二章 オーロラ夢計画
「千歳くん、雅先輩のこと、どう思いますか?」
教室に戻ろうとした僕に、川田さんが聞いてきた。
「え・・・。星をよく知っていて、尊敬できるなぁ。。って思うよ。」
「私もなんです!!自分で、星をよく知っているつもりだったのに・・・雅先輩の話聞いてたら、こんなの、知っているに入らないと思えたんです!!」
満開の笑顔で川田さんは、言っていた。
話し終えると、「では」と走って行ってしまった。
僕も教室に入り、机に座った。
そういえば、あれで部員は、全員なのか・・・?本当に。
したら、廃部にはなぜならなかったんだろう。
もしかして、卒業した先輩たちが、多く入っていたからだろうか。
たった4人の部活を残しておくなんて、なんか秘密があるんじゃないか・・・?
部活に入って、いきなりなぞが生まれてしまった。
‘天文学部‘立派な部だ。
特設ではないのは確か。
ちゃんと部活の欄に入っていた。
この学校の特設は、水泳、陸上、合唱。
この3つだけなはず・・・。
でも、そんなに深く考えなくても、大丈夫だろう。
僕はそう思いながら、次の授業の準備をした。
そして、お昼。
今日は、部活について話したから、部室に来てほしいと、雅先輩に言われた。
僕は、弁当を持って部室に向かった。
「こんいちわ〜・・・」
僕がドアを開けると、
「いらっしゃい!千歳くん!!」
そう言って、本棚の本に、手を伸ばして、一冊の本をとった。
「これよ。これ。千歳くんたちにぜひお話したいと思って。」
雅先輩は、大切そうに、その本を抱きかかえた。
僕は、部員のことを聞こうかと迷ったけど、結局聞けなかった。
そのうち、川田さんと、佐々木さんが入ってきた。
「みんなそろったわね!じゃあ、それぞれのいすに座ってね。」
僕らは、雅先輩に指定されたいすに座った。
雅先輩は、本の項目を開き、
「まずは・・・流れ星。」
そう言って本の項目を閉じて、話し始めた。
「夜空にいきなり現れ、流れて消える流れ星。
でもいつも空にある星が、あんな速さで流れたりする
とは思えないでしょう?
いったい流れ星はどんな物なのか、知ってる?
その正体は宇宙空間に散らばっている小さなチリ
なの。そのチリにも、直径1mm〜1cmの
小さなものから、とても大きなものまで様々。
そんなチリが、地球の重力に引かれて地球
に飛び込んできて、地球を包んでいるんでいる大気
ぶつかるわ。そこでおよそ秒速10km〜70kmくらい
の速度で地球に落ちてくる。
すると大気との摩擦でチリは燃え、光を放つ。
実際に光り始めるのは地上約100kmくらいで、消えるの
は地上約70kmほど、ほとんどが地面に落ちる前に
燃え尽きるの。しかしごく一部に、燃え尽きずに
地面まで落ちてくる大きな流れ星もあるわ。そのよう
な流れ星は火球や大火球と呼ばれているの。これはチリ
ではなく、岩や鉄の塊が地球に落ちてきたもの。
そして、燃え尽きずにそのまま落ちるのが隕石よ。」
僕らの席を回りながら、先生のように話した。
「そして見て?この星の種類。」
雅先輩は、本を縦長い机にバタンお置いて、指差していった。
「えっと、これは、M1 (NGC 1952)
Crab nebula かに星雲
1054年に出現した超新星の残骸で、おうし座超新星の当時の記録が中国や日本などに残されているわ。 距離は約6500光年、大望遠鏡で見るとカニの足のように見えることから「かに星雲」と呼ばれているの。
次は、M13 (NGC6205)
Globular cluster 球状星団
ヘルクレス座の腰の辺りに位置する、 美しさでは全天一といわれる北天最大の球状星団で、距離は22000光年、50万個もの星が含まれる大集団で、実直径は約100光年におよぶもの。
そして、M15 (NGC7078)
Globular cluster 球状星団!
