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15 武器作り

 知り合いはまだ数人。

 その人たちがここまで出てくるかというと、答えはNO。

 ……もしかして、あの厄介そうな奴なのかな?

 そうなら土煙に紛れて逃げよう。

 とりあえず確かめるか。

 振り向くと、そこに居たのは長身の青年。

 耳が羽みたくなっている……翼人(ウィンガー)だな。

 腕輪をしていてボロ布を着ているので、多分プレイヤー。

 目が合うと、口を開いた。


「やれないか?」


「……なにを?」


「武器作り。

 いくらか出すから、作ってくれないか?」


 固体を作れるスキルだと、出した形で残る。

 それを利用して、色々な物を作ることができた。

 武器もその一つ……生粋の生産プレイヤーはあまりやらない方法だったが。

 最初からその物として出すよりも、材料として出して加工した方がより良い物を作れたからだ。

 それでも、使い捨ての量産品程度の物はできた。

 

「他に人いないの?」


「Int高いのいなくてな」


 土属性だと耐久性が低すぎて圧縮が必要なため、量が多くないといけない。

 高く拡大するなら話は別だが、始めたばかりではそれほど育ってないので、ある程度のIntが必要となる。

 キャラクター作成時ならInt極近く。

 戦闘やるなら防御手段としてVitかAgiをある程度振るのが基本、生産ならDexが重要。

 普通はそこまで割り振らないので、あまりいないのだろう。


「鉱石は高いし、採掘場所も見つかってない。

 という訳で、頼めないか?」


「二段階ぐらいしかできないけど?」


 大物作るのなら拡大も必要だ。

 形状変化の制御も考えて、一つ拡大して二つ圧縮が限度だろう。

 実用するなら圧縮は最低三段階は欲しい。


「それでいい」


「何か方法あるの?」


「ああ。

 PP通してるとキャラの一部に近くなる」


 話を聞くと自己修復の他、ブースト分の影響も受けるそうだ。


「へー、アクションスキル?」


「そうだ」


「ならいいよ。

 なにが必要なの?」


「片手剣を二、両手剣と槍と槌を一、あと盾を三」


「槍は両手?片手?」


「両手のを頼む」


「槌も両手?」


「いや片手のを」


「盾は手持ち?

 くくり付け?」


「……手持ちで」


「いくら出す?」


「……一つ10Pでどうだ?」


「いいよ」


 とりあえず片手剣から作るか。

 膨らむので、出してみないと大きさがわからない。

 形を整えて圧縮をかける。


「《センチアースソード》!」


 ゴトッと片手剣が落ちる。

 耐久性を考えて刃は肉厚にした。

 次は両手剣。

 柄を長めにしてっと……。


「《デカックアースソード》!」


 盾は丸いのでいいかな?


「《センチアースシールド》!」


 槍は刃があるタイプで……。


「《デカックアーススピア》!」


 で、槌か。

 片方を尖らせたのにするかな?

 ……変わった形で圧縮するのは、ちょっと難しいな。


「《センチアースハンマー》!」


 これで一通りできたな。


「こんな感じ?」


 渡して調子を見てもらう。


「……いい感じだ。

 残りもこれで頼む」


 片手剣を一つと盾を二つ、更に作って渡す。


「ありがとう」


 礼と共に代金を手渡された。

 (プラ)貨幣が一枚、片面に百の文字。

 P貨幣は片面にP、反対に一、十、百……と金額が漢数字で印されてる。

 という訳で100Pだ。

 おつりあったかな?

 背負い袋を下ろして探そうとすると、止められた。


「釣りはいい」


「……そうなの?

 それじゃ、いくね」


「どこか行く所だったのか?

 引き止めて悪かった。

 俺はロック。

 縁があればまたな」


「……タイチー。

 じゃあね」


 翼人(ウィンガー)だからロック鳥から取ったのだろう。

 偶然だけど、ちょっとびっくりした。

 彼らから別れて、西へ向かう。

 日暮れまでまだ時間はあるし、少しでも森の探索始めるか。



―――



「やっぱり無理だよ」


「そう言われてもな。

 これしかないんだし……」


「でも、どうするの?

