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04 キャラクター作成

 サービス開始の二日前、ようやくソフトが届いた。

 サービス開始の2、3日前がソフトの発売日なのが最近の傾向だ。

 当日だとインストールなどの手間でスタートダッシュ決めれないという猛抗議でそうなったらしい。

 平日で学校あるから俺には関係ないけどなっ!

 くっ……仮病でも使おうか?

 いや、即ばれて殺されかねない。

 終わったら脇目も振らず一目散に帰って来るしかないか。

 それまでにできることはしておこう。

 VRスーツの着方は取得済み。

 VRセルはとっくに届いて、接続設定などは終了している。

 後で調べたところ、下水に繋ぐタイプもあったので向こう数年こづかい無しを覚悟していたんだが、届いたのは老廃物などを殺菌、脱臭、脱水してそのままゴミとして捨てれるタイプだった。

 庭に家庭菜園があるが、自分の出したのでできたものを食べたくないので肥料にもできるのは秘密にしている。

 それにしてもVRセルがベッド代わりになるとは……。

 考えてみれば元々医療器具、そういう使い方ができてもおかしくないんだよな。

 どこかにログインしなくても使用でき、睡眠波で即座に眠れて、目覚ましセットで快適な目覚め。

 ゲーム内での睡眠はとても質が良くて倍速式でも睡眠を取れば、現実時間として見れば少ないけど日中の生活に影響ないとか。

 その代わり、お腹が空くので夜食もしくはVR液に栄養投下が必須らしい。

 起きるまで遊べるとか、なんだその天国?

 とりあえずある分の必須事項はクリアしているので、後はソフトのインストールと、説明書の熟読だな。

 マニュアル通りにソフトをVRセルにセットしてインストールを開始、説明書を取り出して読み始めた。

 ……メニューが開かないとかあったが、グレートホールかスポットじゃないと開けなくなったんだな。

 以前はレベルの上昇やタレントの入れ替えだけだったが他の機能もこっちに回した様だ。

 現実的に考えるといつでも自分のステータスを見れるのはおかしいからと、メニューなどを特定条件化で無いと開けなくしている物もあると聞いた事がある。

 ZP2もそうしたようで、アイテムも自由に取り出せなくなってるようだ。

 EXPPやドロップアイテムはPCの両手首にある細い材質不明の腕輪に蓄積される。

 他の生き物の特性を残した力は容易に体内には吸収できないという設定だ。

 腕輪の中ではアイテムは力として存在するので、実体化させなければどうにもできない。

 グレートホールとスポットで取り出せるとは在ったが、腕輪に戻せるとは書いてない。

 所持品も力に分解して一緒に腕輪に入れ、自在に取り出せるというのがZP1での形態だが、その辺りの説明は一切なかった。

 その上、装備は身に着けましょうとか書いていた……身に着ける絵付きで。

 たぶん、メニューから装備ではなく、本当に身に着けないといけないんだろう。

 以前のように自由にアイテムを取り出しての使用や装備の入れ替えはできなさそうだ。

 腕輪の容量はレベルアップで増加したが、これも今の所不明。

 パーティ機能については何も書いていない……どこへ行ったんだろう?

 前作では口頭で誘って、応じるとその間空いている腕輪の容量を共有し、EXPPが人数で割られて分配されたんだが……。

 設定によるとクエスターは本質的には同一存在だから、パーティを組むと一部がリンクするとか。

 まあ、好きな時にレベル上げたりできるスキルなどもZP1には合ったので、何か方法があるのかもしれない。

 前と同じくスポットを開放していくのが主な流れのようだ。

 細かい事は書いてないが、自分の所属が支配するエリア以外では弱くなるのも同じか。

 ZP1での所属は四種類――エデン、アルカディア、ブランク(無所属)ワイルド(野生)

