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天才少女の多才授業!  作者: 桃乃いずみ
Ⅵ 期末試験!
41/43

交戦!


「そんな訳があるかっ! あんな落ちこぼれだった奴に、バカな奴にこんな点を取れるはずがない!」

「が、学園長! いくらなんでも言い過ぎです!」


 学園長の発言に、水橋(みずはし)先生が異議を唱える。


「何だ?」

「流石にその言葉は聞き捨てなりません」


 今まで口には出さなかったけど、さすがの水橋先生も我慢ならない様子だ。


「うるさいっ! 水橋先生!!まさかあんた、事前にテストの内容をバラしてたんじゃないのかっ!」

「そ、そんなっ! 言いがかりです!」


 それを聞いて、俺の我慢もとうとう限界に達した。


「学園長!水橋先生は関係ありません! 巻き込まないでください!」

「黙れ! イカサマだ! こんなの私は信じないぞっ! 退学だ、お前ら全員! 」

「なっ!?それは話しが違うっ!条件はクリアした筈!」

「うるさい!水橋共々この学園から追い出してやる!」

「!?」


 この人は、本当にクズだ。

 自分の身勝手さを他人に押し付けて、言っいてる事はめちゃくちゃだ。

 大人なのは外見だけで、中身はまるで子供のよう。


「元々、そこにいるガキ共も退学にする手はずだったんだ。テストの結果など関係ない!」

『!?』


 それを聞いて三人が驚愕する。

 俺が昨日帰ってから話さなかったことを、この人はなんの躊躇もなく語ったのだ。


「やめろ!」

「そんな脳にしか価値のない子供はいらん!」


 遂に、学園長の心奥底に眠る闇が放たれる。

 子供を見守る立場であるはずの教員が、こんなにも違う道に進んでいくのを黙って見ているわけにはいかない。


「やめろっ! !それ以上この子たちを傷つけるな! それ以上言ったらっ」

「ふん。どうなると言うんだ。何があろうとお前らの退学は変わらん」

「そんなことできるわけが」

「私はここの責任者だ。私の思い通りにならぬ者はいらん!」


 それを最後に、学園長は手に持ったテスト用紙を破こうとする。


「こんなもの、私の手にかかれば無かったことにする事など造作も無い」


 まずい! このテストの結果は、学園側の条件との契約を成り立たせる為の、最初で最後の証拠なのだ。

 失うわけにはいかない。


「ヤメロー!!」

「ミーシャ!?」


 それをいち早く察知したミーシャが学園長の腕にしがみつく。


「ぐぬっ!?」


 その衝撃により、手からは用紙が離れ、床に落ちる。


「こんっの、クソガキが!」


 しがみつかれた腕を、強引に振り回す学園長。そうして、ミーシャを突き飛ばした。


「ワッ!」


 壁にぶつかりそうになったミーシャを、俺はギリギリの所で受け止めた。


「だ、大丈夫か! ミーシャ!」

「……つ、ツカーサ」

「ふぅ」


 よかった。頭とかはぶつけていないみたいだ。

 あんなに乱暴なことをするなんて。


 俺は、学園長を強く睨みつけた。


篠原(しのはら)くん! 大丈夫ですか!」

「は、はい」


 すぐさま水橋先生が駆け寄ってきて安全確認をしてくれる。


「学園長! 今のことは教師としてあるまじき行動です! 教育委員会に報告させてもらいます!」

「ぶっ、はははっ! やってみろ、そんなものいくらでも私の権力でもみ消してやる!」

「そんな……」


 水橋先生は、表情を曇らせる。


「おい!」


 学園長は学園長室と繋がる隣の部屋に声をかけた。


「……お呼びですか」


 すると、隣の部屋から二人の背丈が高いスーツ姿の男が出てきた。

 二人共、サングラスまで掛けている。

 まるで、


「私の護衛として雇っている者達だ」


 どう考えてもそうだよな。

 本当にいるんだな、そういう人達って。


「護衛?」


 俺は、あえて聞き返した。


「ふん。世の中には私に恨みを持つものが色々と多くてな。そんな奴らに制裁を与えるために側に置いている」


 なるほど。普段から悪行をしていたと見えるなこれは。

 しかも、表には出さずに。


「学園長。私たちはどうすれば」

「まずはガキどもを部屋に連れていけ。後の二人は私に逆らえぬようにしろ」

「……了解しました」

『!?』


 二人の男性は、こちらに近づいて来る。


「その子供達をこちらへ」

「俺たちも手荒な事はしたくないんだ」


 意外にも、二人は丁寧な口調でそれを要求してきた。


「……断ったら?」


 俺は、ミーシャを抱く手に力を込めた。

 それに応えるようにミーシャも俺の胸に顔を埋める。


「ならば、力づくで」

「悪く思わないでくれ。俺たちも仕事なんだ」


 そうして、先に近づいて来た男がミーシャに触れようとする。

