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マッサージで最強騎士団を育成します!  作者: ことりとりとん


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31.絶望の中の光 side:ラジェ

 


 俺は、フランツ・ラジェ。22歳、王宮魔法騎士団五番隊所属、4年目の騎士だ。


 生まれは男爵家の5男とさほど良くはないが、俺にはかなり強力な魔法の才能があった。

 そのため、実家は充分な教育を施してくれたし、努力は怠らなかったにせよ、苦労らしい苦労はせずに良い仕事に就くことが出来た。


 王宮魔法騎士団といえば全男子の憧れの的と言って差し支えなく、俺もその一人だった。

 もちろん反動痛は辛いが、それは人智を超えた力を操るためのことと辛抱を重ねた。


 そうして騎士団に入り、恋人が出来て結婚し、子供も生まれた矢先。

 順風満帆だった俺の人生が、絶望の暗闇に包まれてしまった。


 俺の生活の根幹を支えてきた炎魔法が、呪いによって突然失われたのだ。


 それからは地獄の日々だった。

 休暇を貰ったが復帰の目処はたたず、かと言って引退には若すぎる。妻は何も言わずにいてくれたが、態度の端々に不安が現れていた。

 将来像が跡形もなく崩れ去り、何とか治らないかと手を尽くすも、理由すら分からないまま。


 そんな中、団長命令で治癒班への異動となった。

 そもそも治癒魔法が使えるわけでもない俺が何故、と思ったら、魔法使いですらない若い女の子のサポート役だと言う。


 プライドがどうとか言っていられない、と覚悟していたものの、実際会ってみると、ぴたりと俺の症状を言い当てる凄い人だった。

 もしかしたら治るのかも、と一瞬我を失った俺を軽蔑もせず、しかも一緒に働いてくれるという。


 自分の生活にいっぱいいっぱいで、自分よりも年下だろう女の子に当たったのは反省している。

 それもきちんと謝れば許してもらえた。


 そして、俺が一番衝撃を受けたのはその技術を目の当たりにしてからだ。


 最初は何をしているのかもよく分かっていなかった。実家の領地には温泉地があるためマッサージ自体は知っているが、せいぜい気休めの民間療法という認識。


 しかし、彼女のマッサージを受けた先輩方が、見てわかる程に回復していくのだ。

 反動痛の休暇期限が半年と定められていることからもわかる通り、回復までには非常に長い時間がかかる。


 軽い魔法を少し打った程度なら休まなくても大丈夫な程だが、積み重なっていくと1ヶ月、2ヶ月と休みが長くなり、回復しづらくなっていく。

 彼女が今施術しているのはもう引退間近と囁かれる7年目以上のベテラン騎士達だ。


 そうそうすぐに治りはしないと思っていたが、ショルツ先輩が何とか自力で起き上がることが出来たのだ。

 こうなるまでにはまだ2ヶ月ほどかかる見込みで、もう戦場に立つことは出来ないのではと思われていたのに。

 もしこのペースで回復するなら、1ヶ月以内での復帰も夢ではない。


 だが、それでは俺はただ見ているだけで、何の成果も上げていない。

 上官であるルーィ先生に俺の仕事が欲しい、と訴えると、エリシア先生に事情を話した上で自分の仕事を割り振ってもらえた。




 それは、エリシア先生の指示通りに体を撫でる仕事で、力もものすごく必要というわけでもない、比較的簡単な仕事だった。


 しかし、それでは俺でなくても良いと言われてしまうかもしれない。

 それは大変困るので、いつかは一人で出来るようにならなければいけないが、道のりは遠そうだ。


 エリシア先生に頼んで非常に細かい指示とアドバイスを貰えるようになったので、個人についてそれぞれ覚えていこう。

 騎士団全員でも100人分覚えればいいだけだ。


 ルーィ先生へのマッサージは毎日行うそうなので、手始めに彼から覚えたい。


 俺は勉強は割と得意な方だし、真面目で頭でっかちと言われることもあるのだから、その能力を今使うべきだろう。






 翌朝、厚手のカーペットを巻いたものを左肩に載せ、右手にはノートとペンを持った状態で現れた俺を、エリシア先生は何か不審なものでも見るような目で見てきたが。


「カーペット、準備して下さったんですね。ありがとうございます」


 朝からはじけるような笑顔を見せてくれたので良かったのだろう。


 その日から、俺は一生懸命全力で働いた。

 エリシア先生の手に負担をかけないよう、人間だけでなく荷物も俺が積極的に運ぶし、なるべく休息をとってもらう。

 昼休みや合間の時間を使って施術内容をノートに記録し、どこをどんな風に揉んだか、出来るだけ忘れないように工夫した。


 終業後には適当な同期を捕まえて実験台になってもらい、体のどこをどう揉むと痛いのかを研究したりする。

 特にその日の昼休みにエリシア先生と施術したやつが同期や後輩なら、夕方にすかさず捕まえてもう一度復習するようにした。


 すると、意外なことを言われた。


「エリシア先生のマッサージは、気が狂うかと思うほど痛いが、ラジェのマッサージはむしろ気持ちがいい」


 それでは効果は薄いのでは、と思ってエリシア先生に見比べてもらうと、少しとはいえ効果がありそうだと分かった。


「本当に危機的状況ならエリシア先生の激痛も我慢するが、そこまででもなければラジェのマッサージの方がいい」


 そんな声も聞かれるようになったが、やはり効果の高いエリシア先生を頼った方が良いと思うぞ。


 あの方は、ルーィ先生の治癒魔法ですら治せない反動痛を治せる女神様なのだから。

 少しくらい痛くとも、騎士なら我慢しろ。



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 ……お前はやられたことないから、そう言えるんだよ。


 って声が聞こえてきそう。

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