世は無情
パラレルワールド、異世界。
今と違う、空間も場所違う所。
そんな場所が実在するか…
誰にも解らないし、無いと断定も出来ないであろう。
そして、そこは存在した。
数多の星系を持つ星雲。
その星雲の中心にはイドと言う場が。
そこは悪しき情念の吹き溜まり。
イドを取り巻く様に存在する星系より破棄された邪念渦巻く地。
古来より星系を管理する神々が、星系にて生まれた悪しき情念を破棄する場である。
その悪しき情念が溜まると、イドは破棄した星系へと悪意の塊を吐き出す。
ゴルゴラである。
ゴルゴラに襲われた星系は消滅。
無に返り、新たなる星系が育まれる事となる。
そのサイクルが長きに渡り繰り返されて来たのだが…
ある日、ある星系の神々がゴルゴラを撃退に成功する。
ハーディアン。
聖戦の始まりである。
その繰り返しで安定したかに見えたのだが…
星系にて生きる生物が吐き出す悪意。
それは、星系が長きに渡り存在する程に悪化する。
徐々に巨大化するゴルゴラ。
とてもでは無いが防ぎ切れ無くなる。
そんな時、隣の星系の神々から助っ人が!
相互協力が生まれた瞬間だ。
それがキッカケとなり、星雲内の星系を守る神々の交流が始まる。
イドがゴルゴラを吐き出すのは年に一度。
吐き出す周期が決まっている。
故に次のターゲットになる星系も、自ずと決まる訳だ。
対象となる星系へと神々が集まり、ゴルゴラを撃退。
それが決まり永久の年月が流れる。
だが…
再びイドが荒れる。
いきなり3つのゴルゴラを吐き出したのだっ!
予定の星系と、その近隣星系へと吐き出されるゴルゴラ。
ハーディアンの時、来たれり!
神々は協力してゴルゴラを辛くも退けるのだった。
そして再び、時は流れる。
今、正にゴルゴラが放たれんとするが…
今の神々は昔の神々では無い。
イド観測機関。
イドの状態を把握し、各関係神へと情報を伝達する神々の機関である。
そのイド観測機関から警告が発せられた。
イドにて異変有りと。
それはイドにて蠢き姿を変えるゴルゴラ。
今まで吐き出されていた3つのゴルゴラ。
それがイド内で渦巻き、1つの巨大なゴルゴラへと。
さらに異変は続く。
今回のゴルゴラはイド内にて蠢き渦巻いている。
それはイドに溜まる悪意を吸い上げ巨大化。
この侭で吐き出されたら、ターゲットにされた星系と周辺の星系が根こそぎにされるであろう。
聖戦ハーディアンが、今、正に再び始まる!
各星系から優れた戦士が選ばれ送り出される。
この度の巨大ゴルゴラは、イドの半分以上を抉り取り飛来するのだ。
イドは力を失い、当分はゴルゴラを吐き出さなくなるであろう。
ゴルゴラに脅える日々が終わるのだ!
だがイド観測機関の予測では…
もしゴルゴラ討伐に失敗した場合、破壊された星々の断末魔がゴルゴラと合わさり、更なるイドへと変わると言う。
1つでも持て余していたイド。
それが2つに!
正直、星雲が滅亡する序章。
そう思えてならない神々。
だが、そんな悲観的な神々ばかりでは無い。
「何を悲観する必要があろうかっ!
此度のゴルゴラを討伐すれば、当分はゴルゴラに脅える必要の無い世界へと変わるのだぞっ!」
そう息巻くのは、武の神筆頭のハルゴである。
少し脳筋な所がある彼は、イドの消滅を推し進め様とした事で有名。
彼の父である主神ガウヌトにイドの必要性を説かれ、議論に。
結局は父の意見に従い鉾を収めたが…
どの様に暴走するか解らない危険な神。
そう神々から恐れられている。
そんな彼と意気投合する神々も。
そして質が悪い事に、その様な神は武神である事が多い。
この度の巨大ゴルゴラ討伐の要だったりする。
だが…
「正直に言いますと…
討伐隊の神力では巨大ゴルゴラに及びません!」
会議場で発言するはイド観測機関の長、ルイドラである。
彼自体の神力も高く、その神力をしてイドの状況把握に勤めているのである。
そんな彼が選抜した討伐隊の力量不足を指摘。
議会は大荒れとなる。
そんな中、1柱のひ弱な神が告げる。
「神砲を使えば良い」
っと。
彼は発明家であり天才。
いや、鬼才、奇才とでも言えば良いのか?
