作戦決行
洞穴の奥。焚き火の明かりが揺れ、全員の視線が俺に集まっていた。
「……単純なのが一番いい。座らせて、頭に杭をぶち込む。それで終わりだ」
俺が口を開くと、ドリランが煙草をくゆらせながら肩をすくめる。
「ほらな。こういう時は掃除屋の勘に従うのが一番だ」
「じゃあ役割分担だ」
俺は指を折りながら続ける。
「ミリィ。お前の蒸気玉で熱光線を減衰させろ。奴の目を潰す」
「了解! ボクの{蒸気手榴弾なら、なんとでもなるさ!」
「トール。足元を崩せ。片足だけでいい、バランスを失わせろ」
「了解。転ばせるのは無理でも、確実に揺らせます」
「相棒。膝を撃ち抜け。座らせるんだ」
「あいよ」
俺は鉄杭を握りしめる。
「座らせりゃ、あとは俺が決勝点だ」
ドリランが笑い、煙を吐く。
「よし、それで決まりだ。――お前ら、一発屋の指示に従え」
「お前は囮だ、ドリラン」
偉そうにすんな。お前も策の一つだよ。
気の抜けたエールみてぇな顔してんじゃねぇ。
焚き火の炎がぱちりと弾ける。
全員の顔に、悪い笑みが浮かんだ。
「さぁ――掃除の時間だ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
道幅は十メートル程度のはずだが、機械巨人のせいでえらく狭く感じる。
ポイント22.98は滅多に来ないが、こんなに圧迫感があるのは初めてだ。
こりゃ、ちょっとばかし苦労するかもしれねぇな。
「ポイント到着、いつでもOK」
インカムからミリィの声が響く。
「同じく到着。四十五秒ください、地雷を仕込みます」
ややあってトールの声。
「ポイント到着。いつでもどーぞ」
ロクローの全く緊張していない声をインカムが拾う。
「こちらゴールデン! いつでもいけるぜぇ!!」
「団長、うるさい」
「団長じゃねぇ! ダディだ!」
いきなり騒がしくなる。
……こいつ、本当に一流徒党の頭領なのか? とたまに疑問に思う。
「こちらトール、設置完了。いつでもどうぞ」
緊張気味の声がインカムに乗り、空気がピリッと強張る。
「よし、いくぞ野郎ども。安心しろ、失敗しても死ぬだけさ」
気負いのない声。ドリランだ。
「失敗しなきゃ“お客”と機械巨人と、ついでに船ももらって俺たちゃ大金持ちさ」
顔が見えなくても分かる。ヘラヘラしてやがる。
「よっしゃいくぜぇ!!状況開始!」
次の瞬間、銃声が谷に鳴り響いた。
ドリランの突撃銃が機械巨人の顔面に命中する。
金属を弾く甲高い音が木霊し、巨人の目がボウッと赤く光った。
ロックオンの合図。無事な方のレーザー射出口がガパリと開く。
「うぉおおぉぉぉぉ!」
全速力でバック走するドリラン。退避しながらも攻撃をやめない。
的確に、しかし大雑把に、死角を狙いながら確実に撃ち抜いていく。
レーザー射出口のいくつかに傷が走り、光線の威力がいくらか弱まった。
「ミリィ!!」
「了解!」
閃光弾が炸裂し、白光が谷を満たす。
有人や光化学探知ならこれで目潰しになる。
数秒後、シューッと漏れる音。
蒸気手榴弾が続けて四発起動した。
もうもうと蒸気――霧が立ち込め、谷全体が白い壁に包まれる。
機械巨人はさっきまでドリランがいた所にレーザーを射出する。
が、霧に触れるとみるみる減衰し、ドリランのアーマーを軽く焦がす程度の威力しかなかった。
「クソが!修理費くらいは稼がせろよ!!」
突撃銃で牽制しつつ、トールの地雷設置ポイントまでおびき寄せる。
「カウント……3、2、1」
インカム越しにトールの声。緊張が高まる。
「Bomb!!」
ビックリした……なんてでかい声を出すんだこいつ。
「うるさーい!!」ミリィのお冠な声も重なる。
同時に強烈な爆発音。
機械巨人の足元が崩落し、バランスを崩した。
赤く光る一つ目がキョロキョロと動き回り、混乱しているようにも見える。
バチン――と弾ける音。したと同時に俺は走り出す。
魔石フルチャージ。
手首のレバーを引き、鉄杭を装填する。
ロクローの電磁砲が、装甲の薄い左膝裏に見事命中。
巨人が大きく膝を折る。
最後は俺が、決勝点を決めて終了といこう。
走り抜け、機械巨人の腕に足を掛け、肩口まで一直線に駆け上がる。
目標は側頭部。親指のトリガーに力を込める。
右腕に衝撃が走る。
ずどん――と鈍い音。鉄杭が射出される。
子供の腕ほどの太さの鉄の杭が、機械巨人の頭に突き刺さった。
「状況終――」
インカムで終了の合図をしようとした、その瞬間。
ガシィッ――!
機械巨人の腕が俺を鷲掴みにした。
「げっ……!」
油断してたつもりはねぇ。だが、こいつはまだ死んじゃいなかった。
巨体が大きく揺れ、俺ごと渓谷の崖下へと落ちていく。
耳をつんざく風切り音。視界がぐるりと反転する。
「あー、俺は多分大丈夫だ。探索でもしててくれ」
インカムに声を飛ばす。
「気ぃ抜きすぎだぜ、ドゥ……お前が死んだらギルドのポイントは俺のにするからな」
相棒……少しは心配しろ。
俺は溜息を付き、崖下へと落下していった。




