↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/63

夏の残りと秋の空②

 「どうだった?」


「うん。……うん、多分、いい人……だと思う。」


彰良との初訓練から明けて、次の日の昼休み。

校舎裏の木陰で弁当を突(つつ)きながら、残夏は凪の疑問に微妙な返答を返していた。

そう、多分いい人、だと思う。

言葉が少ないし、表情も動かないから怖いし何を考えているのか分からないが、指導は丁寧だった。

昨日は初回ということもあり基礎訓練だけの体力づくりだから訓練らしい訓練ではなかったのだけど、残夏の体格や体力を見てから今度からのメニューも考えてくれたし、辛いトレーニングは何故か一緒にやってくれた。


「でもすごく怖かった……だってずっと無表情だったんだよ。」


「彰良くん、いつもそうだよ。面白い事があっても笑わないの。」


「凪、知り合いだっけ?」


「うん。彰良くん、玲ちゃんと一緒に居ること多いから。」


「へえ。」


玲と彰良。

昨日一日接しただけだが、正反対な二人なのに清治の言う通り仲が良いのか。

というか玲に普通の交友関係があるのもなんだか少し不思議だ。


「でも彰良くん、いい人だよ。玲ちゃんが不器用なんだって言ってた。」


「そうなんだ……。」


まあ、確かに。

本人に悪気があって威圧的な訳ではなさそうだし、化物を身に宿している残夏の事も特に気にせず次の約束もしてくれた。

それだけで残夏としては十分過ぎるかもしれない。

それに毎日とは言わないまでも、数日おきに指導してもらえるし一人の時用の訓練メニューももらえたから、少しは強くなれるはずだ。


「凪は柳瀬さん、どうだった?」


「なんかね、面白かった!柳瀬さん、フォークとかナイフ投げるんだよ。ぼくもフォーク投げてみよっかな。」


「それは……どうかなぁ。」


なんとも突飛な思考に苦笑を漏らしながら、ふと高い空が視界に入る。

相変わらず暑いけれど、少しずつ肌に感じる熱も下がってきているような気がする。

この夏が終わって秋が深まる頃には残夏も少しは変われているだろうか。


ーー取り敢えずは目の前のことかな……。


午後の実技訓練のことを考えて、残夏は溜息を吐き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「そこまで!小鳥遊、蓮池、宮杜、荘野!お前たちは少しこっちに来い!」


今日も今日とてバラバラの動きしかできない残夏達に、ついに武田の指導が入った。

それに顔を見合わせつつ、気まずい雰囲気の中そろそろと足を進める。

何を言われるのかは聞かなくてもよく分かる。


「お前たち……他のグループと比べて全く動きが合ってないぞ。各々が適当に動いてもぶつかるだろう。周りを見ながら動くんだ。」


「……。」


「そもそも、お前たち話し合ったりはしているのか?毎回適当にしていてもいつまでも良くならないぞ。ここは授業だからと腹を括って少し話をしてみたらどうだ。授業終わりまでまだ時間があるからな。」


そんな言葉を残して、武田は他の生徒たちの方へと去って行ってしまった。

それに全員が視線を向け合う。

しかし誰も口を開かない。それもそうだろう。

残夏と凪は良くても、周りは残夏たちを警戒しているのだから。

そもそも残夏と凪を表立って虐めては居なくとも放置していた2人なのだ。

話といっても何を話せばいいのか。

残夏が頭を悩ませていると、沈黙を切り裂くように声があがった。


「っ、僕の足を引っ張るなと言っただろう!!先生に怒られたではないか!!」


急な大声に、残夏も隣で大人しくしていた凪も驚いて身体が跳ねる。

慌てて声の方を向けば、司が怒りで真っ赤になった顔をこちらに向けて立ち上がっていた。

それに呆気に取られていれば、司の隣で焦った顔をした雄星が、司の腕を引いて強制的に座らせる。


「あーあー、ダメだって司!!お前だって連携下手だろ。そんな事言うなよぉ。」


「しかし雄星、こいつら……!!」


「俺らも悪いって。先生にも言われたしさ、ちゃんと話そうぜ。」


宥められるままに司は落ち着いたのか、渋々といった感じで怒りをおさめた。

その様子に息を吐いて雄星がこちらを向く。

相変わらず体格に似合わず眉は下がっていた。


「ごめんなぁ。俺ら、本当はお前らと話すなって言われてんだ。」


「え?」


「変な話だよなぁ。だから俺、やめるよ。話さないと訓練にならないし……改めて、な。俺は宮杜雄星。8番隊に仮配属されてる。それで南宮(なんぐう)さんからあんまり関わるなって言われててさ。……でも俺、落ちこぼれだからどうせ最後まで高専残れないと思うし……今までごめんな。よろしくしてくれると嬉しい。」