彼が作った道具により、神々の生活が豊かに。
そんな彼はドクトル。
そう、ドクトル・マフィラナ。
別名マッド・ドクトルとも呼ばれる、マフィラナである。
そんな彼が告げる神砲とは…
単純に神力を弾に込めて打ち出す大砲である。
但し、込める神力は圧縮してストック。
このストックした神力弾へ、次々と神力を纏わせる。
そして、その力を放つ頃には巨大ゴルゴラを滅する力も得ている。
だが一度放てば威力に耐えかねて、砲は崩壊する。
だから、一発勝負となるだろう。
行う事は実に簡単である。
神砲で放つ砲弾へ限界まで神力を込めるだけ。
だが、その神砲の原料が問題である。
砲自体を構成するオリハリコンも希少だが…
「ラナの雫石とガルナーサの角神化石…」
「此方はプラティオンとブルーギルナと…」
「幻の神花トーナリアの密にシュリフォーンの角の粉末…」
「稀少な物ばかりではないか。
これを今から集めよと?」
困った様にマフィラナを見る。
どれも稀少過ぎて、手に入れるのが困難。
とてもでは無いが、集めて造るには時間が足り無いであろう。
それに稀少過ぎ、加工する材料にするなど、とんでもない事だ。
神々から失笑を受ける、マフィラナ。
だが…
「?
集める?
造る?
何を言っておるのです?
既に神砲と砲弾は出来ておりますが?」
マフィラナが不思議そうに。
「「ふぅんわぁっ!?」」
議会場に居た神々がハモる。
「神龍ザッナの髭を?」
「幻鳥フェニの卵堅殻をかぇ?」
「ドフマフェフへ1万に1度だけ降振る神雨が降った翌朝、朝日食のみに咲くドルムンハイドの蜜に混ざった朝露をかい?」
その他、諸々の稀少素材のオンパレード。
「アェーッ」
奇声を発して倒れる女神。
「あぶぶぶぶぶぶっ」
蟹の様に泡を吹き出し白眼を剥く老神。
阿鼻叫喚である。
この世界の秘宝、至宝と呼ばれる物ばかり。
それを一発の砲弾の原料へ。
失われた秘宝、至宝は戻らない。
神々にとっては悪夢である。
それをマフィラナは不思議そうに眺める。
何を騒いでいるのか?
そんな顔だ。
実はマフィラナ。
オリジナルを元に神力を原料としたコピーを行う機械を造りだしている。
だから使用した材料は、幾らでも手に入れる事が出来たりするのだが…
ただ、それが知れると色々と厄介な事になる。
今迄の経験で、それを知っているマフィラナ。
なので稀少素材を使用して砲弾を造ったとしか告げない。
「静粛にっ、静粛にぃっ!」
ガンガンガン!!
木槌が振り下ろされ、音が鳴り響く。
「稀少素材を、ふんだんに使用しておるが…
素材を集めたのは本神。
それをトヤカク告げる資格など無いと知れっ!