 検証した結果、エリアはヘクス(六角形)で表され、そのエリアに隣接する他所属エリアの数×10%の割合でPP回復速度が減少する。

 また、時間経過やPPの自然回復と共にステータスも下がっていき、下がりきった時のステータスは同じく隣接する他所属エリア数×10%減。

 エデンとアルカディア間では少し違い、PP回復量もステータス減少最低値も隣接する自所属エリア×10%。

 下がりきっても、下限が違うエリアへ移動すればその下限まで時間経過で回復する。

 スポットは開放したパーティのリーダーの所属になるので、ブランクが傭兵として活躍してたりした。

 世界観と種族説明はほとんど他に書いてあったのと変わらない。

 やっぱり世界は丸くなっていた。

 けど大災害が起きて丸くなったって、どんな天変地異なんだか……。

 PC作成は初回ログイン時に行います、とだけ書いてあった。

 どうやるかは書いてない、相変わらずの運営クオリティ。

 あとあったのは年齢による表現の規制。

 ZP1ではグロい敵は居たが血はなかった。

 倒せば光になるし、傷付けても光が出るだけで、それはZP2でも変わらないようで流血注意は無かった。

 ただ痛覚の説明があった。

 12歳未満は25%、12歳以上15歳未満は50%、15歳以上18歳未満は75%、18歳以上は100%。

 法定の最大値だ。

 実年齢に合わせて自動的に調節されるそうだ。

 俺は15歳だから75%か。

 麻酔が少し効いてる感じなんだろうか?

 説明書を読み終えた。

 やる気に満ちたがまだやれない。

 後二日が遠い。

 ……体動かしてまた発散するか。



―――



 ついにこの時が来た!

 というわけでホームルーム終了と同時に即行で家に帰ってきて、ただいまの挨拶もそこそこに部屋に引き上げ服を脱ぎ散らかし、今VRスーツを着ているところだ。

 あまりにも薄いので、勢いよく着ると破れそうな気がして慎重にならざるを得ない。

 金はもう底を突き破ってるし、在庫処分品だったから次また安いのがあるかわからないし。

 首のスイッチを入れるとプシュッと空気が抜けて体にピッタリと張り付いた。

 水着より卑猥とはよく言ったものだ。

 裸よりはましだがこれで出歩くのは恥ずかしい。

 VRセンターとかよく行く人居るな。

 銭湯見ないな感じで、慣れれば恥ずかしくないんだろうか?

 そういえば近所のVRセンター、この間火事で営業停止になってたな。

 怪我人はなく、行方不明者が一人。

 その行方不明者が長時間プレイしてたらしく、その廃人の所為とかVRセルに欠陥がとか一時話題になった。

 結局は施設の老朽化による漏電だったらしい、元々フィットネスジムだったのを改装して営業していたんだとか。

 まあそれはともかく、ここで挫けてはZP2はやれない。

 ZP1ではああだった。

 βテスターの話を見る限り、ZP2もそうだろう。

 VRセルからプラグを引き出して腰の後ろのコネクタに接続し、VRセル内に横たわり起動させる。

 すぐに慣れた睡魔に襲われた。

 気がつくとどことは知れない空間に立っていた。

 ちょっと体を動かしてみる。


「おおっ!」


 これがVRの感覚か……凄いな、現実との違いがわからない。

 ちょっと感動したが、気を取り直して目の前の姿見に目を向ける。

 周りは真っ暗なのに姿見ははっきり見える。

 そういえばZP1のPC作成もこんな感じだったよな。

 5年ぐらい前の記憶を引き出し、感慨に浸る。

 違うのは姿見が三面鏡になっていることだ。

 正面に手足が獣毛に覆われ体や顔が人間の面影を残している。

 左のは完全に人間で、右のは完全に人型の猿。

 全部白いボクサーパンツ姿で、両手首に細い腕輪。

 左の腕輪は白、右の腕輪は黒、中央の腕輪は灰色だ。

 左の鏡の上にはEDEN、右の鏡の上にはARCADIAと記されている。

 中央のには何も書いていない。

 三面鏡の左右の縁に色々とボタンなどが付いている。

 これで変更しろということかな?

 よく見ると姿見に鏡がはまっていない。

 手を伸ばすと触れて、ぐにぐにと粘土みたいに動かせる。

 それに伴って他のも変形した……こうやって整形しろということか。

 じゃあ、周りのボタンはなんだろう?

 初期化というボタンを見つけたので押すと元に戻った。

 色というボタンは押すとパレットと絵の具と筆が現れた。

 これで塗れということかな?

 筆を肌に付けると一瞬でその色に変わった……全身むらなく塗れとかじゃなくてよかった。

 男/女というボタンがあった。

 男がオンになっている。

 好奇心を抑えきれず女をポチッと押す……女装趣味なんて無いからな!