雄星はそう言うと、軽く笑って手を差し出してくる。しかし言われた内容がよく分からなくて身体が動かない。

南宮。残夏を処分しようとしていたあの男。

まさかその人が残夏達を無視するように言っていたなんて。

だが、呆気に取られている残夏と打って変わって凪はすぐにその手を取った。


「えへへ。ぼく、蓮池凪!全然気にしなくていいよ。皆んなね、怖いと嫌いになっちゃう事があるんだって。でもよろしくって言ってくれて嬉しかったから。仲良くしてね、雄星くん!」


屈託のない凪の反応に、雄星は少しだけ驚いた顔をしてから今度こそ柔らかい笑顔を浮かべる。

凪の言葉に安堵したらしい。

そのまま肘で司を小突くのに、司はむっとした顔をしながらもコホンと息を吐き出した。


「荘野司だ。僕は選ばれた人間!だから最高の成績が必要だ!お前たち足手纏いの事なんてどうでもいい!が……でもまあ、そこまで言うならよろしくしてやらん事もない!」


「ごめんなぁ。こんなこと言ってるけど、根はいい奴なんだ。気にしないでやって。」


「全然気にしないよ!面白いね、司くん。ね、残夏くんも!」


凪が振り向くと残夏の手を取る。その手は暖かくて、残夏はそっと息を吐き出した。

雄星も司もどんな人間か分からないし、嫌なやつらには変わりないけれど。

残夏は凪の手に導かれるままに、雄星から差し出された手を握った。


「小鳥遊残夏……。その、まだよく分かってなくて足引っ張ると思うけど……よろしく、お願いします。」


「引っ張るなと言っているだろう!!」


「ああ〜!気にすんなよ小鳥遊。どうせ司が一番足引っ張るんだからな!」


「なんだと!?」


急激に賑やかになった雰囲気に凪が声をあげて笑う。それにつられて、残夏も少しだけ笑うことができた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……腰、もう少し落とせ。あと腹に力を入れろ。」