しかしじゃ。
それだけ稀少な素材を集め造った砲弾じゃ。
使用したら二度と造れるかどうか…
使用しても…
良いのじゃな?」
問われ。
「構いません。
その砲弾の性能が知りたいので。
砲弾へ込められる神力の限界は、私が判断します。
出来るだけ良質な神力を多く込めたいので、協力願います」
その様に告げるマフィラナであった。
この会議場へ来ているのは、神力の質も量も優れた者ばかり。
なので会議場に居る者全員に、砲弾へ神力を込めて貰う。
そして議会場に居た神々の神力を空に。
それでも砲弾が神力で満たされる事はなかった。
「なんと言う物を造るのじゃ」
限界まで神力を吸い取られ、蒼色吐息の議長。
会議場は、まるで死屍累々である。
「まだまだ足りませんね。
これは神獣や聖獣にも頼みますか」
楽しそうに告げるマフィラナ。
力尽きた神々を放置して、行ってしまう。
なかなかに鬼畜である。
そして数日後…
星雲の各地で神力を強奪する様に、砲弾へ神力を込めて移動するマフィラナ。
普通は、そんなに速く移動する事は不可能。
だがマフィラナが発明した移動マシーンならば可能だった様だ。
無論、未発表の移動具。
その存在さえ知られていない道具である。
そんな不思議道具を駆使して神力を集めたマフィラナ。
再び神々の会議場へと、姿を現した。
その間にゴルゴラはイドの中で成長を続け、何時イドから吐き出されてもおかしく無い状態になってた。
議会場は緊迫した雰囲気に包まれており、気の弱い者なら耐えられ無い程。
そこへ、のほほんと入場して来るのがマフィラナである。
議会場へ入ると同時に告げる。
「限界ギリギリ迄、砲弾に神力が貯まったよっ!
コッチの神砲にも十分さ。
後は射撃が上手い者が神力を注いで砲のトリガーを引けば、何時でも発射可能だよ」
マフィラナが砲弾を提示する。
それをイド観測所、所長のルイドラが確認。
「こ、これはっ!
この砲弾ならば、十分に巨大ゴルゴラを撃滅できますぞっ!」
興奮して告げる、ルイドラ。
悲壮感が漂っていた会議場。
一縷の希望を見いだした瞬間である。
問題は、誰が射出するかである。
神砲の射程は長く無い。
なのでゴルゴラへ接近して神砲を発射。
その後、急速離脱を行う必要がある。
一応、ハルゴが名乗りを上げている。
だが彼はパワータイプ。
スピードは、さほどでは無い。
その為、選から漏れてしまっていた。
そして星雲中にて候補を選別。
光速移動可能な神レキレウサスに白羽の矢が。
レキレウサスは元来大人しく気弱な神。
荒事には向かないタイプである。
そんな彼は選ばれて蒼くなる。
断りたいが、既に決定として告げられるのだった。
「け、決定って…
よりによって、何で僕なんです?
ゴルゴラの討伐って、神術を打ち出しゴルゴラを滅するのがメインですよね。
時にゴルゴラが放たれる悪意が象った化け物から術者を守ったり…
僕には、そんな事は出来ませんが?使者にゴルゴラ討伐に選ばれたと告げられ、レキレウサスが発した一言目である。
その事には使者も気付いてはいた。
だが神砲の事は極秘事項とされ、使者にも詳細は告げられていなかった。
だが…
「その様な事は知らん。
だが、これは議会にて決した事。
拒否する事は出来ぬとしれ」
そう威高に言い渡す。
使者である彼も、そこそこの実力者。
そんな彼はゴルゴラ討伐を許されていない。
なのに、ひ弱な弱神が選抜。
使者である彼からしたら納得しかねる事態である。
レキレウサスからしたらトバッチリの八つ当たりに近い。
堪ったモノでは無いだろう。
だが断る事も出来ない。
泣く泣く議会へと出頭する、レキレウサスであった。
レキレウサスが議会へと出頭すると、議会中央へと立たされる。
まるで査問会に掛けられる罪人である。
(僕…
何かしたっけ…)
レキレウサス、涙目。
そんな彼にマフィラナが告げる。
「遠路遙々、我が移動マシンにての出頭ご苦労。
調査によるとだね」
一拍間を開け、続ける。
「君が星雲にて一番遠距離を速く移動出来る者と聞いているんだが…
間違い無いかね?」
マフィラナが尋ねると…
「確かに長距離を瞬時に移動できますが…
私は持てる物を長距離搬送するか、伝達を行う位しか出来ませんが?」
何で呼び出され、査問の様に尋ねられているのか理解出来ないレキレウサス。
そんな彼にマフィラナが告げる。
「もう直ぐ巨大なゴルゴラがイドより吐き出される。
この度のゴルゴラは1つ。
だが…
3つのゴルゴラが融合し、イドの半分近くを巻き込んで巨大化したゴルゴラでね。
