『日本改造計画外電』その弐拾<対談『ピロユキ』(2)異次元の少子化対策>
今日のリモート会議は、参加者からして異質だ。
「どうも、ピロユキです。本日は、お時間頂戴いただき誠に有難うございます。」
「こちらこそ、カメラオフのリモート対談で引きけて下さった事、感謝の極み。本日は、宜しくお願い致します。」
「では、早速質問があります。以前もお伺いしましたが、少子化対策です。
前回は、具体的な施策までは、踏み込んでいなかったので、お願いします。」
「分かりました。私は、『異次元の少子化対策』を実施しています。
その点を説明しましょう。それで、宜しいですね。」
「はい。具体的にお願いします。」
「まず、『三本の矢』です。『一の矢』は、『制度』。『二の矢』は、『教育』。
『三の矢』は、『小手先』。となっています。
まず、『一の矢』から説明します。
これは、日本帝国憲法で、制定しました。『多夫多妻』制度です。」
「確かに、結婚すると、他の配偶者をもてない。これを解消できる訳ですね。」
「ご存じかな。離婚理由の最大数は、『価値観の不一致』です。」
「あぁ……聞いた事ありますよ。それが何か。」
「結婚前には、分からなかった。また、結婚して一年、二年でも同様。何年かでわかったのが、『価値観の不一致』であった。が、離婚は非効率だ。」
「確かに、金銭、労力、時間様々なリソースを消費します。が、『多夫多妻』なら違いますね。何人配偶者を持ってもよいのですから。以前なら、浮気でしたが、今は違いますね。」
「よって、価値観の不一致による離婚は消滅した。価値観が一致するまで配偶者をとっかえひっかえするだけだ。」
「それを合法化、合憲化した訳ですね。」
「但し、托卵は、いかん。それは、詐欺罪だ。」
「確かに遺伝子鑑定の義務化無償化、しましたね。」
「然り。遺伝子上の両親で情報共有するのだ。配偶者が、
自分の遺伝子を継いでいない子供を出産しても養育義務無し。
その為の遺伝子鑑定。以上が、『一の矢』。次は、『二の矢』。」
「その前に、『一の矢』について一つ質問があります。」
「どうぞ。」
「それは、『オープンマリッジ』と言う話でしょうか。」
「私から一つ訂正したい。」
「何でしょう。」
「私は、片仮名英語が、嫌いだ。それに、『多夫多妻制度』は、それだけではない。婚姻費用、慰謝料等あらゆる金銭は、金額を自由に設定してよい。
こんな所でよいかな。」
「はい。分かりました。では、『二の矢』の説明をお願いします。」
「では、『二の矢』の説明をしましょう。それは、『教育』である。」
「つまり、『多夫多妻』や、『遺伝子鑑定』を教育で叩き込む訳ですね。」
「まず、『女子枠廃止』を全ての学校に通達しました。」
「あぁ……『女子枠』って、『百害あって一利無し』ですものね。」
「勿論、『男子枠』も同時に禁止した。男女平等だからな。更に、身体能力、学力のランキング、更に美貌で人気投票し、全結果を公表する。」
「あぁっ! それで、自分の市場価値を突き付ける訳ですか。」
「然り。常に自分の順位を白日の下に晒される。勘違いを打ち砕く。」
「ストレス溜まりそうですね。」
「大人は、誰しもストレスと戦っている。それを義務教育で叩き込むだけ。
遅かれ早かれ誰しも通る道。まずは、己の分を弁えさせるのだ。」
「確かに、自己のレベルを把握する事は、必要な事でしょう。」
「他にも『男女平等』『嘘つきは犯罪』『子供を産む事は男女協力作業』
『約束を破る事は犯罪』『”普通”や”常識”と言う事は犯罪』
『人間関係はGiveANDTake』『働かざる者食うべからず』
『お金の管理をできない者は無能』を徹底的に叩き込む。」
「同感ですね。いずれも社会に出れば、常識ですから。」
「最後に、厳しく取り締まるものもある。」
「『厳しく取り締まる』ですか。それは、一体何でしょう?」
「それは、『イジメ』だ。それだけは、犯罪です。故に、『イジメハラスメント』略して『イジハラ』と言う言葉を使っている。」
「それは、凄いですが、どうやって取り締まっているのです。」
