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マッサージで最強騎士団を育成します!  作者: ことりとりとん


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34/42

34.パンケーキの宝石箱

 


 ラジェさんが来てくれてから1ヶ月ほど。

 彼は本当に頑張って働いてくれていて、私なんか全然追いつけないくらい。


 特にラジェさん一人でも出来るマッサージを研究してくれていて、劇的ではないけれどきちんと効果があることも分かった。


 私も目に頼ってばかりいないで出来ることを増やさないと、と張り切っていると、ある日の昼休みにイリスちゃんがため息交じりにアドバイスしてくれた。


 「エリシアちゃん、頑張りすぎだよ? そんなに気を張ってたら、壊れちゃいそうで心配〜」


 「そうかな? 全然大丈夫だよ」


 「だって、お休みの日もろくに休んでないじゃないの。いつも医務室に居て、結局みんなにマッサージしてるんでしょう?」


 それは確かにそうだ。

 治癒班のシフトはあってないようなものなので、皆適当に出勤している。というかずっと居る。


 トップのルーィ先生が医務室に住んでるんだからそうなるよね、って感じ。


 「だって、私がお休みでも出動する部隊はあるし、魔法をガンガン使う人も居るでしょ?

 じゃあ帰ってきてなるべくすぐにマッサージしてあげたいじゃない。

 ルーィ先生は休みなさいって言うけどねぇ」


 「でも、エリシアちゃんの大活躍のおかげで、第8部隊が組めそうなんでしょう?」


 「そうらしいのよ。私が来た時は寝たきりだったのに、もう戦線復帰してる人を見ると頑張って良かった、って思うのよ。

 でも、中々治らない人もいるんだけどね」


 私は自分の力不足を嘆くけれど、イリスちゃんは違った。


 「いや、エリシアちゃんは充分活躍してるって!

 だからさ、自分の心と体をもっと大事にした方がいいと思うんだよ、私は。

 ってことで、筋肉ダルマばっかり見てないで、たまには可愛いお店でお茶とかどーお?ってお誘いしてみてもいい?」


 いつもと同じ明るい声で、でも私のことを考えて言葉は控えめに誘ってくれるイリスちゃんの心遣いがじーんと嬉しい。


 「もちろん! 筋肉ダルマって酷い言い方だけど。可愛いお店でお茶って、憧れてたんだよね」


 昔、孤児院にあった絵本を思い出す。

 妖精の国で可愛いお茶会に招待してもらえる、ってやつだ。


 「じゃあ決まりね! 次の休みはいつ?」


 あっという間に私の予定を抑えられ、彼女の仕事が終わってからの待ち合わせに決まった。


 ああ、その日が来るのが今から楽しみすぎる!







 「きゃあ、かわいいっ!」


 店構えから女の子向け全開の可愛らしいパンケーキショップで、もうテンション爆上がり。楽しすぎる。


 「いいでしょー? フルーツがとっても美味しいらしいのよ」


 私はこういう店での振る舞いが分からないのだけれど、イリスちゃんが私の分までまとめて注文をしてくれた。

 よーく見ておいたから、次にもし一人で来たら自分で出来そう。


 「イリスちゃんはこのお店によく来るの?」


 「ここは初めてかな。でも同じような店はよく行くよ。実家の仕事の繋がりもあるし」


 なるほど。商家というとイメージが湧かないけれど、こういうお店とも仕事をするのか。すごいなぁ。


 そうして二人で何でもないことをぺちゃくちゃ話しているうちに、とーっても素敵なパンケーキがやってきた。


 「うわぁ、これ、ほんとに食べていいの?」


 「もちろん! いただきまーす!」


 パンケーキの上にふわっふわの生クリームとたっぷりのフルーツがトッピングされていて、もう宝石箱かと思うくらいにキラキラかわいい。


 崩すのがもったいないけれど、食べないのはもっともったいないのでぱくりといただく。


 「んーー! おいひー!」


 「ね、美味しいよね!」


 美味しいものを食べられて、しかもおいしいねって言い合える相手がいるってこんなにしあわせなことないよねぇ。


 「お給料上がるらしいし、貰ったらまた来たいなぁ」


 フルーツたっぷりだけどお砂糖は控えめらしく、めちゃくちゃにお高くはない。

 もちろん掃除婦の給料では厳しいけれど、団長が見せてくれたあの額が貰えるのなら、また来れるかも!


 「いい雰囲気だし、私もまた来たいから、来る時は誘ってね」


 「もちろん!」 




 「ていうかさ、雰囲気良いからデートも多いよねぇ。うらやましー」


 女の子同士のお客が多いが、デートらしき男連れもちらほら居る。


 「そうだねぇ。イリスちゃんはいい人いるの?」


 お互いあまり深入りはしてこなかったけれど、女子はやっぱり恋バナが大好き。その手の話にはすぐにのっかる生き物なのだ。


 「今んとこ居ないんだよねぇ。食糧隊に、一人狙ってる人は居るんだけど」


 「そうなんだ。イリスちゃん紅一点なんだから、選び放題じゃないの?」


 「まあ、皆可愛がってはくれるけどさ、恋愛とは別問題っていうか……

 てか、恋愛対象として見てくれてるのかな……」


 男ばかりの職場でも、恋は思うようには進まないらしい。


 「大変だねぇ」


 「それよかエリシアちゃんはどうなのよ? 食糧隊は一般兵ばかりだけど、そっちはお貴族様でしょ? いいじゃん、玉の輿!

 あの、ヘビの人とかどうなの?」


 きゃぴきゃぴ笑うイリスちゃんは本当に楽しそうだ。ヘビの人呼ばわりされたラジェさんは可哀想だけど。


 「いや、ラジェさん結婚してるし子供も居るよ」


 「それじゃあダメかぁ〜。

 いや、ルーィ先生がいるじゃん! でもあの人平民出身だし、玉の輿ではないか。

 それに、ルーィ先生なら余裕で貴族の娘さんと結婚できるよね? 騎士団の誰かの親戚とかさ。

 そしたら貴族になれるもんねぇ。騎士団年金あるし、魔法使いだし、あと身分があれば完璧じゃない?

 もう結構いい歳だし、そうするのかな?」


 ズバズバ言うイリスちゃんの言葉は全くもってその通りで、凄く納得感があった。


 それと同時に、少し、ほんの少しだけ心が沈んだ気がした。


 ああ、ルーィ先生は貴族の娘と結婚するようなすごい人なんだ、って。

 うん、分かってたよ。そうだと思う。


 イリスちゃんが玉の輿を狙うのと同じだよね、きっと。うん。


 「どうなんだろうね。ルーィ先生には、聞いたことないな。

 それよりさ、やっぱりこのパンケーキ本当に美味しいよね!」


 大きめに切ったパンケーキにとびきり沢山のクリームとフルーツを乗せて。

 お行儀悪くかぶりついたら、少し沈んた心は持ち直したとおもう。きっと。


 「おいしいねぇ」


 「イリスちゃん、こんなにいいお店を教えてくれてありがとう。また一緒に来てね」


 「もちろんだよ」


 私の今をよく知っている女の子の友達は、貴重な存在だと思うんだ。

 それに、仕事では男の人ばかりと話しているから、たまにはこういう女子会も楽しいよね。



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