表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/42

5.先生もマッサージ

 


 明日からの話もまとまって、解散の雰囲気が流れはじめたので。


「あの、ルーィ先生も魔法を使われるんですよね? 魔力の流れが悪くなっていますので、マッサージを受けてみませんか?

 騎士様方にお勧めするなら、まずは体験しておいた方がいいですよね?」


 すかさずマッサージを申し出る。


 魔力視のことが大っぴらになってトラブルになるのは避けたいけれど、お金が欲しいのも事実。

 ルーィ先生は私を守ると宣言してくれているのだから、能力をちゃんとアピールしてお仕事を貰わなきゃ!


「いや、今日は仕事終わりに話し込んで疲れたろう。また今度でいいよ」


「いえいえ、全く疲れてないので大丈夫です!

 ちょっと痛いかもしれませんけど、絶対良くなりますから! ぜひ!」


「そこまで言ってくれるならお願いしようかな」


 ちょっと無理やり感はあるけど、今後の仕事をゲットするため!


 ルーィ先生は左右の流れはかなり均等だけれど、手や肩を中心にかなり魔力が詰まっている。


 机を回り込んで座っているルーィ先生の横へ行くと手を差し出してくれた。


「じゃあ触りますね〜」


 最初は右手から。

 特に人差し指と薬指に濃い渦が出来ているのでぐいぐい押す。


「うぐぅっ、、、っく、、」


 皆が言うようにめっちゃ痛いんだろう、かなり顔を顰めている。


「あの、そこまで身体がつらくないなら、やめておきますか?」


 この痛みを味わうくらいならずっと痛くてもいい!ってくらい痛いかもしれないから聞いてみた。

 私は、このマッサージがどのくらい痛いのか分からないからね。


「……いや、続けてくれ。君が充分だと思う所まで、やって欲しい」


 研究熱心なのか身体がずっと痛いのが嫌なのか、その両方か。

 とにかくマッサージを続けて欲しいらしい。


「では向こうの診察台に移って頂けますか?

 背中や足もマッサージしたいので」


 上半身が中心だけど、足も流れが良いとは言えない。

 渦が大きく濃い所だけじゃなくて、全身の流れを良くしてあげないとね。



 診察台にうつ伏せで寝てもらい、背中を押す。


「ぐあああっ」


 人間から出るとは思えない悲鳴が出て、咄嗟に離しそうになったけどむしろ力を込める。


 痛いってことは効いてるってことだ!!


 しばらく悲鳴続きだったけれど、少しづつ減ってきた。

 慣れたのか痛みが減ったのか、悲鳴を上げる元気も無くなったのか。


 少し小さくなった魔力の渦が、もっと小さくなるように魔力の流れに沿って摩る。


 それは痛くないようで、強ばっていた体の力が抜けた。その隙を見計らって渦の中心を突く。


「うぎゃああっ」


 大きめの悲鳴を無視してまた摩る。

 それを繰り返すこと30分ほどで、はっきりと分かるほど魔力の詰まりは少なくなった。


「このくらいにしておきましょうか。

 やりすぎは良くないと院長先生は言っていましたし、これでも随分楽になったかと思います」


 ぐうっとひとつ、大きく伸びをして肩や手首をぐるぐる回すルーィ先生。


「本当にすごいな。これはもう、痛くないと言ってもいいくらいだ。

 クラウゼ君が出歩いているのも納得できる。

 彼が女神だと絶賛するだけのことはあるな」


 痛みの減った自分の手のひらをまじまじと見つめ、感心してくれている様子。

 だいぶ痛かっただろうけれど、マッサージの効果アピールは成功したっぽい!


「じゃあ、明日から雇ってくれますか!?」


「もちろん。いやあ、あまりにも痛かったが、それを我慢した甲斐がある効果だな。

 痛みで動けない人にどの程度効くのかは未知数だが、日々マッサージすることで改善するかもしれないし……」


 私と話ながらも思考の中へ入っていってしまったルーィ先生。


 私、どうしたらいいかなぁ。


「ああ、ごめんよ。今日は面接だけと思っていたが、これだけのことをしてもらったのだから報酬が必要だな。

 本当にありがとう」


「えっ、こんなには貰えません」


 またしても臨時報酬ゲットで喜んだのも束の間、流石に30分のマッサージで日当と同じ金額は貰えませんって!

 しかも、今日はクラウゼ様にももらったし……。


 孤児院育ちでお金がないのは事実だけれど、自分の身の丈に見合わないものは貰ってはいけないとも教えられている。

 騙されないためにも、弱みを握られないためにも、自分の実力にあったものしか貰ってはいけないと。


 院長先生に教えてもらったことをきちんと守って正しく生きてきたつもりの私としては、貰いすぎは断らないといけない。


 本当は欲しいとしても。


「貰いすぎではない。我慢するしか無かった俺の痛みをとってくれたのだから」


「それでも、高すぎます。今日はクラウゼ様にも頂いたのに」


「うーむ、俺はいいと思うが、君が気にするならまあ下げよう。報酬を下げる交渉をされるというのも変な話だが」


 納得して貰えたようで何より。

 でも報酬は欲しいので、1/3の金額を頂いた。

 今日は臨時収入が多くてウハウハだ。


「じゃあ、明日からよろしく頼む。

 君の両手に、騎士団の未来がかかっているからな!」


「よろしくお願いします」


 かなり大袈裟な言葉に送られて、家路についた。

 結構遅くなったけど、仕事も貰えそうで良かったな。


 というか、明日からはこの時間に帰るのが普通になるのか。

 ご飯の調達場所考えないとなー、なんてことをつらつらと考えながら歩いて帰った。



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