表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳八州廻り~大黒億十郎の探索~  作者: 万卜人
第十一回 分裂司令官の陰謀の巻
81/90

 全力で駈け、あっという間に全速力になる。びゅうびゅうと、億十郎の耳朶じだを、風きり音が打つ。

 角に全身を曝す寸前、億十郎は床を蹴り、飛び上がった。

 ちらと確認すると、銃口が慌ててこちらを向く。だだだだっ、と連続音が響き、銃弾が送り込まれるが、とっくに億十郎の身体は、前方の壁に殺到していた。

 空中で身を捻り、億十郎は壁に着地する。

 ぐっと両脚に力を込め、億十郎は壁を蹴った。

 銃弾が宙を切り裂き、億十郎の着地した壁を抉ってゆく。

 その時、億十郎は、奇妙奇天烈な感覚を憶えた。ぴーんと、全身の感覚が張りつめ、一瞬、一瞬が意識される。

 見よ!

 空中を射出された、機関銃の銃弾が億十郎には、一つ一つ、はっきりと見て取れた。

 面相筆の、穂先のような形をした、金属製の弾丸が、空中を飛行するのが、克明に観察できる。弾丸は一寸ほどもあり、億十郎に与えられた借り物の知識では、戦車の鉄板を貫き通すほどの威力を持つ。狭い室内で使用するには、大袈裟すぎる武力である。

 弾丸の前方は、空気が圧縮され、後方で拡散される。そのため、微かな陽炎のような揺らめきが、億十郎には見えていた。

 億十郎の時間感覚は引き伸ばされている。したがって、総ての事象が、ゆっくりと見て取れた。

 これも【遊客】の特殊能力なのか?

 驚きと共に、億十郎には、なぜか「当然」という感情もあった。

 再び億十郎は身を捻って、次の行動に備える。ほとんど横倒しの姿勢で、億十郎は床を滑った。

 今度は、手に握った銃弾を指先に送り込む。

 滑り込んだまま前方を確認すると、巨大な機関銃に取り付いた司令官たちが、空ろな表情のまま、凍り付いていた。無論、億十郎の感覚が引き伸ばされているので、一瞬が凍り付いて見えているのだ。

 親指に力を込め、億十郎は銃弾を弾いた。

 指弾である。

 通常は小石や、団栗どんぐりなどの木の実を使うが、金属製で重みがある銃弾ならば、威力は倍増する。

 床を滑りながら、億十郎は手にした銃弾を、ことごとく弾き終えた。

 その時、億十郎の時間感覚が通常に戻った。

 がががががっ!

 びしっ!

 ぐわああっ!

 銃撃の音と、億十郎の送り込んだ指弾の音、司令官たちの悲鳴が一度に混じり合って耳に届いていた。

 億十郎は立ち上がり、大刀を抜き放った。

 ささささっ、と早足を使って接近すると、渾身の力で振り下ろす。

 ぐわっ、と手応えがあって、ぐわらっ! と、大仰な音が響く。

 呆然と、司令官が億十郎の顔を見上げていた。

 手には小銃を構えている。

 が、小銃の機関部ほどから、銃は真っ二つに切断されていた。銃を構えていた司令官の右腕も、関節の辺りから、断ち切られていた。

 億十郎が振り下ろした刀が、鋼鉄の銃を切断してしまったのである。

 どっと、切断された司令官の右腕から、鮮血が床に噴出する。

 うわあああああ──っ!

 絶叫を上げ、司令官は右腕を押さえ、その場で床に転げ回った。

 他にもその場には、司令官がいた。全員、億十郎の弾いた指弾によって、身体のあちこちを抉られ、苦痛に呻いている。

 どやどやと足音が背後から近づき、振り向いた億十郎の視界に理恵太と、アイリータが目に入った。

 アイリータは、床に転がった銃を見て、驚愕の表情になった。

「あんた、何をしたの?」

 億十郎は、やっと我に返った。

 自分は何をしたのであろう?

 手にした刀を見詰める。億十郎の刀は、確かに惚れ惚れするほどの剛刀であるが、鋼鉄を斬撃するほどのものではない。

 鋼鉄を切断したのに、億十郎の刀には、相変わらず刃毀れ一つ、見当たらない。天井からの冷たい光を受け、青白い刀身を見せている。

 自分は、どうなっているのだろう?

 億十郎は呆然と、立ち竦んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