ある夏の日のわたしのぬけがら
本日(2016/1/17)、小説家になろうに入門した者で、これが処女作になります。
読んでくださった方、感想頂ければ幸いです。
01.大切にしているもの
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私には、大切にしているものがある。
それは、特に珍しいものでは無い。
値段がつくものでも無い。
綺麗でも無い。
私にとっても、それは宝物と云えるものでは無い。
しかし大切に保管してある。
その中には、あの日の私が居るのだから。
02.一日目
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7年前、私が8歳だったときのこと。
それは、夏休み最後の週の夕方のことだった。
夕方の神社。斜めに振り下ろす茜色の光。
明るいような暗いような。
迫る夏の終わり、私は物足りなさを感じていた。
私はたまたまそこで見つけた。
地面を動く殻を見つけた。
そう、蝉の幼虫だ。
私はそれを自分のものにしたくなった。
両の手で覆い、自分のものにした。
私は家に向かって駆け出した。
茜色の光は沈み、暗くなっていった。
私は、動く殻をコンクリートの地面に置き、籠で覆った。
03.二日目
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次の日、籠の中を見た。
私は自身の目を疑った。
そこに居たのは背を向けた白い蜻蛉。飛び立つ気配はなかった。
びっくりして、籠で覆った。
04.最終日
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その次の日、籠の中を見た。
中に居たのは蝉だった。それは飛び立った。
抜け殻を残して。
それは夏休み最後の日だった。
05.わたしのぬけがら
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私は物足りなさを感じると、抜け殻を手にとって眺める。
物足りなかった夏の終わりに味わったわくわく。
それがこの抜け殻には籠っているのだ。
-------------------------------------------------------------------終---
『蝉は、成虫への脱皮直後は真っ白です。蜻蛉みたいな形してます。』というのをこのときに初めて知りました。そのときの抜け殻を大切にしているというのを文章にしてみました。