 これじゃ、先へ進めないわ」


 サービス開始でのスタートダッシュはできたが、正直行き詰っていた。

 PCの動かし方を身に付け、森へ進んだまではとんとん拍子にいった。

 森の方も最初は何とかなった。

 だが、レアモンスターが現れた途端ハードモードに変貌した。

 逃げ帰ったり、死に戻ったり。

 多勢に無勢もあるが、何より装備が良くない。

 まともな武器といったら、ソルジャーラビットから手に入れたキャロットナイフだけ。

 ナイフといっても、実際には園芸用シャベル。

 そのままだと使い辛いからと、平らにしようとすればバリッと割れる。

 熱すると軟らかくなるが、元の硬さには戻らない。

 というか食べれる。

 名前の通り、このナイフはアイアンキャロットというニンジン植物でできているからだ。

 森に自生するそのニンジンを、ソルジャーラビットが齧って作ったのがこのナイフ。

 短く使い勝手が悪いので、切り倒した木を削って木刀など作っては見たが、自分たちでは歪なのしか作れなかった。

 職人を見つけて作ってもらったものの、この辺りの木は柔らかすぎた。

 PPを通せば自己修復などするので使えなくは無いのだが、修復するのにPPを消費していくので長期戦には向かない。

 その上、自己修復も限度を超えると、純化しすぎて形を維持できず四散してしまう。

 店で売っていた鉄の武器は10000Pを下らない。

 鉱石採掘所は森の向こうで、現在在庫がほとんど無いと言われた。

 前作の攻略サイトで見つけた土属性の魔術で武器を作る方法を仲間で試してみたが、Intが足りずちょっと長めのナイフ程度しか作れなかった。

 骨の武器も考えてみたが、この辺りには大きな骨の持ち主がいない。

 作れるのはこれもナイフ程度。

 木にくくり付けて槍のようにしてみたが、土台が脆すぎた。

 森へ突撃してみたが、あえなく返り討ちにあった。


「EXPP溜めてInt上げるか、人探しするしかないな」


 碌な材料が無い以上、Intが高い人に土属性の武器を作ってもらうしかない。

 PCを作り直せれば何とかなるが、あいにくその方法は不明。

 となると、今の状況でどうにかするしかない。

 とりあえず簡単な方から試そうと、手分けしてやれそうな人を探すことにした。

 NPCクエスターはこちらを蔑視してるそうなので、プレイヤーから探す。

 俺は街の外を北回りに探すことになった。

 ずっと進んでいくが、目当ての人は見つからない。

 北門を越えると、もう人はまばら。

 もうしばらく進み、ここには居ないかと思いかけた時、重い物が落ちるような音が聞こえた。

 その方向を見ると、小さな人影が一つ。

 ……子供?

 近づこうとすると、大きな茶色い塊が現れた。

 それは重力に従って落ち、ドスンッと軽く地響きをたてた。

 小山となって草深い中から顔をのぞかせているそれは、土。

 その子供が出したようだ。

 呆気にとられていると、今度はハンドボールほどの塊を出した。

 それが土山の上に落ちていくと、続いてそれよりも小さな塊が、その次にはそれよりもまた小さな塊を出した。

 野球のボールほどの土の塊を出すと、今度は四角や三角?の塊を出し、きょろきょろと辺りを見回した。

 その様子に我に返って、話しかけようと近づこうとすると、今度は土を噴射したりし始めた。

 ……今はちょっと近づきたくないな。

 そう思っていると、しゃがんでごそごそとしだした。

 チャンスと思って近づくと、むくっと立ち上がって何かが飛んでいった。

 動きが止まったので、今だと思い肩を叩く。

 振り返ったので用件を伝える。

 いくら出すかと聞かれたので攻略サイトに載ってた価格を提示すると、了承してくれたが、すぐにゴトゴトと出されたので、ちょっと顔が引き攣った。

 できも良いので、少し色をつけて代金を渡した。

 名前を名乗ると一瞬微妙な顔をした気がするが、何故だろう?

 なんにしろ、これで先へ進めそうだ。

 待ち合わせの場所へ持っていこう。

 そうしようとしたが、一人では持ちきれないことに気付いた。

 ……此処に居れば、南回りで探している奴が来るな。

 それまで待つか。


「――何やってるのよ?」


「おっ、来たか」


「来たか、じゃないわよ!

 休んでないで、ちゃんと探しなさいよ!」


「探したぞ。

 ほら」


 剣を一つ手にとって見せると、目の色を変えた。


「ちょっと、何これ?!

 すごい!」


 驚くのも無理はない。

 店売りの品と遜色ないのだ。

 自分たちで作ったのは刃がついてるだけという感じだった。


「他にもある。

 皆の所に運ぶから手伝ってくれ」


「……ふっ、ふっ、ふっ。

 これで奴らに目に物見せてやれるわ!」


「……目に物見せる前に、まず運んでくれ」


「……わかったわよ。

 ほら、さっさと行くわよ!」


 剣ばかり抱えて、一目散に走り去っていく。


「はぁ……」


 残った物を見つめ、溜息をつく。

 Str、あいつの方が高いんだが……。

 苦労して持ち上げ、その後を追いかけた。



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