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天才少女の多才授業!  作者: 桃乃いずみ
Ⅱ 勉強開始!
9/43

スケジュール管理

 

 俺は、結芽の手で書き出された今後の予定に目を通した。


 《1日のスケジュール》


【朝7時】起床。

 身支度、朝食を終える。

【8時〜12時】現国。

【12時〜13時】昼休憩。

【13時〜17時】数学。

【18時〜20時】夕飯等。

 夕食とお風呂を終わらせる。

【20時〜24時】英語。

 24時過ぎには就寝。


「あれ?」

「……? どうかしましたか?」

「いや、思っていたのと違ったからびっくりして」


 渡された紙に記されていたのは、塾の夏期講習合宿(強化版)のようなスケジュール。

 寝る間も惜しんで勉強をする。そんなものを想像していたのだが。


「休憩の時間もある」

「いったいどんなのを考えていたんですか?」

「やっぱり、こういかにも超勉強が好きです。寝ずに勉強し続けます!みたいなやつ」

「ふふっ、そんな事はさせられませんよ。本人の体調管理も徹底していかないといけませんから」


 俺の考えが面白かったのか笑われてしまった。基本クールだけど、笑うと可愛いなこの子。

 ……別に深い意味はないよ。


「でも、これで時間足りるの?」

「はい。この程度の範囲であれば、これで何とかなるはずです」

「この程度って……」


 あの学園のテストをこの程度呼ばわりとは。さすがは飛び級生と言ったところか。でも、結芽は前回の中間テストの結果を広げながら、確かにそう言った。


「あとは司さんの努力しだいですかね」

「さ、左様ですか」


 結芽が言うには、このスケジュールをこなせば退学を免れることができるのだそうだ。


「それに勉強というものは、ただやればいいというわけではありません」


 予定表を手に持ったままの俺に、結芽は説明を続ける。


「よく、多くの時間でやる人が頭がいいと思われがちですけど、要点さえ抑えられれば大丈夫なはずです」

「要は、時間よりも質ってことかな?」

「まさにその通りです。それが分かっているのであれば問題なさそうですね」


 ということは、結芽が今回組んでくれたスケジュールは効率を重視したってことか。

 それを聞いて安心する。こちらとしても、みっちりやるよりも大変ありがたい。特に、睡眠時間が取れるのは嬉しい誤算だ。


「うん、ありがとう。これなら俺でも頑張れそう」

「はい。事前に司さんの情報を教えて頂いて正解でした。過去のデータを見るに司さんは一般校であれば真ん中位の成績だと思われます。決して勉強が苦手というわけではないはずです」

