09 寄り道
スキル屋を出た後、グレートホールへ向かった。
旧大聖堂の正面には階段があり、一般人はそこから中へ入る。
その先には回廊があり、祈りの間と呼ばれる部屋が円状に並んでいる。
立地的には来訪の間は一階、祈りの間は二階にある。
メニューを開けるのはグレートホールかスポットだけ。
東のスポットはギルドの下敷きになっていたし、人目もあったのでちょっとやりづらい。
他のスポットもどうなってるかわからないし、近いのでこちらに来てみた。
開いてる部屋の一つに入り、鍵をかける。
両手首を交差させて腕輪を重ね合わせ、それから腕を横に広げると空間に線が入り縦に広がってメニュー画面が表示された。
アイテム画面を開くと容量は1000枠、その内ホワイトスライムの身が1枠、チーノ草(株)が2枠埋めていた。
アイテムによって必要枠数が違うのは同じだが、初期枠数がZP1より多い。
物をそう簡単に入れれないのに、嫌がらせか?
それともこれ以上増えないのか?
……疑心暗鬼になっても仕方が無い。
とりあえずこれはこういうものだと置いておこう。
次にタレントを覘いてみる。
まあ、流石に十個は超えて無いだろうが、今までの動きでどの程度になるのだろうか?
『【暗殺】3Lv【按摩】5Lv
【演技】2Lv【回避】4Lv
【採取】1Lv【疾走】9Lv
【魅了】1Lv【魅了抵抗】1Lv』
……スライム揉んだのマッサージになるのか。
というかアレで演技上がるの?
しかも、魅了って……。
魅了抵抗ってシルビアナのが攻撃認定されたのか、ホワイトスライムのもちもち振り切った所為なのか?
疾走が予想よりも上がってなかった。
経験値テーブルの変更か、他に要因あるのか、それともその両方か……。
今のところ控えに回すのも、削除するのも無いからそのままにしておく。
またアイテム画面に戻し、ホワイトスライムの身とチーノ草(株)を実体化させる。
背負い袋から皮袋を出し、チーノ草から根を取った残りをホワイトスライムの身と共に入れてまた背負い袋に戻す。
こうしておけばチーノ草はその内融けて、最後に練り込めば〈チーノ草エキス入りホワイトスライムの身〉――通称ヨモギ餅の出来上がりだ。
スキル使用やたくさんのダメージを受けたりはまだ無く疲労のみなのでまだ食事の必要は無いが、念の為だ。
クエスターは通常の生物よりも星の力に近い。
PPが回復するのは周りにある星の力を吸収するからだが、続けば純化が過ぎて肉体を保てなくなる。
それを止める為に不純物を取り込むのがクエスターが食事する意味だ。
薬草や回復薬はいうなればPPの塊みたいなもの。
純化を進めるので実はクエスターにとっては危険物だったりする。
こうやって食事に混ぜれば、不純化しつつ回復できる。
まあ、今回の意味はただの興味だが。
味見にホワイトスライムの身を摘んでみたが本当に餅みたいだった。
なお、一般人にとっては最下級の薬草でも万能薬で、取り過ぎれば鼻血みたいに回復余剰分を噴いたりする。
チーノ草の根は葉っぱの数十倍の効果を持つので、正直鼻血ではすまない。
この辺りがチーノ草の根製回復薬が廃れた原因だと思う。
ホワイトスライムの身一つ程度の不純性では根を混ぜたら純化が進むので、今回は入れない。
根っこはそのまま背負い袋の中に入れる。
用事が済んだので旧大聖堂を出て、他のスポットがどうなっているのかと北東門へと向かう。
スポットの所に在ったのは石造りの建物。
そこから石で覆われた何かが西の方へ伸びている……もしかしてケーブル?
向かう先はたぶん北門近くの戦士ギルド。
北西のも同じくなってるのかもしれない。
でも、なんでグレートホールは利用して無いんだろう?
疑問に思いながらまた狩りに行こうと東門へ向かう途中そいつらに出合った。
「お嬢ちゃん、お医者さんごっこしようね」
路地裏でそんな事言ってる成人男性がいたら、ぶっ倒してもいいんじゃないか?
悲鳴っぽいのが聞こえたと思ったら、そんな事を言ってる奴が居た。
仲間みたいなのを含めて人数は三人、全員原人で何かを壁際に追い詰め取り囲んでいる。
腕輪はつけてない、クエスターではないようだ。
これが衛兵の言ってた奴らかな?
しかし、大人が三人か……。
身体能力上げてるタイプじゃないから、正面からだとまずいかな?
……まあいいや、とりあえず潰そう。
そいつらに向かって駆け出す。
夢中なのかこちらに背を向けて気付かない。
そのまま手前にいた一人の腰の斜め上辺り、腎臓を殴りつける。
「ガッ!!」
ゴギッという音が鳴り、グシャッと潰れる感触がする……主に俺の腕から。
三割近く減とはいえ激痛が走るが無視。
PP効果ですぐに治癒して治まる。
子供の一撃とはいえ、手が砕けるほどの勢いで殴られたそいつは悶絶し、PPが少ないのか無いのか、痛みから回復せずにそのまま倒れた。
「な、なんだ?!」
残りの二人が異変に気付き振り返った。
ちょうど良いので二人の股間を強打し、頭が下がった所へ組んだ手を振り下ろす。
服を剥いでロープ代わりに縛りる。
流石に引き摺っていくのは無理だな。
後は衛兵に任せよう。
街灯に縛りつけて、仲間とかがいて連れてくかもしれないので一言書いておく。
『この者等の眠り妨げし者、呪いが降りかかるであろう』
さて、行くか。
向かおうとした時、後ろから声をかけられた。
「こ、こんな人たちなんてあなたに助けられなくてもどうにかできましたわ!」
そういえば襲われてたらしいの見てなかったなと振り返ると金髪に白い肌、長い耳の女性。
貴人、しかも仕立ての良さそうな服を着てるから、西地区の貴族かその類だろう。
何でこんな所にいるか知らないが、セリフも含め面倒そうなのでさっさと衛兵の所にいくことにした。
「ま、待ちなさい!」
叫んだが無視する。
疲れ知らずのクエスターに追いつけるわけもなく、声は離れていく。
東門が見えてきた。
顔を見知ってる衛兵に声をかける。
「ん、どうした?」
「路地裏で言ってた変態みつけてのした」
「おっ、ほんとか?!」
「うん、向こうの街灯に縛っといた」
「じゃあ、案内してくれ」
「あんまり関わりたくないんだけど。
そこ道なりに行けばつくよ」
「と、言われてもな……」
うーんと考え込んでいる所にさっき教われてたのが来た。
「はぁ……はぁ……私を……置いて……行く……なんて……」
「あっ、この人襲われた人。
事情とか場所知ってるから、この人に聞いて。
じゃ!」
そう言い残して門の外へ出る。
なんか、嫌なフラグ立ててしまったな。
かといって、関わらなかったらそれはそれで面倒が起きた気がする。
北東のスポットに寄り道したのが敗因か。
せめて南東にしておけば、いやそもそも寄り道しなければ……。
……まあ、起きたものはしょうがない。
さっさとスキル身に着けて森に行こう。
そう心に決め、また空いてる所まで行ってホワイトスライムを使ってチーノ草を探し、定点狩りを始めた。
―――
「あっ、おい!
…………はぁー。
それじゃあお嬢さん、色々と聞かせてもらえるか?」
「……私を無視するなんて、覚えてらっしゃい!!」