従来の討伐方法では、とてもでは無いが討伐不可能だろうね。
そこで討伐に採用されたのが、我が作品である神砲なのだがね。
実はコレ、射程が短いのだよ。
故に射程圏まで高速移動でき、高速離脱できる者が必要になっている訳なんだが…
此処まで言えば分かるよね?」
マフィラナが告げると…
レキレウサスは合点がいった様に頷く。
(確かに、それならお役に立てそうですね)
内心ホッとしながら、そんな事を思うレキレウサスであった。
「つまり、その神砲とやらをゴルゴラへ放ち離脱すれば宜しい訳ですな?」
その様に。
「そうなんだ。
ゴルゴラより放たれた悪意を避けて接近でき、更に神砲を放った後に高速離脱できる者が居なくてね。
神砲から放たれた砲弾がゴルゴラに飲み込まれた後、恐らく巨大な爆発が発生するんだよ。
このゴルゴラを滅する爆発に巻き込まれずに逃げるのは、至難の技だろうね。
君には神膜発生機を貸与するからね。
この機械で発生する神膜。
これによりゴルゴラへ接近する際の悪影響を防げる筈さ。
何せ、歴代最高クラスの戦士が張る神膜の数十倍の精度を誇る神膜を発生する機械だからね。
多少の悪意は避けなくても弾くからさ」
ケタケタと笑いながら告げる、マフィラナ。
議会メンバーは困った様な呆れた様な目でマフィラナを見る。
未だに公開されていないマフィラナの発明品。
それが1つ公開された訳だが…
彼が知らせていない技術は、どの位隠されているのか…
未だに謎である。
議会からレキレウサスへとゴルゴラ討伐に対する勅命が直接下される。
今日は、これから装備に関しての説明が行われ、明日にはゴルゴラ討伐の任へと向かう事になるだろう。
議会場からマフィラナに伴われ退出するレキレウサス。
外へ出ると、マフィラナのエスコートにて別室へと。
「いきなり議会へ招集されて驚いただろ?」
そうマフィラナが告げる。
「ええ。
正直、そうですね。
しかも招集日が今日じゃないですか。
今日中に移動する術など思い付きもしませんでした」
困った様にマフィラナを見る。
「正直、私が住む星系は星雲の外れです。
議会場などがあるこの地区へ今日出頭と言われましても、普通は無理です。
それなのに、なんですか、あの乗り物はっ!
ピガソスもワイドラも引かない乗り物。
しかも乗ると、自分の意志で乗り物が動く。
こんな奇異な乗り物があるなど、初めて聞きましたよ、私は」
「はは。
ゴメン、ゴメン。
アレは僕の発明品でね。
まだ世には出して無いんだよ」
そんな事を告げる。
「そうなのですか…
しかしですね。
私には、あそこまで速い動きは出来ませんが?
星雲の魔反対から此方への移動。
イドを避ける必要がある為、迂回しての移動。
それで、あの距離をあのスピードにて移動で移動ですか。
ゴルゴラへ神砲にて一撃を与えるのに、あの乗り物を使用した方が良く無いですかねぇ」
その様にレキレウサスが告げると…
「君は勘違いしてるよ」
マフィラナが諭す様に。
「あの乗り物は確かに速い。
だが、小回りが効かない。
しかもだ。
急激な停止は難しいのだよ。
停止する為の制動距離が長いんだ。
スピードを落としている間は、無論無防備だ。
そうなるとだ。
神砲にて砲弾を放てる射程圏に入る前に、ゴルゴラに補足されるだろうね。
それだと困るんだよ」
マフィラナが説明するとレキレウサスも納得。
そして漸く、神砲の使い方や注意点についての説明が。
とは言え操作方法は、さほど難しく無い。
だから気楽に操作を覚える。
そして神膜発生装置も装着。
何時でも出れる状態に。
「空腹では力が出ないだろうから、先ずは腹拵えをしよう。
ゴルゴラが吐き出されても、直ぐに星系へ到達する訳じゃないさ」
そう告げながら部屋を出る。
レキレウサスは神砲を肩から掛けている状態である。
「現地には乗り物で送るから。
そこから単独で乗り込んで貰うよ」
お気楽に告げながら食堂へ。
食卓には、様々な神界の食材を駆使した料理が並ぶ。
この会議場がある都には、各神界からの食材が持ち込まれている。
此処は全星系の者が集い、星雲の行く末を決める場。
そこには、全ての星系から神々が集まっていた。
その為、各々の神が己の神界から食材や調味料などを。
自分に合った神食を摂りたい。
そう思っての事だが…
お陰で議会場がある星系では、全星系の食材が集まる事に。
料理の神々も訪れ、新たな料理を生み出していく。
此処は、その様な場所なのだ。
故に食卓に並んだ料理は、絢爛豪華と言って差し支えなかった。
正直レキレウサスは料理に気圧される感じで口に。
「ウマッ!