 押すと飾り気の無いチューブブラが追加された。

 名称知ってるのは若気の至りで、昔にもこうやってPC作る時に性別変えてこれなんだろう?と調べたからだ。

 体は丸みを帯びて、身長が低くなった。

 胸は小ぶりというか、洗濯板。

 どこからか貧乳はステータスと聞こえた気がした。

 気が済んだので男に戻す。

 年齢と書かれたつまみを発見、スライド式で現在十五と十六の間にあった。

 数字の小さい方へ動かすとみるみる縮んでいく。

 記憶にある姿とそっくりだ。

 じゃあ、どう成長するのかな?と数字のを大きい方へ動かした。

 ……うん、人間身長じゃないよな。

 □と▽のボタンを見つけた。

 □がオンになっていて、▽をオンにするとボクサーパンツが前開きの無いブリーフに変わった。

 左端に原、貴、鉱、翅、翼、右端に鬼、狼、猫、竜、虫とボタンが並んでいた。

 現在オンになっているのは原。

 一通り押してこんな感じになるのかと感心する。

 光源というつまみを動かすと体にかかっている光の向きが変わった。

 あとは能力値というボタンのみ。

 それじゃあ、本番にいこう。

 初期化ボタンを押す。

 やろうと思ってるのは魔術で戦うタイプ。

 となるとIntに種族ボーナスがあるのがいいな。

 種族ボーナスと言っても初期ステータスが違うだけだが馬鹿にはできない。

 となると、選択肢は貴人(エルフ)虫人(インセクター)

 ……さすがに虫は嫌だな。

 前作と同じだが貴人(エルフ)でいいか。

 貴のボタンを押すと耳が伸び、金髪緑眼で色白になった。

 以前はおお、かっけえ!っとそのままにしたが、今は考えを変えている。

 流石にここまで白いのは不健康な気がする。

 色ボタンを押し絵の具を混ぜる……こんな感じかな?

 塗るとよく日焼けした肌の色に変わった。

 髪と目はこのままでいいか。

 ボクサーパンツの凹凸が影で強調されてるので、色を黒に変える。

 年齢を一番下――十まで下げる。

 ZP1で小さい方が便利だと感じた。

 的が小さい分狙いにくい。

 直接攻撃のリーチも短くなるが、魔術を戦いの主軸に置けば気にしなくていい。

 元のままでいいかもしれないが、念のため、あえて一番下にする……年齢低いから小さいんだって誤魔化すためじゃないからな。

 能力値というボタンを押すとボードが現れた。

 剛力、頑健、器用、敏捷、思念、精神と書かれたつまみと決定と書かれたボタンが並んでいて、思念だけ始めから他よりも右に移動していた。

 思念を動かせるだけ右に移動させると決定と書かれたボタンが光った。

 ボタンを押すとボードが消え、三面鏡は中央の一つだけ残った。

 視点が低くなったのに気付く。

 姿見に鏡がはまり、映っているのはEDENのところに在った姿。

 動くと鏡の向こうの姿も動いた。

 精神が10歳児になった感じはしない……気付いてないだけかもしれないが。

 腕を振ったり体を捻ったりして、体の感じや動きを確認する。


「ふーん……ってあれ?」


 声が高くなっている。

 声変わり前の声なんだろうけど、こんな声だったかな?

 一通り確認を終えると、今度は走ったり飛び跳ねたりした。

 PPの効果がもうあるんだろう、全く疲れない。

 ……うん、大丈夫だ。

 小さくなった分運動能力は下がっているが、想定内に収まっている。

 確認は済んだので進めようと、姿見の前に戻る。

 姿見の縁の左右には初期化と最終決定のボタン。

 最終決定は光っていなし、押しても何も起きない。

 そういえば名前決めてないな。

 姿見をよく見ると、一番下に枠と消去、決定のボタンがあった。

 枠に直接書き込むようだ。

 指でぐりぐりと書き込み、決定を押すと清書された。

 タイチー……うん、これでよし。

 最終決定のボタンが点灯しだしたので押すと、鏡に映る体の向こうに光が現れた。

 振り返ると目の前に光でできたゲートが在った。

 この先に見知らぬ世界が待って……ってZP1で結構回ったよな?

 未実装エリア以外はほぼ踏破したはずだ。

 だが、天変地異で世界が丸くなったくらいだ。

 千年も経ってる事だし、色々と変わってるだろう……たぶん。

 期待と一抹の不安を胸に、俺は門をくぐった。



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