「はい!」


羊雲が空に浮かび出した今日この頃。

すっかり慣れてきた訓練と指導官も相まって、残夏のやる気に満ちた声は青空へと吸い込まれていった。


 ここ最近、毎日が楽しくて仕方がない。新しく友好関係を結んだ雄星と司は面白いし、彰良の指導のお陰か残夏の腕も少しずつだが上達してきている。

その成果は実技訓練でも徐々に現れていて、この間はついに武田に褒められたのだ。

次なる目標は打倒白石。

そんな訳で残夏は数日おきの訓練を日々心待ちにしていた。


「よし、そこまで。……だいぶ動きが良くなったな。」


「ほんとですか?」


「ああ。悪くない。」


体術訓練が終わったタイミングで、珍しく彰良からの良い評価に頬が熱くなる。

こんなに良いことばかりでどうにかなるんじゃないだろうか。

そんな浮かれ気分も背を押して、残夏は休憩中、彰良に話しかけてみることにした。


「……あいつのこと?」


「あ、えっと……仲が良いって聞いたので……。」


少々不躾(ぶしつけ)だっただろうか。

残夏の質問を受けて押し黙ってしまった彰良を横目に緊張で心臓が鳴る。

だけど、これは滅多にない機会だ。

相変わらず忙しそうなあの人のこと、一番仲が良いという彰良から聞けばもっと良く理解できるかもしれない。

しかし彰良は残夏の質問に答える前に静かに言葉を落とした。


「……なんでだ?」


その問いに、残夏は目を瞬く。

そういえば、そうだ。どうしてだろう。

あの人は怖くて優しくて意地悪で、でも約束を守ってくれて。

初めて残夏の手を取ってくれた人で。

だから、残夏は。


ーーああ、そっか。信じたいんだ……。


玲の手を取った時、嘘でも良いと思った。

残夏が生きる事を許すなんて言って、いつか裏切られても、今この瞬間だけはそれでも良いって。

だけどこうして毎日を生きて、あの人のことを少しずつ知って信じたくなった。

本当に玲は残夏が生きる事を許してくれるのだろうか。

何の力にもならない、玲にとってはお荷物で火種にしかならない残夏を。


「……隊長のこと、信じて……みたいんです。」


だから知りたい。

玲がどんな人間なのか。残夏は期待してもいいのか。一度光を知ってしまえばきっと闇に堕ちたら今度こそ動けなくなる。残夏の中の闇はそれをいつも付け狙っているから。

残夏の言葉に彰良は何時もの仏頂面のまま、しかし少しだけ逡巡するように視線を彷徨わせた。

小さく俯くのに、暑いせいか第二ボタンまで開けられていたシャツから、小さな丸い石が着いたネックレスがのぞく。

薄氷のような白に近い美しい薄青色の石に何故だか視線が向いた。

しかしそれも、彰良が顔を上げると同時にシャツに隠れて見えなくなり、残夏の意識からも消え去った。


「嫌なやつ。」


「え?」


「性格悪いだろ、あいつは。」


なんとも飾らない評価に、残夏は目を瞬かせる。

まさかそんな言葉が返ってくるとは思っていなかったから咄嗟に返事が浮かばない。

ただ、確かに玲にはそういう部分があった。二面性とでも言うのだろうか。

とはいえ、そうですねと同意するわけにもいかず残夏が返答に窮(きゅう)していると、彰良は特に気にする事なく言葉を続けた。


「それから……馬鹿だ。」


今度こそ絶句する。

だってそれは初めて聞いた評価だったから。

玲の事を聞けば、基本的にはその優秀さが耳に入ってくる。馬鹿なんて聞いたことがない。

これは親しさ故の遠慮のなさなのか、それとも本心なのか。

考えあぐねている残夏を前に、彰良は表情を崩す事もなく更に淡々と続ける。


「勿論、頭は悪くない。だけど馬鹿なんだ。自分の事が頭から抜けてんだよ。あの優秀な頭の中には他人の事しか入ってないんだ。」


そこで彰良の目が少しだけ細められた。

悔やむような、それでいて優しげな。

普段全く変わらない表情だから、それは余りにも柔らかく見えた。


「他人が傷付くのは嫌なのに、自分が傷だらけになっても気にしない。それで誰かの代わりに全部引っ被って、何も気付かせてくれない。……俺たちが気付くのは全部終わった後だ。全部終わって、病院のベッドの上であいつが種明かしをするのを聞いて。もしくは起きるかも分からない寝顔を眺めながらな。……そういう、性格悪くて馬鹿なやつ。」