これ、旨っ!」
驚きながら食すのだった。
レキレウサスが食していると…
ルイドラが現れ告げる。
「つい先程、ゴルゴラがイドから吐き出された。
巨大故、何時もより動きは遅いと言える。
だが…」
そこで言い淀む。
何かが発生した様だ。
「実はレキレウサス殿が選ばれたと知り、ハルゴ殿が暴走しましてな。
全武神と神力の強き神々を従え遠征してしまったのです。
以前にマフィラナ殿が納めた品、[ハーディアナ]
あれを引っ張り出して遠征に向かっております」
困った様に。
「うっわぁ~
あれって、まだ残してたんだぁ~」
マフィラナ、ドン引き。
「その[ハーディアナ]って?」
レキレウサスが不思議そうに。
「聖戦ハーディアンの切り札として開発したんだけどね。
術者が放った神術を反射圧縮して放つ装置なんだ」
「あれ?
それがあれば、神砲は要らなくないですか?」
再び尋ねる。
それにマフィラナが困った様に…
「いや…
実は欠点があってね。
一定時間内に[ハーディアナ]へ神力を込める様に放つ必要があるんだよ。
込める箇所は決まっているから、短時間で大量に術を込めるのは困難なんだよね、あれ。
単独で放つよりは強い術にして放てるけど…
とてもじゃ無いけど、今回の討伐に使用できる物じゃ無いんだ」
その様に。
するとルイドラが告げる。
「実は[ハーディアナ]の理論を元に、術を待機させて掛け合わせる技術が考案されましてな。
ただ10の術までしか掛け合わせる事ができず、維持可能な時間は限られておるようですな。
ですので、実用的かと申せば首を傾げる所なのですが…
この度の[ハーディアナ]への術込めには、実に有効でしょう」
その様に。
「それでルイドラ殿は、[ハーディアナ]にて巨大ゴルゴラの討伐が成ると?」
マフィラナが懐疑的な雰囲気で尋ねる。
それに苦笑しながらルイドラが応える。
「恐らくは無理でしょうな。
ですが、ゴルゴラの足を止める事は可能な筈です。
神砲を放つタイミングには絶好かと」
ニヤリと。
「ふふふふふっ。
ルイドラ殿も神が悪い。
んっ?
術を留め掛け合わせる。 その様な高度な術を構築可能な神は限られる筈ですが…
私が知る限り数人。
その中にはルイドラ殿も含まれますなぁ~」
不信げに。
「ふふふふふっ。
なかなかマフィラナ殿は鋭いですな。
あの連中は、放っておいたら碌な事をしませんからなぁ~
上手く誘導して、此方の手伝いをさせるしかありませんから」
ニッコリ笑って。
「うふふっ。
ルイドラ殿も、なかなかの悪ですなぁ~」
そうマフィラナが告げると…
「ふっ、何を仰る」
ルイドラが、さも可笑しそうに。
「[ハーディアナ]が埃を被って保存されている情報を流したのは、マフィラナ殿でしょ?」
「おや?
