表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある夏の日のわたしのぬけがら

作者: 鯣 肴

本日(2016/1/17)、小説家になろうに入門した者で、これが処女作になります。

読んでくださった方、感想頂ければ幸いです。

01.大切にしているもの

------------------------------------------------------------------------


私には、大切にしているものがある。


それは、特に珍しいものでは無い。

    値段がつくものでも無い。

    綺麗でも無い。


私にとっても、それは宝物と云えるものでは無い。

しかし大切に保管してある。


その中には、あの日の私が居るのだから。


02.一日目

------------------------------------------------------------------------


7年前、私が8歳だったときのこと。

それは、夏休み最後の週の夕方のことだった。


夕方の神社。斜めに振り下ろす茜色の光。

明るいような暗いような。


迫る夏の終わり、私は物足りなさを感じていた。


私はたまたまそこで見つけた。

地面を動く殻を見つけた。

そう、蝉の幼虫だ。


私はそれを自分のものにしたくなった。

両の手で覆い、自分のものにした。


私は家に向かって駆け出した。

茜色の光は沈み、暗くなっていった。


私は、動く殻をコンクリートの地面に置き、籠で覆った。


03.二日目

------------------------------------------------------------------------


次の日、籠の中を見た。


私は自身の目を疑った。

そこに居たのは背を向けた白い蜻蛉。飛び立つ気配はなかった。


びっくりして、籠で覆った。


04.最終日

------------------------------------------------------------------------


その次の日、籠の中を見た。


中に居たのは蝉だった。それは飛び立った。

抜け殻を残して。


それは夏休み最後の日だった。


05.わたしのぬけがら

------------------------------------------------------------------------


私は物足りなさを感じると、抜け殻を手にとって眺める。


物足りなかった夏の終わりに味わったわくわく。

それがこの抜け殻には籠っているのだ。


-------------------------------------------------------------------終---






『蝉は、成虫への脱皮直後は真っ白です。蜻蛉みたいな形してます。』というのをこのときに初めて知りました。そのときの抜け殻を大切にしているというのを文章にしてみました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ドーナツ化 穴にしみいる 蝉の声 心がドーナツ化した人たちにぜひ読んでほしい文章ですね。 僕はあらゆる賞に縁がありませんが、哀川産と思われるカブトムシ(ゼブラ柄に反応する)を捕まえて、哀川さ…
[一言]  セミはどのような思いで飛び立っていったのでしょうか?
2018/12/31 22:03 退会済み
管理
[良い点] 夏の日、羽化のときに神秘的な姿を見せる蝉、何気ない日の感動がそのまま文章に込められていて、良かったです。 [一言] ありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