「全ての学校に監視カメラを付けさせています。まだ工事中ですが。」
「一部の隙もありませんね。それで、イジメ加害者の処罰はどうします?」
「イジメ加害者を一つの学校に集める。すると、その中で階層ができる。
今までイジメ加害者だった者も、被害者化する可能性あり。」
「まるで、少年院みたいですね。」
「より無法地帯だ。授業は、全てリモート化してあるからな。」
「それって、学力低下しませんか。」
「それも含めて自己責任。これで、社会の厳しさを叩き込む。」
「すると、イジメ加害者だから、学力が低くても仕方ないね。
そう言う風潮が、できそうですね。」
「然り。イジメ加害者は、学力が低い。そうすれば、収入も少なくなる。
それが、それこそが、イジメ加害者への『処罰』になる。」
「分かりました。他には、ありませんか。」
「最後に、子供一人産むにも男女の協力なしには、何も成せない。
一に努力、二に努力、三四が無くて、五に努力。
学歴よりも、学力重視の教育をしっかりしていく。
ここまでが、『二の矢』。次から『三の矢』。」
「では、『二の矢』について一つ質問があります。」
「何なりとどうぞ。」
「先程、性的な項目がありましたが、性教育は如何なさるのです。」
「勿論、それは、誤解です。全て中学校からです。」
「分かりました。」
「では、『三の矢』の説明をしましょう。」
「はい。お願いします。」
「名付けて、『婚活市場介入』と呼ぼう。まず、国営企業の設立。
国営企業は、会員費、婚活パーティー等を含む会員負担を全額無料。」
「そんな事をすれば、民間企業は、経営が立ち行かなくなりますよ。」
「その為に、やっている。まずは、人事の最適化を含めた経営効率化を実施。
そこで、民間結婚相談所を買収、経営権と会員情報を吸収統廃合する。」
「成程、理にかなっていますね。続きをお願いします。」
「当然、買収した会社の元役員は、懲戒解雇とする。」
「それは、退職金も支払わない。そう言う事でしょうか。」
「然り。そもそもあの連中だって、未婚者数増加の片棒を担いでいる。
異論はあるかね。」
「分かります。登録会員が、結婚できずに、ずるずる会員費を支払い続ける。
そんな状態が、長期に渡って継続されれば、会社の利益になります。」
「とは言え、一般の社員には、成婚ボーナスなどで成果成婚を要求。
しかし、成婚を妨害する意図しか感じられない制度を強制してきた。」
「分かります。例の『女性優遇制度』ですね。あれのせいで甘える女性が爆増。結果として、高望み女性の売れ残り現象が、爆増。還暦になっても婚活を続ける女性が、登場する始末。企業としては、『儲かる仕組み』に相違ありません。」
「然り。未婚、未出産の女性、未出産補助の男性、未就職、未起業かつ四十歳以上の国民を全員無期禁固刑に処す。その様に法改正した。
彼らを、国のカネで衣食住を保証する上に、労働権と蓄財権を保障した。」
「これで、『家事手伝い』と言う言い訳も絶滅しました。
しかし、ネットを含めたあらゆる娯楽、医療等は、補償対象外ですね。」
「然り。だが、最低限は補償している。そもそも労働して報酬を受け取ればよい。」
「確かにそうですね。他には、ありませんか。」
「保険会社に、新しい商品『結婚保険』を作らせた。」
「あぁ『結婚保険』って、相手の氏素性、人格などを調査し、それらを基に相手の選定推薦。お見合いの設定等様々な結婚支援を包括的に行わせるあれですね。」
「これで、結婚したくてもできない層が、結婚出産に踏み切れる。」
「素晴らしいですね。」
「何か質問は、あるかね。」
「そうですね、では、一つ、『専業主婦についてどう扱いますか』。」
「それは、生き方の選択肢の一つだ。別に禁止も推奨もしない。
故に、優遇法制度も廃止する様に指示した。こんな所かな。」
「はい。有難うございます。」
「今日は、この辺で締めくくろう。」
「はい。有難うございました。」
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