 俺は、すぐさまミーシャを抱えたまま、後ろに下がり距離をとった。

 足の指先に重心を集中させ、一気に蹴る。


『!?』


 その瞬間、俺以外の部屋にいた全員が驚きの反応を示した。


「……早いな」


 唯一、すぐに平静を取り戻した後ろに控える方の男性が口を開いた。



「なっ、何をしている!早くせんか!!」


 学園長が、護衛の二人を怒鳴りつける。


「っ!」


 距離を取ったはずが、先行して来た男性が一瞬で距離を詰めて来た。

 そして、


「このっ!」


 俺はひらりと、伸ばされた手を交わし、連続で繰り出される男の手を、次々と避ける。

 手が塞がっているせいで、直接防ぐ事はできないが、このスピードであれば避けるのは造作もない。


「はぁ、はぁ……」


 躱しているうちに、男性の息はあがる。

 幼馴染である詩音(しおん)のお父さんから習っていま空手がここに来て役に立つとは。


「……君、何か習っていたのか?」


 話す余裕がまだあるようだ。


「少しの間、空手を」

「少し、ね」


 男の目つきが変わった。

 左拳を引いて右拳を前に突き出し、構えられる。

 おそらく、この人も武道の心得があるのだろう。護衛の仕事をしているのだから当たり前かもしれないけど。


「経験者なら、話しは別だ」

「っ!?」


 早い!


 俺は、突き出された左拳を寸前で躱す。

 いや、避けきれなかった。


「ツカーサ!?」


 身体を斜め下に下げて、避けたつもりが頬を掠める。

 そして俺は再度、距離を取る。

 ミーシャが心配そうに俺を見つめていた。


「水橋先生」

「は、はい!」


 呆然と俺たちの攻防を見ていた先生に声をかける。

 そんな先生に俺はミーシャを預けた。


「これ以上は、この子達が本当に危ない。部屋の隅に避難してて貰えますか?」

「で、ですが、篠原くんは」

「俺はこの人達の相手をします。このまま逃がしてくれそうにはないので」


 俺は、頬から流れる血を拭った。


「そんな、篠原くんだって」

「大丈夫です。正当防衛ですから」

「いえ、そういう事では」


 先生も心配そうに俺の表情を伺う。


「あっ、でも俺が手を出した事は内密にお願いします。本当に退学になりかねませんから」


 そんな冗談を伝えて、俺は一歩前に出る。


「おい、二人がかりで行くぞ」

「えっ、先輩?」


 俺たちの姿を見て、何やら向こうも話し出した。


「相手は学生ですよ?」

「お前も分かっているだろ。あの動き、素人じゃない。少し空手を(かじ)ったくらいでお前の攻撃を躱しきれると思うか?」

「…………」


 どうやら、話しは終わったようだ。

 何を話していたのかは分からないけど、二人共こちらを見つめている。

 俺も、そんな二人に向き直った。


『……!!』


 三人同時に前に出た。


 足が早かったのは、後ろに控えていた男。

 まだこの男性に関しては未知数だが、問答無用に突っ込んでくる。

 そのまま、身を翻し右脚の回し蹴りを繰り出してくる。


「なっ!?」


 攻撃を受けずにそれを避け、そのまま距離を詰める。

 男性は驚いた顔を見せたが、避けた事に驚いた訳ではない。


 俺は、回し蹴りの軸となった男の左脚を右足で踏み、動きを止めさせた。


「ふっ!」

「がっ!!」


 瞬時に相手の顎にめがけて掌底撃ちを叩き込む。

 足を踏んだ事で、宙に舞う事もなく衝撃をまともに受けた。

 顎への打撃は、脳への直接攻撃にも繋がる。

 男性は、膝から床へと崩れ落ちた。

 きっと、今は視界が真っ白になっている所だろう。


「らぁっ!」


 俺は膝をつき、後方に回っていたもう一人の裏拳を躱す。

 そして、身体を捻るのと同時に顔まであと少しの所まで届き掛けていた左拳を両腕で防ぐ。


「捉えた!」


 弾かれた腕の隙間から、準備された右拳が接近してくる。

 だが、俺はその動きを利用して。


「!?」


 背負い投げの形に入り、相手の腕を離さないまま、床へと叩きつけた。


「ぐはっ!」


 男の痛みを堪える声が室内に響く。


「……じ」

「じ?」

「柔道も、できるのか、よ」


 いや、完全に咄嗟の見様見真似だった。

 昔、詩音のお父さんである師匠との組み手の最中、この技で裏をかかれた事があった。それを思い出しただけである。

 そうして、二人目も気絶したのだった。





「おい!何を寝ている!!早く起きろ!!」


 学園長室にこだまする怒鳴り声。

 しかし、護衛だった二人は、いっこうに目を覚ます気配はない。


「この役立たずどもがっ!こうなれば、こいつら諸共……」

「それは無理だな」


 すると、ここにはいるはずのない人物の声が聞こえて来た。


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