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マッサージで最強騎士団を育成します!  作者: ことりとりとん


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33/42

33.新しい道具

 



 「おっ、帰ってきよったな。これでどうじゃ?」


 昼時間は前からと同じく活動中のメンバーに戦力増強も兼ねてマッサージしているので、いつも医務室へ戻る。

 それをルーィ先生から聞いていたのだろう用務長が待ち構えていた。


 「わあ、すごいですね! こういう形ならとっても使いやすそうです」


 木でできたTの形で作りとしては非常にシンプル。

 持ち手は私の手にジャストフィットなので握りやすいししっかり体重かけられそう。


 「ルー坊が、死ぬほど痛いと言っておったからのぅ。加減できるように先の細さが違うやつもある。あと、こうして先に付けられる綿も作ってみたが、どうじゃろうか」


 渡されたのは先が指くらいの太さになっていたが、こっちはそれよりは細い。威力がアップしそうだ。

 それと、すぽっと被せられるフェルトのカバー。

 これがあれば、症状の軽めな人は痛すぎないようにしてあげられるかも。


 「色々作ってくださってありがとうございます。とっても使いやすそうです」


 「そりゃあ良かった。今の騎士らの命は嬢ちゃんにかかっとるからな、頑張っとくれ」


 やけに真剣に言われても、命なんてそんな実感は全くない。


 「そんな大層なものじゃないですよぉ」


 「いいや、嬢ちゃんの腕は、ルー坊の身体を持たしとるだけでも十分に意味があるんじゃよ」


 「それは団長にも言われました。だから、毎日ちゃんとマッサージしていますよ」


 「そりゃあ良いことじゃ。

 なにせ、ルー坊が来る前と後じゃあ全然違う。自分の息子や孫のような歳の男の葬式に出んでええだけで、どれだけ幸せか」


 その台詞は重すぎる実感を伴っていて、私の両肩にのしかかって来たような感じがする。


 「嬢ちゃんは他の治癒術士を見たことが無いから分からんかもしれんが、ルー坊の魔法は別格じゃ。わしは前やその前の治癒術士も知っとるが、肉を繋ぐだけでもヒィヒィ言っとって、すぐに反動痛で動けんようになって引退して行った。

 骨を繋いでも涼しい顔をして、10年経ってもまだ平気で現役を続けとる。立派な奴じゃ」


 昔を思い出すように遠い目をした用務長の話は続く。


 「じゃがな、最近はルー坊も流石に伏せる事もあったし、そもそも働きすぎじゃ。

 休みも無く、夜中でも呼ばれたら出陣する。

 他の騎士も夜でも働いとる、と本人は言うが、ローテーションがあるじゃろう? あいつは一人しかおらんで換えが効かんと言うのに、無茶ばかりしおる」


 「それは本当にそう思います。先生も休んで欲しいですよね」


 「そこで、嬢ちゃん。君の出番じゃ。

 本人は自分の身体に気を配るつもりが無いようじゃからの、嬢ちゃんが気をつけてやっとくれ。

 誰かが見張っとらんと、すぐに疎かにしよる。

 今は若いから良うても、そのうちガタがくる」


 「ルーィ先生っておいくつですか?」


 ちょうどいいチャンスなので聞いてみる。

 用務長はここの歴が長いみたいだからね。


 「確か、もう24か5になるんじゃなかろうかな。

 グレイゼも、もうすぐ30じゃろう。あいつもルー坊並みに魔法が使えるし、二人共光魔法の神様に愛されとる。

 じゃが、所詮は人間、歳をとる。グレイゼのことも、気を使ってやっとくれよ」


 「分かりました。でもまだ、マッサージ出来てないんです」


 私のスケジュールはルーィ先生が握ってるし、団長は忙しいようで順番に入っていない。


 「そりゃあ良うないな。マッサージを受けるように、わしから本人に言っておこう。

 今、嬢ちゃんの腕が騎士団を支えとる。これを維持できるなら、わしが作れるモンは何でも作るからの。

 遠慮せんと、何でも言っとくれ。別にモノで無くても、何でもじゃ。

 わしはここで一番長く生きとるから、色々知っとることもあるからのぅ」


 用務長はもうかなりの歳だろうけれど、瞳にはそれでも衰えない強い光がある。

 ここまで来るまでに、本当に色々あったんだろう。


 そんな彼が言ってくれるのだから、私のことを必要としてくれる人は沢山居るし、役に立てていると思う。


 きっと、私のマッサージに期待してくれているのは用務長だけじゃあないだろう。

 そんな皆の期待に応え続けられるように、頑張ろう。


 改めてそう思った所へ、昼休みの施術対象者がやってきた。


 「おう、ちょうどええの。試しに使ってみておくれ」


 「ん?」


 今日はキース様の順番なのだが、来てみたら用務長が居たものだからきょとんとしている。


 「いえいえ、こちらの話ですから、大丈夫です。いつものように、こちらへどうぞ」


 「いえ、それは……?」


 私の手の中の道具を見て恐れおののくキース様。


 「用務長に作って頂いたんですよ。今もらったばかりなので、キース様が一番乗りです!」


 「ぉおう……」


 一番乗り、っていい感じの表現したのにめちゃくちゃ嫌そうじゃん!

 それでもやるけどね!


 「だぁあああ!!!」


 いつもより軽い力で、いつもと同じくらいの悲鳴だし、効果も同じくらい。


 「用務長、ありがとうございます。指は全然痛くないし、良さそうです」


 「うむ、じゃあ頑張っとくれよ〜」


 呑気な台詞を残して用務長は帰って行ったけれど、キース様はそれどころじゃなさそうだね。


 それもまた、いつも通りかな。



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