バレておりましたか?」
「バレバレですな」
「では、お互い様という事で」
「そうですな」
「「わっははははっ」」
(なんて神達なんだ…)
レキレウサスが呆れ、冷や汗を流しながら思うのも仕方あるまい。
見事に踊らされたハルゴ。
武神達と協力神を伴い布陣していた。
レキレウサスはマフィラナに伴われ、乗り物でゴルゴラへ突入可能エリアにて待機である。
そんな事になっているとは思わないハルゴは、既に術を展開。
順次[ハーディアナ]へ術を込めていた。
「何が神砲ぞっ!
戦をした事も無い神に何が出来よう。
この戦いの成否は我らにありっ!
この[ハーディアナ]にて、ゴルゴラを滅してくれ様ぞっ!」
ハルゴの鼻息は荒い。
順次[ハーディアナ]へ術を込め、[ハーディアナ]の臨界へ。
「良し、放てっ!」
ハルゴが吼える!
同時に[ハーディアナ]より放たれる圧縮術!
レンズの様に術を対象へピンポイント照射するそれは、スザマジイ威力にっ!
だが…
それにてゴルゴラの動きは止まるが、滅するは能わず!
「なっ!
この威力にて滅せられないだとぉっ!」
ハルゴから驚きの声が…
[ハーディアナ]から放たれた術は、白銀の光線となりゴルゴラへ。
その光線が通った後は、パリパリと放電していた。
軽く空間も歪む威力だったのだ。
その威力にて滅せられぬとは…
陣に集まっていた神々は、唖然。
そしてパニックになり掛けるが…
停止したゴルゴラの前に、まさしく神速で現れるレキレウサス。
神砲を構え、直ぐに神砲を撃つ!
放たれた砲弾がゴルゴラへと吸い込まれた!
直ぐに離脱するレキレウサス。
速い速い。
アッと言う間にマフィラナが乗る乗り物へと。
レキレウサスが戻ると、マフィラナは乗り物を発進させる。
ゴルゴラが存在する宙域より高速離脱!
ゴルゴラの爆発から逃れるのであった。
一方…ハルゴ達は大騒ぎ。
現在盛大にパニック中。
そんな中から慌てて離脱する神も。
1柱の神が離脱すると、他の神々も慌てた様に。
逃げるは恥と強情を張るハルゴを、仲間の武神が気を失わせ連れ去る。
大層時間が掛かった様に感じられるが…
そこは神。
非常時に行動する速さは、まさに神速と告げて過言は無い。
レキレウサスが現れ神砲を放った直後から、砲弾がゴルゴラへ着弾すると言う刹那の時間。
その避難が行われた。
神々が去るのを待った訳では無いであろうが…
ゴルゴラの内部で莫大な神力爆発を起こす砲弾。
ゴルゴラのサイズが一気に倍へ!?
聖と邪が鬩ぎ合う。
それが混ざり宙域へ時空振を。
辺りの空間が歪曲し、ゴルゴラが宙域から切り離される。
内部で何が発生しているのか解らない。
ゴルゴラによりイドに溜込まれた負のエネルギー。
神砲より放たれた神力砲弾に込められた、膨大な正のエネルギー。
本来は相反する巨大な力がぶつかったのだ。
宙域の空間が軋み歪むのも仕方あるまい。
その爆発が空間歪曲にて切り離されていて幸いだったと言えよう。
神々が陣取っていた宙域。
放置された[ハーディアナ]は、歪曲空間を越えて伝わる爆発の余波にて消し飛んでいた。
この空間歪曲が発生しなかったら、星雲事態が消滅していたかもしれなかったのだ。
その爆発は刹那に収まるが…
その爆発にて生じた膨大なエネルギーも瞬時に消え去る。
残滓さえ残さずに…
ただ…
そこから放たれたモノが…
それはゴルゴラの襲撃予定星系。
神々が初めてゴルゴラに勝利したゼノン星系の惑星ゼノンへと、吸い込まれる様に落下して行く。
「あれは何だろうねぇ~
面白いねぇ~」
悪戯っ子の様な笑みを浮かべる、マフィラナであった。




