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忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました  作者: 水波 悠
第10章 揺れる思い

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ザイレムの平穏

 ザイレムの帝都に戻ったボクは、まずカイエン、ユエン、そしてカグロウに幹部討伐の報告をした。


「……なに? もう終わっただと?」


 カイエンの太い声が思わず裏返った。


「嘘でしょう……?」


 ユエンも目を丸くする。


「あなたがザイレムに来て十日、ヴェルナードを出てから二十日ほどしか経ってないのに。戻りの日数を考えても余裕があるくらいだわ」


 驚愕に染まる二人を前に、ボクは苦笑いを浮かべるしかなかった。


「もともと貴国と合意していた内容はすべて終わったけど、思いのほか早かったな……」


 カイエンは腕を組み、まだ信じられないように首を振る。


「えぇ。まさかあれだけの吸穢の結晶をあの速度で処理できるなんて。それに、幹部討伐も数日はかかると思っていたのに」


 ユエンもため息交じりに言う。


「もしよかったらですが――」


 ボクは一呼吸置いて提案した。


「吸穢の結晶の浄化を、あと五日間続けましょうか? ボクにとっても修行になりますし、それがザイレムの皆さんのためにもなるなら、一石二鳥です」


 三人の顔に笑みが浮かぶ。空気が和んだそのとき、カグロウが口を開いた。


「邪鬼の幹部も討伐できた。穢気の調和も大幅に進んだ。……この状況であれば、セルギス様にこれ以上邪気の力を取り込んでいただく必要はないのでは? むしろ、今セルギス様の体を巣食う穢気を、コウ様に調和していただいたらどうでしょう」


 意外な提案に、カイエンとユエンは顔を見合わせて黙り込む。


「セルギスから穢気を取り除いたら、戦力的には確かに厳しいが……」

「でも、カグロウが言う通り、いつまでもセルギスに重荷を背負わせるわけにもいかないわ」


 ユエンの声は迷いを孕んでいた。カグロウはさらに言葉を重ねる。


「ザイレムには他にも優れた者たちがいます。皆で力を合わせれば、困難も乗り越えられるでしょう。それに……セルギス様を支えておられるカレン様の負担も考えねばなりません」


 その言葉には、セルギスとカレンへの気遣いだけでなく、二人のそれぞれの子供に対して、長年重責を背負わせてきたというカイエンやユエンへの思いやりも込められているように感じた。


 しばしの沈黙。その場ですぐに結論が出るような雰囲気でもなかったし、出すべき問題でもないだろうと思ったボクは口を開いた。


「では、こういうのはどうでしょう? 五日間、吸穢の結晶の浄化を行う。その間に結論を出してください。セルギスさんの中の穢気を浄化するのに、それほど長い時間はかからないはずです」


 三人は視線を交わし、やがて揃って頷いた。

 翌日から、再び結晶の浄化に取りかかることになった。


 ***


 五日間。結果は自分でも驚くほどだった。


 浄化した結晶は五十本。国内に溜め込まれていた吸穢の結晶はほとんど消え、最後には遠方から運ばれてくるのを待つほどだった。修行の成果は明らかで、今ではユエンの丸薬に頼らずとも体内に取り込んだ穢気を効率よく調和気へ変換できていた。


 そしてその日、ボクはセルギスが横たわる部屋へと通された。

 ベッド脇に立つカレンの顔は緊張に強張っている。カイエン、ユエンとカグロウも見守っていた。


「では、始めますね」


 声をかけ、ボクはセルギスの丹田に手を当てた。


 吸穢の結晶とは違い、セルギスの穢気は殻の中に閉じ込められているようで、こちらに侵食してくる気配がなかった。だが気を送り込んで道を開くと、濁流のような穢気が押し寄せてくる。


 数時間にわたり、ボクはそれを調和へと変換し続けた。見守る四人の呼吸が聞こえるほどの静寂。やがて――。


「……これで、おそらくセルギスさんの中の穢気はなくなったと思います」


 ボクはセルギスの中の穢気を感じなくなったと同時にそう言い終える。すると、少ししてセルギスが小さくうめき、ゆっくりと上半身を起こした。


「……あれ? みんな揃って……どうしたの? それに……この体の軽さは……」


 その声に、カレンの瞳が潤む。


「セルギス様……」


 駆け寄ってその手を取り、額に押し当てる。


「少しだけ、二人にしてやろう」


 カイエンの言葉に従い、ボクたちは部屋を出た。


 しばらくして、セルギスとカレンが戻ってきた。セルギスは現状を聞かされたらしく、ボクの前に立ち感謝の言葉を述べる。


「今回は、本当にありがとう、コウ君」


 差し出された手を握り返す。


「いえ。以前、ボクもカレンさんに助けてもらいました。そのお返しです」


 カイエンは首を振り、目元を拭う。


「まさかここまで回復するとは……この礼、どう返せばいいのか」


「では、そのお礼はセレフィアが窮地に陥ったときまで取っておいてください。ボクがここまで成長できたのはザイレムの皆さんのお陰ですから」


 その言葉に、一同は深く頷いた。


 その日の夜、出発を前に、カイエンは盛大な宴を開いてくれた。普段はこういった宴にはなかなか参加ができなかったカレンとセルギスも揃い、普段以上に明るい空気に包まれる。杯を掲げながら、ボクはふと思う。


(ボクの力が、少しでも誰かの未来を良くするきっかけになれば……)


 しかしその願いとは裏腹に、セレフィアではすでに予想外の事態が進行していることを、ボクは知る由もなかった。


これで第10章は終了です。

次の第11章が最終章となります!

本格化する邪鬼との闘い、そしてセレフィアで何が起こったのか。

いよいよ、クライマックスです!


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