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空へ

「がぁぁぁぁぁ!?またやりやがったなァ!?」


格納庫の中で激怒の声が響いた・・・いやもろ外に漏れてるんだが。


「だぁぁぁうっせぇぇ!大体このエンジン、旧式使ってアガッ!?」


一人の男が一気のレシプロ機から転がり落ちる。


「いっ・・・てぇー・・・」

「旧式だろうが、お前さんは大体新品でもぶっ壊すだろうが!」

「はぁ!?こう見えて慎重なんだぞ俺!?」

「調整中に地面すれすれの背面飛行しだす奴が言うんじゃねぇ!」


転がり落ちた男の名前はヴィンス、今回の飛行機レースに出場することになった。

彼の所属するチームはニトロジプス、まだできたてほやほやの新米チーム。

さっきから怒鳴り散らしているのはおやっさんことジフ、かなりうるさい。


「あんだけの機動に耐えられないと駄目だからテストしてんだろ!?」

「あぁー!?テストメニューに組み込んでねぇだろうが!?」

「飛行中にエンスト起こす事自体おかしいだろ!?羽無かったら墜落してたぞ!?」

「あぁー!うっせぇ!!組み直すからあっち行ってろ!!」



「はぁぁぁ~・・・」


デカいため息が出る、

無茶は承知なのだが持久力が無いと本当に駄目なのだ。

エアレースではコース上に設置されたパイロンを通り抜けるのだが、かなりキツい機動をする。

そのためには機体も頑丈でないと見事に空中分解する可能性があるのだ。


(おやっさんはちゃんと考えてんのか・・・?)


整備班長であるおやっさんの事がますます信頼できなくなっている。


(こないだはスタビライザーがイかれたからな・・・)


色々と考えているうちに眠たくなってきたので寝ることにした、


(明日には組み終わってるかな・・・)



幼い頃、親父に連れて行ってもらったレースがある。

ワールド・エアレースカップ、全てのエアレーサーの憧れだ。

大空を翔る飛行機達、俺はそれに憧れた。


俺も・・・あんな風に自由に飛びたい・・・

そう思ったのだ。



「おぉぉぉぉぉぉい!組んだぞおぉぉぉぉぉ!!」


ベッドから転がり落ちる。


「うっせぇぇぇぇぇぇぇ!!」


ともかく格納庫に戻るとする。

すると、目の前には新作の組み上げたての機体がたたずんでいた。


「すっ・・・げぇぇ・・・」

「ガハハハハ!自信作だ!」

「マジかよ・・・」


全てが磨き上げられたような機体、

この時、改めておやっさんが腕利きのメカニックという事を確信した。


「おやっさん・・・乗って良いか?」

「あたりめぇよ!こいつはそんじょそこらの機体じゃねぇからな!」


早速できたての機体を外に出す。

大きな翼を持った機体は太陽の光に照らされて光る。

その存在感は、ハンパじゃなかった。


機体がセットされ、準備は整う。

ヴィンスは乗り込み、ジフは見守る。

エンジンがかかり、プロペラが回る。

そして、(自信作)は大空に飛び上がった。

機体がぐんぐん空へ引っ張り上げられる、高く、大空へと。


「コイツは・・・いける」


機体が縦に一回転する、その後2分間の背面飛行。

ヴィンスはとっさに無線機を手に取り、嬉しさのあまり叫ぶ。


「おやっさん、コイツはいい機体だ!最高だよ!」

「そんなこと、前からわかってらぁ!今までの機体はデータ取り用の機体だからなぁ!」

「はぁ!?・・・俺はテストパイロットだったって事かぁ!?」


ヴィンスはやられた・・・と思いながらも少し誇らしい気分になった。


「おやっさぁぁぁぁん!」

「何だぁうっせぇ!?」

「今から存分に乗り回すからなぁ!!」

「自由にやれぇ!」


その後、ヴィンスは1時間近く乗り回し帰ってきた。

機体から降りたヴィンスは、ジフと最高の瞬間を、ハイタッチをして分かち合った。


「おやっさん、コイツの名前、考えたんだよ」

「ほぅ、そいつは何だ?」

「フェニックス、不死鳥だよ」

「大げさすぎじゃないのか?お前が壊さなければ不死鳥かもしれんがな!」

「ハハ、違いねぇな!」


二人の歓談は夜遅くまで続いたという。

夢を語り合い、野郎ども(スタッフ)と楽しく食事をし、そして。

皆と固く約束を交わした。


・・・ワールド・エアレースカップに出よう、と

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