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18.団長からの激励

 


「よし、話も一区切りついた所でちょうどいい時間になったから、団長に挨拶へ行こうか」


「団長ですか? すっごく偉い人なんじゃ……」


 掃除婦の主任が驚くほど身分の高い人に、私が会いに行くなんて、恐れ多くて困ってしまう。


「大丈夫。騎士たちのことを一番に考えて、この国を守ることに全力を注ぐ方だ。

 確かに怖そうな見た目をしてはいるが、熱く優しい、信頼出来る人だよ」


 紹介するルーィ先生の様子を見る限り、先生は団長のことをとてもとても信頼しているのだろうと思う。


「それなら良かったです」


「しかも、団長がエリシア君を欲しいと言ったんだから、酷い扱いを受けることは絶対にないよ。

 安心して」


 言いながら廊下を歩き、さっきサラッと紹介された団長室へ来た。


 中へ入ると、書類仕事をしている二人のゴツい男の人が顔を上げてこちらを見た。

 それだけなのに、何故か一歩下がりたくなる謎の圧力のある人たちだ。


「きみがエリシア君か。ようこそ、騎士団へ。

 俺は団長のジェノス・グレイゼだ」


 立ち上がると見上げるほどの大男で、筋骨隆々だから本当に山のような印象がある。

 遠くから見ても目立つに違いない、短く刈り込まれて逆立った金髪がとてもキレイ。


【英雄グレイゼ】といえば、王国の少年たちの憧れの的で、【迅雷】の二つ名が有名で、神々しいまでのカミナリは魔物を真っ二つに切り裂く、らしいけど。

 本人の身体はその威力に見合った反動痛を抱えていそうだ。かわいそうに。


「はじめまして、エリシアです。よろしくお願いします」


「俺は、ロルフ・レイズ。リッツトレア王国騎士団副団長を務めている」


 副団長は団長と比べると細身に見えるけれどルーィ先生と比べたら全然大きい。


 しかも、緩く波打つ紺の髪と紺の瞳の結構なイケメンさんだ。

 がっちりしてるけど男くさくなくて、女の子がきゃいきゃい言いそう。


 こちらも反動痛が激しそうだけど、何故か足の裏に渦が集中している。

 ほとんどの人は腕や肩に集まりがちだけれど、この人はどんな魔法を使うのかな。紺の髪だからきっと水系だよね。


 そんな私の回想はさておき、団長が話し始めた。


「まずは、きみの意向を無視してこちらへの異動を決めてしまい、申し訳なかった。

 だが、俺たちは今本当に時間がない」


 雷を象徴する金色の瞳は強すぎる光に満ち溢れていて。

 発する圧に負けそうになると同時に、これだけのオーラのある人だから騎士団の皆が尊敬してついて行くんだろうと思う。


「ここ最近、特に魔物が活性化している。王国民が増え、じわじわと領地を拡大していることも影響しているやもしれんが、それにしても基本の強さが段違いになってきているのだ。

 原因を探ってはいるが、結果は芳しくない」


 私は英雄と呼ばれる有名人に直に会えたのが嬉しくて観察しまくっていたけれど、話の中身は思いのほか深刻なことだった。

 金の瞳にじっと見つめられると余所事を考えていることまで見抜かれそうなので、真剣に聞くことにしよう。


「地元の兵団では対応しきれないことが増え、魔法の使える騎士団に出動要請が入る。

 以前は週に二三度だったのが、今はほぼ毎日だ。

 泊まりがけになることを考えたら、ほぼ半数は出動しているな。

 その一方で騎士の数は増えないから、ギリギリの人数で回していかざるを得なくなっている。


 任務後には反動痛を抑えるための休みを与えることになっているのだが、それも満足に取れずに戦線復帰する者が大半だ。

 仲間が戦っているのだから、と戻って来たい気持ちはよく分かる。


 だが、現実的には身体が回復仕切らず、そのせいで反動痛が治らなくなり、脱落していった者もいるのだ。

 そんな中で現れたエリシア君に、どれだけの可能性を感じたか!」


 滔々と語る団長の話は、なかなかに深刻なこの騎士団の状況を分かりやすく教えてくれていた。

 状況が悪いから、私に期待されていることも分かった。


 けれど。


「あの、私はただ単に、人の魔力が見えるだけです。治せた人もいましたけれど、治せない人も居るかもしれません。

 手探りでやっているので、そこまで期待されても困ってしまいます」


 何の根拠もない、我流の技術だからこそ、きちんと言うべきことは言わないと。

 これだけ私に期待してくれて、それに見合った立場も与えてくれるのだから、正直に話したい。


「もちろん、万人に使える技術でない可能性も考えている。しかし、今のところ4人程に効果があったと聞く。

 仮にたった数名でも、戦える者が増えるなら有難いのだ」


「それをわかって頂けるなら大丈夫です。どうぞこれから、よろしくお願いします」


 少し不遜な物言いだったかもしれないので、それを帳消しする意味も込めて深く頭を下げておく。

 本来なら私なんて一生会うことも出来ないくらいに偉い方なんだから。


「ああ、よろしく頼むぞ。何かあれば、すぐに報告に来るように。

 きみはルーィの部下だが、ルーィは俺の直属部隊の所属だ。ルーィの不在時には俺が上官の扱いになるため、遠慮なく来なさい」


 力強い言葉を掛けてもらえたら、なんだかそれだけで私も強くなれる気がする。

 それくらい頼りがいのある人の下で働けるのって、結構幸せなことなんじゃないかな。



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