「……、」


「あ、やってるね。」


静かに締め括られた話に何か返そうとして、でも何を言えばいいか迷ったまま口を開く。

しかし残夏が何かを言葉にする前に、訓練場にはのんびりした声が響いた。

その声に振り返れば、ここ数日間出張に行っているはずの玲が手を振っていた。


「隊長……。」


開いたままの口から声が漏れる。それに軽く笑って、近づいてきた玲は残夏の頭を撫でた。


「ふふ、頑張ってるね。お土産買ってきたよ。……あ、青痣。大丈夫?虐められてない?」


「い、いえ……。」


「彰良、虐めるなよって伝言しといたろ。」


「馬鹿かお前。本人が否定してんだろうが。」


目敏く残夏の青痣を見つけて、玲が軽く彰良を睨(ね)め付ける。

しかしそれは責めているというよりも、何処か悪戯っぽい響きを含んでいた。彰良も慣れたものなのか、呆れたように応戦する。

そこで残夏は気がついた。彰良も細身だと思っていたが、それは筋骨隆々の2番隊にいたからだろう。

華奢な玲と比較すると、その体格はひと回りも違う。


ーーというか隊長、すっごく細いんだな……。


ともすれば歳下の残夏の方が身体は大きいくらいだ。身長もそこまで高くないからあと数年もすれば直ぐに追い越せるだろう。

だけどそれを気にさせないくらい玲は鮮やかで目を惹く。それがとても不思議な人だ。

そんな感想を抱いている残夏の隣で二人のやり取りはだいぶコミカルに続いていく。


「てかお前にもお土産買ってきたんだ。はい、大吟醸。冷やしといて。」


「……毎回要らないから、その選ぶ時間あったら寝ろって言ってんだろ。」


「誰がお前にやるって言ったんだよ。俺のだよ。今度行った時開けるから勝手に飲むなよ。」


「お前がお土産っつったんだろーが。」


テンポの良い会話に残夏はついて行けない。

彰良がこんなに話しているのも、玲が普段より少し幼い印象なのも新鮮で不思議だ。

そのまま戯れ合い(じゃれあい)のようなやり取りを何度か続けると、玲はハッとしたように腕時計に視線を落とした。


「やば……東條さんに呼ばれてるんだった。それじゃあまたね。残夏、お土産デスクに置いとくから。」


言い終わる前に駆けて行ってしまう後ろ姿に呆気に取られていると、彰良は一度溜息を吐き出してから慣れたものとばかりに玲から視線を逸らした。

そのまま休憩の終わりを告げられる。

しかし残夏からすれば、今しがたの馴染みないやり取りに頭が追いつかない。


ーー隊長のこと、益々分からなくなったかも……。


勿論その後の訓練に、あまり身が入らなかったのは言うまでもない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「2番隊の副隊長から個別指導して貰ってんの?すげぇなぁ。」


暑さもだいぶ薄まり、心地の良い気温の昼下がり。

いつも通り残夏と凪は校舎裏の木陰で昼食をとっていた。

少し前から雄星と司も一緒だ。2人もどうやらあまりクラスに馴染めていないようで、どうせなら一緒に食べようということになり習慣化し始めている。


「でもどうせ副隊長だろう!副隊長はな、隊長が自由に任命するのだから実力ではない!」


「そうなの?」


「まあそうだけど……でも2番隊の副隊長、実力者って有名だぜ。23歳で副隊長に任命されてんだ。普通なら30台か、早くても20台の後半だよ。それだけすげー人ってことじゃん。」


「そうなんだ。」


雄星と司の会話を聞きながら残夏はお弁当の玉子焼きに手を伸ばした。

雄星は組織の内部事情に精通(せいつう)していて、残夏の知らない事を教えてくれるから面白い。

凪はそういう所は少し疎い(うとい)から。


「彰良くん、すっごく頑張ったんだって。玲ちゃんが隊長さんだから追いつこうって。」


「ふーん。そういえば隊長っていつ隊長になったの?23よりも早かったって事?」


「いやいや、お前それくらいは知っといた方がいいぜ。お前のとこの隊長、高専卒業と同時に隊長だからな。史上最年少かつ、塗り替えられる人なんていねーよぉ。」


「え、そうなの?」


驚きに目を瞬かせれば雄星が眉を下げて頷いた。

優秀な人なのだろうと周りの評価で分かっていたが、それ程とは。

高専卒業と同時なら20歳で隊長という事になる。

あの人、隊員は経験した事がないのか。


「玲ちゃん、すごい人なんだよ。」


「知らなかった……。」


誰もそんなことまでは教えてくれなかったから。

そんな残夏に雄星は唐揚げを摘み(つまみ)ながら、話を続けた。


「すげー有名な話だけど、隊長職って推薦かつ他の隊長の承認がいるんだ。全員のな。それでうちの隊長……南宮さんは反対したらしいんだけど、その時の亜月隊長の威圧感に気圧されて承認したって話だぜ。それが原因で今も犬猿の仲なんだってさ。まあ、亜月隊長は東條派で南宮さんとはそもそも袂(たもと)を分つからなぁ……。」