「そ、そんな事まで調べられてたんだ」


 親父が、どこまでこの子達に話しをしていたのか分からないけど、中学時代についても何かと知っていそうな口ぶりだ。


「でも、俺が中学の時なんて下から数えた方が早いぐらいの順位だったんだけど」


 結芽は「真ん中くらい」と言ってくれたが実際は違う。贔屓目に言ってくれたのかもしれないが、そこだけはちゃんと訂正した方がいいような気がした。


「いいえ、司さんはやれば出来るはずです。当時もあまり勉強をしていなかったのでは?」


 チラリと横目で漫画やらゲームの積まれた棚を見られる。


「……仰る通りです」

「ふふっ、これでもあなたの先生ですから」


 柔らかな笑みを浮かべてくれる結芽。

 司は、肩に岩でも乗ったのではないかと思うほどのプレッシャーという重圧を感じた。


「あれ?ミーシャ達は……」


 そんな話しをしながら、いつの間にか視界から消えていた二人を探し、後ろへと振り返る。


「へー、ツカーサは、色々なジャンルのゲームやるんだネ〜。アクションに格ゲーに、あっ! ギャルゲーなんかも!」

「それは興味深いわね。つーくんはどんな女の子が好みなのかしら?」


 部屋の隅々まで見られていた。


 ミーシャは先程までと変わらず、俺が持つゲームソフトに興味津々のようだ。彼女が声をあげた事で、歌恋もそれに加わる。

 特にやましいものはないと思って安心していたけど、ゲームソフトが並ぶ棚には少々子供にはまだ早そうな物も並んでいた。


「あなた達、さっきから何してるのですか?」


 それを制すかのように、結芽が二人に声をかける。


「部屋の探索だケド?」

「何を当たり前な顔して言ってるんですか。結局スケジュールも私だけに任せるし」

「だって、ワタシなんかよりも、ユメの方がソーユーの得意デショ?」

「だからって、あなたも司さんの家庭教師としての自覚をですね」

「まぁまぁ二人とも。それで結芽ちゃん。どういう順番で教えることになったの?」


 もし、喧嘩になってしまいそうなら俺が止めに入るべきかと思ったけど、歌恋が話しを変えて二人を止めた。さすがは三人の中ではお姉さん的ポジションに位置する子だ。


 ただ、俺の完全プライベートへと足を踏み入れようとするのだけはやめてほしいです。どうかその手に持っているギャルゲーも置いといてくれると助かります。


「はぁ、しょうがないですね。これが今日からの予定です」


 ムキになりがちだった結芽だったが、歌恋の言葉で我に帰る。


「朝の時間は現国、昼から数学、夜に英語の順番で一教科につき、四時間ずつやっていくことになりました」

「フムフム。まぁ、あとツーウィークくらいならそのペースでやっていくのがベスト!カナ?」

「そうね。つーくんを無茶させるわけにもいかないし」


 スケジュールを立てることに反対派だったミーシャだが、意外にも結芽の立ててくれた計画に同意している。歌恋も反論は無いようだ。


 こういった光景を見せられると、改めて、この子たちが俺の家庭教師なんだなと実感させられる。


「ソレじゃあ、今日はユメとワタシの授業だけ?」

「そう。だから、」

「現国は明日からね。ちょっと残念」


 歌恋ががっかりしたように肩を落とす。


「ワタシは夜からネー。ツカーサ、待ってる間ゲーム機貸してくれる?」

「うん。いいよ」

「ワーイ! どれやろカナ」


 大人っぽい二人と一緒だから分かりづらいけど、ミーシャが一番年相応っぽいんだよな。


「ちゃんと、教授からの宿題もやるのですよ?」

「オーケー!もう、相変わらずマミーみたいなこと言うナー、ユメは」

「誰がお母さんよっ!」


 ……お母さん。

 俺と彼女たちを繋ぐ小さな共通点。

 家族の話は勝手にタブーだとばかり思っていたけど、割と平気、なのか?


「もう、本当にミーシャは子供なんだから」

「結芽ちゃん。私たち、一応まだ子供なんだけど……」

「アハハッ!ユメ、忘れんぼサン」

「そ、それだけ家庭教師としての自覚を持ちなさいってことです」


 うん。今の結芽のセリフはフォローしきれない。実際君たちはまだ子供だからね。その点で見れば、結芽もまだまだ未熟な子供だなと俺も思う。


「では、さっそく始めましょう。まずは数学からですね。私が担当します」


 そう言うと、結芽はスケジュール表と数学以外の中間テストの結果を片付けて、引き続き俺の隣へと座り直す。


「それじゃあ、わたし達は隣の部屋にいるわね」


 歌恋は先に俺の部屋を出て行こうとした。


「歌恋」

「なぁに? つーくん」

「明日は、よろしくね」


 俺は彼女を呼び止めて、そんなことを口にする。

 最初は自分でも分からなかったけど、なんだか名残惜しそうにその背中が見えたからか、つい声をかけてしまった。


「ええ、ありがとう。また後でね」


 こちらに微笑みかけてくれた後、手を振って出ていった。

 せっかく来てくれたのに、今日は何も教わらないとなると申し訳ないな。


 そういえば三人は寮に住んでるんだよな。なら、先に帰ってもらっても……。いや、それこそ本当に仲間外れみたいで嫌な思いをさせるかもしれない。三人一緒に仲良く帰した方がいいな。


「ネーネー、ツカーサ?」


 そのまま勉強に入ろうとしていたところ、左腕をミーシャが引っ張ってきた。


「ん、どうした?」

「ゲーム機貸してー」

「あ、そうだったね」


 一度立ち上がり、現在クローゼットの中に仕舞われているゲーム機の本体と配線を箱ごと取り出す。


「ソフトはどうする?」

「ンー、……コレにする!」


 そう言って棚から抜き取ったのは美少女キャラクターが多く参戦する格闘ゲームだ。活発なミーシャにはぴったりな気もする。

 テレビは隣の部屋にもあるので、モニターの方は心配いらないだろう。


「大丈夫? 持てる?」

「ウン! サンキュー!後で一緒に遊ぼうっ!」

「うん、いいよ。俺にも英語教えてね」

「オマカセー!」


 そして、ミーシャも歌恋が向かった隣の部屋へと向かった。

 ゲーム機の本体の入った長方形の箱と、その上にゲームソフトを両手で持ってキラキラと輝かせた瞳と、その表情はなんとも可愛らしい。初めてゲームを手に入れた時の頃の自分を見ているかのようだ。

 二人の見送りを済ませて、再びテーブルの前へと座り直す。


「なんだかすみません。ミーシャのわがままを聞いていただいて」

「いいよいいよ。待っている間、親父の課題だけじゃ暇だろうし」


 申し訳なさそうに頭を下げる結芽に問題ないことを伝える。

 待っている四時間もの間、課題だけっていうのは彼女たちにとってもになるだろうし。俺に教える以外の時間は寛いでもらっていた方が俺も気が楽だ。


「結芽も休憩する時は、自分の家のように過ごしてていいからね」

「ありがとうこざいます。教授には少し申し訳ない気もしますけど」

「大丈夫だよ。もし親父に何か言われたら俺が味方になるから」

「はい。私も出来るだけ頑張ります」


 本当に真面目でいい子だな。言葉使いとか、礼儀も正しいし、まさにハイスペック少女だな。しかも、親父のことも考えるなんて、俺としては不本意ではあるけど、研究者としての親父の実力は本物だから助手の彼女にとっては致し方ない。


「では、始めましょうか」

「うん。よろしくお願いします」


 一通りの雑談を終えて、いよいよ本題に入る。

 数学の教科書を開き、学園側が出した条件へと対抗すべく、期末テストに向けての勉強がスタートした。

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