天馬ペガススの頭の先にある、大きくて明るい立派な球状星団よ。M15には変光星が多く含まれ、今までに100個以上も発見されているの。1928年には、球状星団で初めて内部に惑星状星雲が発見されているわ。
もっとあるのよ。
M27 (NGC6853)
Dumbbell nebula 惑星状星雲 あれい(状)星雲
こぎつね座にあるのよ。リング星雲(M57)の約5倍の広がりを持ち、その姿が鉄あれいの姿に似ていることから、あれい(状)星雲と呼ばれているを。星雲の大きさは、100年間に6.8''ほど大きくなっているの。距離820光年!!
そしてそして・・・
M31(NGC224)
Andromeda galaxy アンドロメダ大銀河
この星雲の実体は、私達の銀河系より大きい4000億個以上の星の大集団で、銀河系のすぐお隣、約230万光年のところに浮かぶ渦巻き銀河ね。」
淡々と得意げに、星のことを話している。
「雅先輩は、つきには興味ないんですか?」
川田さんが、彗星の写真を指差し、質問した。
「う〜ん・・・あんまりないかな沙穂ちゃんはあるの?」
「いいえ。つきよりだんごです!」
川田さんは、意味の分からない言葉を吐き出した。
つづいて、雅先輩は、
「星座なんてどう?」
とペラペラと本のページをめくった。
川田さんは興味津々に見ている。
佐々木くんも本をじっと見つめている。
「春に見れる星座は、主に、かに座、しし座、おとめ座ね。もっとあるけど、みんなが知っているのはこのくらいね・・・
夏は・・・いて座、てんびん座、ヘラクレス座ね・・・こうしてみると、ホント綺麗だわ〜」
途中途中に、雅先輩のコメントが入る。
「秋は、山羊座、みずがめ座、うお座ね。そういえば、千歳くんは、みずがめ座よね?」
「あ、はい。」
「私、みずがめ座、結構好きよ。」
本来ならば、お世辞に聞こえるこの言葉が、雅先輩に言われると、お世辞には聞こえなかった。
「冬は、、、ふたご座とおうし座かしら。あら?沙穂ちゃんと、修二くんは、ふたご座よね。メブスタとメクブタにはさまれていていいわ!」
僕らには、何のことを言っているのか、全然分からなかった。
「あなたたちには、もっと星のことを知ってほしいと思ってるわ。いつか、みんなでオーロラを見にいきましょう!」
「オーロラって星なんですか?」
「いいえ。オーロラにも興味があるの!」
そして、オーロラのことを、雅先輩は、もっと知りたいといっている。
「簡単に言ってしまえば宇宙から飛んでくる電気を帯びた粒子が、地球の大気と衝突し、そのエネルギーが光になったのがオーロラ発生の仕組み。
この電気を帯びた粒子は、もちろん太陽から飛んできたりするわ。この太陽から放たれる粒子の中には、電気を帯びたガス、陽子、ヘリウム、酸素、炭素などのイオンから成っており普段は、毎秒400キロのスピードで地球の大気に衝突してきするけど、磁気嵐のときは、毎秒2000キロのスピードで地球に迫ってくるの。
この放たれた粒子達が、私たちの地球の大気にある酸素と衝突すると淡い緑色、窒素と衝突では、青色に光を発するの。
昨今のオーロラツアーで「太陽の活動が活発な今がチャンス」とよく見受けられますが黒点活動は、出現率は、あまり関係はないわ。どちらかと言えば出現率は、磁気嵐の発生等に関係し、黒点活動は、高緯度で見ることの出来る確率に関係してきて、
すなわち、オーロラの出現は、気まぐれ。旅行会社のコピーにあまり踊らされないでね。」
それだけ知っていれば、十分だと思うくらいなのに、もっと知らなきゃいけない。といっている。でも、本当にオーロラを見れたら、一生の思い出になるだろう。
きっと。
一生の思い出に。
って、何を夢のような話をしているんだ・・・!!そんなの、雅先輩の妄想に決まってる。
なぜか、一日もしないのに、雅先輩を、知っていた。
分かりやすい人なのかもしれない。
僕は、この先輩を、もっと知りたいと思った。