとでもゲームを楽しんでもらうためにNPCって呼ばれるものに自我を持たせてより現実に近くしたってことよ」


なんと……神様というだけあってそんなことが出来るとは……だがさっきから俺に巻き起こる不幸はこれが原因ともいえる…まさにありがた迷惑この上無しである


「そいつぁ……いいんだか良くないんだか……」


少なくとも俺にとっては悪いことばかりだが……


「でも良いこともあるのよ!!リアリティを追求したことによってまるで異世界に来た気分になれるし!あんたぐらいよ嫌がってるの!」


そりゃあ勇者になれた奴らはいいだろうな……それに思い出してみればステータスも絶望的だしな……あれ?俺の攻撃力って1じゃなかったか?なんで一撃で

チンピラを倒せたんだ?なにか違和感が……


「ちょっと聞いてるの!?」


おかしい……なにかがおかしい!!!


「ちょっとぉー!………あ……れ?なに……これ……」


「ヒヒヒヒヒヒッ!!お前が悪いんだぜぇ……お前が俺を怒らせたからぁ!!」


違和感の正体は……これか……やはり、俺はこいつを倒せていなかった……そのせいで…神様が……


「うぁぁぁぁぁぁ!!!!!神様ぁあああああ!!!!」


俺は……なんてことを……俺は……俺はぁ……!!!


路地裏に絶叫が響き渡る……だが、返す声はない……聞こえるのは……男の笑い声と……小金井の悲痛な叫びだけ……







































































































































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