転校生
バスが来たので、バスに乗りこむ。
みんな元気に挨拶する。
運転手さんも元気に挨拶する。
運転手さんは、神奈川県の横浜からの移住者だって言ってた。
横浜では、トラックの運転手で、なんか派手な……なんだっけ?
「運転手さん、運転手さんの乗ってたトラックってなんて名前だった?」
と私は運転手さんの側まで行って聞く。
「あぁ…あれはなデコレーショントラック。デコトラっていうんだ」
と運転手さんは言った。
そうだデコトラだ。そのデコトラであちこち運送してて、あちこちに女がいるって言ってた。
見た目はちょっと強そうなんだけど、ムカデとか虫が苦手で、案外頼りない。
あの人は農作業とかできないだろうな。
あぁそういえば、田舎ってみんな農作業やってそうなイメージを持ってる人も多いかもしれないけど、私の住んでいるところで2割くらいが農業。
1割くらいが建設系、うちのパパとママみたいに製造業が2割くらい、あとお店とかが2割くらい、公務員が1割くらい、医療が1割くらい、あとはその他って感じかな。
これはね。社会の授業で調べたから、詳しいの。
あっ学校についた。
運転手さんにお礼を言って、下駄箱に向かう。
うちの学校は全体で100人ほどだから、だいたいみんな友達というほどでもないけど、なんとなく知っている。
でもなんとなく知っているからと言って、みんなにおはようと言うわけではない。
挨拶をちゃんとするのは、大人にだけ。子ども同士では、仲の良い子だけって事が多い。
途中でクラスメイトのじゅんちゃんと出会う。
「ミリンちゃん、おはよう」
「じゅんちゃん、おはよう」
「ミリンちゃん、昨日の田舎暮らしのテレビ見た?」
「うん、見たよ」
と私が言うと、
「なんか無人販売所って都会にないんだね」
と私と同じ反応だった。
「そうだね。都会って物騒なのかなって思った」
と私が言うと、
「私もそう思ったし、お父さんもお母さんも物騒だなって言ってた」
とじゅんちゃんは言った。
じゅんちゃんとテレビの話をしている間に、教室についた。
教室には、メルルちゃんがいた。
「メルルちゃん、おはよう」
じゅんちゃんと私は挨拶をする。
「ミリンちゃん、じゅんちゃん、おはよう。昨日田舎暮らしの見た?」
とメルルちゃんは言った。
じゅんちゃんと私は目を合わせて笑う。
「ちょうど、さっき無人販売所の話してたの」
と私が言うと、
「それそれ、私もすごい言いたかったんだ」
とメルルちゃんは笑いだす。
「あっそう言えば、今日転校生が来るんだって」
とメルルちゃんは言った。
メルルちゃんは、この手の話題にとても詳しい。
情報通って感じだ。
「どんな子?」
と、じゅんちゃんは尋ねる。
「私もちらっと見ただけだったんだけど、髪の毛が長くって色が白いキレイな子だった。なんか物語に出てくるエルフみたいな」
とメルルちゃんは言った。
「まじ。エルフ。それすごい友達になりたい」
と私は言った。
すると、じゅんちゃんが、
「ミリンちゃん、エルフが出てくるアニメとか小説とか、見まくっているものね」
と言った。
「えっそうなんだ。ファンタジー系とか、見るとかイメージになかったよ」
とメルルちゃんが言った。
「そう、どんなイメージがあったの?」
と尋ねると、
「食べ歩きとか、グルメ番組」
と、メルルちゃんは言った。
「ひどーい、そんな食いしん坊キャラじゃないよ?」
と言うと、
じゅんちゃんが、
「いやぁ、ミリンちゃんは食いしん坊キャラだよ」
と言った。
(ピンポンポンポン)
(ガラガラ)
先生がやってきた。
みんな一斉に席に戻る。
「起立、礼」
「おはようございます」
「着席」
クラス委員が言った。
「えっと、今日は……、あれなんだっけ?……、あっそうだ。転校生が入って来た。
あっ入っていいぞ」
(ガラガラ)
私は入って来た女の子を見て、
呼吸が一瞬止まった。
目で彼女を追うことを止める事ができなかった。
黒くつややかな絹のような長い髪。
白く透明感のある肌。
整った顔。
メルルちゃんがエルフと表現したわけがわかった。
クラスがざわつく。
「えっと、静かに、では自己紹介してくれ」
と先生は言った。
「はじめまして。沢村スコティです。よろしくお願いします」
と言った。
「じゃあ。沢村は、ミリンの後ろの席な。ミリン、お前いろいろ教えてやれ」
と先生は言った。
何?先生……、それグッジョブすぎるよ。
ありがとう、私はその役目全うするよ。命にかえても。
私はスコティちゃんに手を振って、こっちだと全力でアピールする。
「おいミリン、そんなにアピールしなくても、すぐにわかるよ」
と先生がいうと、クラスメイトはみんな笑った。
私もおかしくなって笑った。
スコティちゃんが近くまで来た。
「はじめまして、ミリンって呼んでね。スコティちゃんって呼んでいい?」
と私は尋ねた。
スコティちゃんは恥ずかしそうに、うなづいた。
なに?スコティちゃんかわいすぎるよ。
「じゃあ、授業を始めるからな。ミリン……沢村は、まだ新しい教科書を持ってないから、しばらく見せてやってくれ。1週間ほどかかる。
席を隣にして構わんから」
と先生は言った。
私はスコティちゃんの隣に机を移動させる。
なんか、スコティちゃん、すごく良いニオイがする。なんだろ?薔薇のニオイを甘くしたような。
でも森の中にいるような安心感も感じる。
スコティちゃんは、
「やさしくしてくれて、ありがとう。ミリンちゃん……」
と言った。
トゥンク……
胸の奥がキュンと締めつけられるような気持ちになった。
なんだろう。
この気持ちは…
ぼーっとしている間に授業は終わった。
休み時間、周りにはクラスメイトが集まってくる。
さっそくガキ大将のけいたが絡んできた。
「沢村……、お前変わった耳してるな~、ちょっと触らせろよ」
とけいたは言った。
私はけいたを止める。
「なに言ってるのよ。こんなカワイイ子をつかまえて、先生に言いつけるわよ」
と私がいうと、
「うるせーよ。ミリン」
と言って、去って行った。
「大丈夫?ごめんね。けいたってアイツバカなの」
と私は言った。
「キャッ」
とスコティちゃんの声がする。
スコティちゃんの方を見ると、けいたがスコティちゃんの耳を引っ張っている。
スコティちゃんの顔色がおかしくなっていく。白い肌は灰色に変わり、目は白目の部分も黒くなつた。
スコティちゃんは、けいたの方を振り返ると、驚いて腰をぬかすけいたに指を指し、
「のぶれんびれえすあぶらばんめなところわけさはならたてらおす でやな」
と呪文のような言葉を言った。
その瞬間……
空間はグニャリとねじ曲がった。