「その東條派と南宮派って考え方が違う派閥なんだっけ?それってそんなに根深いの?」


「お前、本当に何にも知らねーんだなぁ……。」


雄星が溜息を吐き出す。

しかしそう言われても残夏はまだこの世界に来て日が浅い。知っている事よりも知らない事の方が多いのだ。

そんな残夏に雄星はまた頷くと、仕方ないよなと言いながら口を開いた。


「まず前提から話すと、組織の運営には五つの家が大きく寄与してるんだよ。」


「五つの家?」


「そう。五大名家って言うんだ。それぞれ、北郷(ほんごう)、南宮(なんぐう)、西廣(にしひろ)、東條(とうじょう)、久遠(くおん)ってな。」


「北郷と西廣って……。」


「知ってるのか?まあ、北郷は2番隊の隊長にいるし有名だよなぁ。西廣は14番隊にいもいるんだっけ。8番隊にいる西廣さんの弟だったかな……。まあ、そういう訳でこの五大名家は組織に深く根付いてる。なんせその人たちのご先祖様が組織を作ったらしいからなぁ。国営になる前から、五大名家は組織の基盤なんだ。久遠だけがちょっと特別で、あそこは1番隊専任なんだけど……それは今は置いとくぞ。それ以外の北郷、南宮、西廣、東條な。この四家の中でも特に南宮と東條は昔から対立が激しかったんだ。守りの南宮と、戦術の東條ってな。どっちが覇権(はけん)を握るかでそりゃあ昔から反発し合ってきた。それが今も続いてるんだ。」


そんなに昔から組織が存在していたのか。

その事実と、未だに対立しているニ家に巻き込まれている現状に頭が混乱する。ここまで根深い問題だと思っていなかった。

ただ、残夏の存在が気に入らないだけかと思っていたのに。


「今はちょっと東條が先行してる。北郷も東條派だし、西廣も……西廣は分かれてるか。大部分は南宮派だけど、14番隊にいる時期当主さんが東條派だから大きい声が出せないんだ。それで南宮はヤキモキしてんだよ。なんせ東條の下には亜月隊長がいる。あの人、めちゃくちゃ優秀で南宮派も東條派もまるっと収めちゃってるんだ。だから南宮は嫌がらせみたいな事しか出来なくてチクチクしてんだろうなぁ。」


「そんな家の問題で……。」


残夏の呆れた声に、黙って聞いていた司が今度は口を開いた。


「重要な事だぞ。組織は大きい。しかも歴史は古い。昔からいる人間の意見を無視すればそれは歪みになる。新しい考え方がシステムに反映されるのは遅い。特に人間がメインの仕事ではな。どんなものにだって人間の思惑が絡んでいるんだ。一朝一夕(いっちょういっせき)とはいかないだろう。特に血縁関係が力に直結するような世界ではな。」


思っていたよりもずっと論理的な意見に、残夏は瞬く。

それに苦笑して、雄星は肩を竦めた。気安い雰囲気が流れる。


「そうそう。めーちゃくちゃ多いぜ、血縁者。俺と司も南宮の遠い親戚で幼馴染だし、白石はもっと近い家だ。探せば五大名家に縁のある人間か、ハグレモノに恨みを持ってる人間ばっかりだよ組織は。」


「そうなんだ……。」


余りにも規模が大きい話に頭はついていかないが、雄星の話はなんとなく分かった。

血筋が強さに直結する組織内では、血族の力が大きいのだ。

それは個人的な感情よりも更に深い。因縁のようなものなのだろう。


「まあ、でも気にすんなって。小鳥遊のことも蓮池のことも、俺ら知らなかったけど今はこうして仲良く出来てんじゃん。大きいところで見ても始まんないからさ。少しずつ分かり合っていけばいーんよ。」


「そうだよ。皆んな勘違いしちゃうから、ちょっとずつ頑張って諦めないでいればいいんだよ!」


雄星から背中を叩かれ、凪から笑いかけられる。

それだけで心が暖かくなるのだからきっと2人の言う通りだ。

残夏に出来ることは多くはないけれど、少しずつ頑張っていけばいい。

分かってくれる人は必ずいるのだから。


「ふん!そんな些事(さじ)、直ぐに誰も気にしなくなるだろう!何故ならこの僕が最年少の隊長になるからな!!」


「いやー無理だって。お前、隊長の器じゃねーよぉ。」


「なんだと!!?」


司の怒声に笑い声が上がる。

穏やかな日の光が少し色づいてきた葉に当たって柔らかく煌(きら)めいた。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

エピソード4-2完了です。エピソード4は残り1話になります。

玲と彰良の関係や、残夏たちの友情はいかがだったでしょうか?

設定が複雑ですが、ゆっくり楽しんでいただけたらと思います。


次回更新は水曜日です!(19:30目安ですが、前後する時はXでお知らせします!)

近いうちに本編以外の楽しめる作品も出そうと思っているので楽しみにしていただけたらと思います。

よければ感想、評価、リアクションなど頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。