生きたくない男と死にたい女
小さい部屋の中で、二人の若い男女が向かい合わせに座っている。
「私は死にたい」
女は穏やかな表情で言った。
「僕は生きたくない」
男は悲痛な面持ちでそう言った。
女が尋ねる。
「あなたはどうして生きたくないの?」
男が答える。
「生きる意味がわからないからだ」
今度は男が尋ねる。
「君はどうして死にたいんだ?」
それに女が答える。
「生きるのがつらいからよ」
少しの間、沈黙の時間が流れる。
やがて女が口を開く。
「どちらが不幸なのかしら」
男はほんの少し考え答える。
「君の方が不幸だ」
女は笑いながら言葉を返す。
「あなたの方が不幸だと思うな」
それに対して男は尋ねる。
「どうしてそう思う?」
女は考えてから答える。
「どうしてかしら」
男もそれを聞いて笑みを浮かべながら言う。
「僕もどうして君の方が不幸だと思ったんだろう」
それから二人はお互いに笑い合った。