少女の想い(1)
結女やミーシャも気づいてるのかな。俺の隠れた長所について。
「それで、つーくんの吸収力についてなんだけど」
お茶を飲みながら、歌恋は先程話した『吸収力』について話してくれる。
「わたしが教えたとはいえ、一度説明した事をこんな風に即座に実践に活かせれるなんて普通は難しい事よ」
歌恋は手にした解答用紙を見ながら言う。
「それは歌恋の説明が分かりやすくて丁寧だったからじゃないのか?」
「そうだとしても、一度だけよ。たったの一度教えただけで、こうも改善できるなんてわたしも思わなかったもの」
「そう、なのかな。俺からすると普通だと思うんだけど」
「当たり前のように実践できている所が既にすごいのよ」
顎に手を当てながら、彼女はさらに深く考え込む。
「つーくんは、何かを思い出そうとする時、身振り手振りで『身体の記憶』を探っているみたいなのよね」
「ほとんど無意識でだけどね」
「そうだとしても、それは、運動神経にも繋がるわ。つーくんは、スポーツとかも得意なんじゃないかしら。心当たりとかあるんじゃない?」
「まぁ、言われてみれば」
確かに、隣に住む詩音のお父さんから学んだ「武道」。空手は長く続けられたし、稽古中褒められる事も多かったような気はする。
でも、それだけで自分の吸収能力が優れている事には気づかなかったな。
「吸収能力については、その片鱗が見えてきているのよ。つーくんは、飲み込みがすごく早いの。それが身体で覚えていられる記憶力と言う事ね。今はそこを伸ばすべきだと思う」
「伸ばす……。でもそれって結構難しいんじゃない?」
そう。言葉にしてみれば簡単だが、現在無意識で行なっていることを、意識して出来るようになるには相当な時間がいる。
今回でいえば、期日であるテストの当日までに身につけ、さらに勉学にも、より力を入れるというのはいささか厳しい。
「そうなのよね。だから、今回はそれに頼らず自力で勉強するしかないわ。わたし達でもその力を引き出させれるかは分からないし。ごめんなさい」
「そんな!全然良いよ。勉強を見てくれるだけでありがたいのに、そんな力がある事を教えてくれた事が今は嬉しいよ」
「ありがとう、つーくん」
お礼を言いたいのはこっちの方だ。
この子たちには本当に頭が上がらない。
そうして、再び現国の勉強時間が終わりを迎えるまで様々な問題文へと臨んでいった。
「うん。今日はこれくらいにしておきましょうか」
「うぅ、頭が」
この数時間の間、ずっと文章と向き合ってきたからか、頭が痛い。というより、重い。
他の教科と違って、圧倒的に文章量が多い現代国語では、その情報量と考える分、頭をフルに使った。
「お疲れ様。本当につーくんは理解するのが早いわね」
「ありがとう。確かに疲れたけど、すごく勉強になったのは自分でも分かるよ」
たった一日だけで、現代国語に対しての理解はだいぶ深まったと思う。
「これは他の教科も期待大ね。でも、一番つーくんを育てるのはわたしよ!」
歌恋は小さな拳を握り、何か決意したような顔を見せる。
「そんな大袈裟な」
「今のつーくんは輝く前の原石なの!わたしが綺麗に磨き上げるわ!」
教えられる俺からすると、各々の授業の内容に優劣なんかつけるつもりもないのだけど。
「原石とは例えがファンタジーすぎないか?」
「そんな事ないわよ。わたしがつーくんをもっとできる男にしてあげる」
え、なんかそれ違くない?勉強の話だよな?
「うわっ!?」
すると、朝方と似たように次は床へと歌恋によって押し倒される。
「かかっ、歌恋!一体何を!」
「もうわたしが担当する時間が終わるまで、あと10分くらいだから」
「だから何!?」
壁に掛けられた時計に目をやると時刻はそろそろ正午を刺そうとしていた。
もうそんな時間か。って、そんな悠長なことを言ってる場合じゃない。
「わたしへの報酬?ちょっと違うわね、ご褒美といったところかしら」
「いやっ、ご褒美ってあげるものだよな!俺からはまだ何も言ってないんだけど!」
「えいっ」
歌恋の両手で頬っぺたを抑えられる。
「ちょっ、歌恋!」
「今度こそ逃がさないんだから」




