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「あなたも早く婚約破棄なさったら?」って大きなお世話よ!  作者: たてみん
冬将軍と大飢饉

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52/200

52.ダンジョンの気質

 冬将軍のダンジョン2階。

 出て来る魔物はゴブリンからトロルに変わっていた。

 ただ以前魔物の森で遭遇したトロルとはちょっと違った。


「トロルの子供?」

『どっちかというと成長不良じゃないかな』


 そのトロルは身長が2メートル足らずだった。

 持っている武器も丸太というより薪だ。

 もちろんそれでも人間の大人より膂力はあるだろうけど脅威度はゴブリンの上位種と同じくらいと思われる。

 ナンテが油断なく近づけばトロルもナンテを敵とみなして雄叫びをあげた。


『グオオッ』

「えいっ」

サクッ


 振り上げられたトロルの腕がナンテの鎌で切り落とされた。

 ナンテはあまりの手応えの無さに一度退いて様子を窺うことにした。


『グ、グゥ』


 腕を切られたトロルは、すぐに出血は止まったけど腕そのものは再生してこない。

 前にあったトロルならすぐにとまで言わないけど再生する兆しはあった。

 やっぱりこのトロルも魔物の森のものより弱い。

 動きも鈍かったしこれ以上慎重になる必要も無さそうだ。


「見た目通りね。さくっと終わらせようか」

『だね』


 様子見を終わらせたナンテはトロルの間を縫うように走りながら鎌を振り抜いていく。

 対するトロルは目で追うのがやっとのようだ。迎撃する間もなく切り飛ばされていった。

 致命傷を受けたトロルはゴブリン同様に砂になって消えていく。

 後には子供の拳くらいの魔石だけが残っていた。


「何か食べられるものが残れば良いのに」

『仕方ないさ。ダンジョンだからね。さあ次に行こう』


 今倒したトロル以外にもこの階層にはまだまだ沢山の気配が残っている。

 のんびり歩いてたら終わるまでに相当の時間が掛かるだろう。

 なので駆け足でダンジョンを進むことにした。


「それにしてもダンジョンって不思議だよね」

『そのこころは?』


 普通の人間から見ればダンジョンは何もかも不思議だろう。

 ただナンテは普通とはちょっと違う。

 だから不思議に感じるポイントも違うかもしれない。


「壁も床も平らでまるで誰かが均してるみたい。

 でもこれだけ広い範囲を均そうと思ったらどれだけの時間が掛かるんだろう」

『あぁ、それならダンジョン自身がやってるんだ』

「ダンジョンって生きてるの?」

『まあそう思って良いと思うよ。

 ダンジョンごとに性格が違うんだ。

 このダンジョンは相当几帳面なんだろうね』


 ダンジョンの内部はダンジョンごとに全く違う。

 凸凹なダンジョンもあれば真っ暗なダンジョンもある。

 そもそも洞窟以外のダンジョンだってある。

 ここのダンジョンは壁の様子といい、出て来る魔物の傾向といい几帳面を通り越して神経質と言っても良い程だ。


「この階はトロルしかでないのね」

『そういうダンジョンだから』


 最初の階はゴブリンだけ。

 今度の階はトロルだけ。

 種類どころかサイズや武器まで代わり映えが無い。

 せめて複数種類の魔物が出てこれば良いのに。

 これでは倒す方も張り合いがない。

 むしろそうやって緊張感を奪うのが狙いではないかと疑いたくなる程だ。 


「よし、ここで最後ね。といっても」

『予想通りトロルだね』


 広間に居たのは身長3メートル近いトロル。

 ここまでに見て来たものより大きいけど、特別脅威には感じない。

 なにせ魔物の森に居たのと同じくらいなので。


「ここは天井が高いのが助かるね」


 そう言ってナンテは武器を鍬に持ち替えて思いっきり振り下ろした。

 脳天に鍬を受けたトロルは再生することも無く砂になってダンジョンに吸収されてしまった。

 何ともあっけないけど、別に苦労がしたい訳ではないのでこれで良かったのだろう。

 それに。


「まだ次があるのね」


 視線の先には見覚えのある階段。

 思わずため息が出てしまう。

 精神的に疲れて来た証拠なので、ここでひと休みしてから次の階へ。

 登ってみればまた代わり映えの無い洞窟と、多数の魔物の気配。


「今度の魔物は動く死体(ゾンビ)ね」

『ようやくバリエーションが出たけど嬉しくないな』


 一言でゾンビと言っても元となっている生き物は違う。

 人間も居ればゴブリンなどの魔物も居るし、犬や猪などの動物も居る。

 共通して言えるのは生前に比べ動きが鈍いということだ。

 それでもこれまでの魔物より倒しにくい。


「頭は急所にならないんだよね」


 試しに首を切り落としても関係なく動き続けていた。

 この辺りは以前、羽付きオオトカゲで体験していたのでそうだろうと思っていた。


『このサイズのゾンビならある程度のダメージを与えれば再生できずに自壊するよ』


 コロちゃんのアドバイスに従って首と胴体の2カ所を切断すればようやく砂になって消えていった。

 危険は少ないけど2回切らないといけないので時間が掛かる。

 逆に言えばそれだけの問題だ。

 結局反撃の1つも許す事無く最後の魔物に辿り着いた。


「えっと、ここにきて手抜き?」

『いや、努力の跡はあるよ』


 最後に出てきたのはこれまで出て来たゾンビの集合体。

 ゾンビキメラと呼ばれる存在だった。

 ただ、これまでのダンジョンの構造や魔物は綺麗に整えられたものだったけど、こいつだけグチャッとした見た目だ。

 土台に粘土を投げつけていったら出来ましたって感じに見える。

 でもそれも仕方ないだろう。

 元々ゾンビは肉体が崩れかけているので、綺麗に並べても穴だらけの廃墟の壁だ。

 接着面を考えればぎゅうぎゅうに押し込んでくっつけるしかなかったのだろう。


「足は7本、腕は13本。頭は19個もあるよ」

『うん。まぁ、数えてないで倒そうか』

「はーい」


 姿もグチャグチャなら動きもちぐはぐだ。

 ナンテは少し離れたところから鍬で土塊を削って崩すようにゾンビキメラを端から耕していった。


「あ、中心に核があるんだ」


 半分ほど耕したところでキメラの体内から魔石が出て来た。

 それを取り出せば残りの部分は勝手に崩れていってくれた。

 やっぱりあっけない。


「ふぅ。これでこの階も終わりね。

 問題はこのダンジョンがどこまで続くのか、だけど」

『それなら大丈夫みたいだよ。ほら』


 部屋の奥を見れば、そこには階段ではなく白い壁。

 いや、それは壁ではなく。


「出口?」


 触れてみれば抵抗なく通り抜ける。

 その感触は入口を通った時と同じだった。

 ならばと思い切って進んでみれば、外に出る事が出来た。

 しかし景色は入口だった山の中腹とは全く違う。


「あら雪。白いのは雪だったんだね」


 山頂付近なのか見渡す限りの雪景色。

 流石冬将軍の住処だ。季節は夏なのに冬に舞い戻ってしまったようだった。



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