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天才少女の多才授業!  作者: 桃乃いずみ
Ⅱ 勉強開始!
18/43

一日目、終了!

 


 英語の勉強がスタートし、初日の勉強時間も残すところあとわずかである。

 確かに手は動かしていたし、ミーシャからの説明や教科書の範囲内から勉強をしていたのは確かだろう。だいぶ今回やった箇所については、しっかりと覚えることが出来たはずだ。

 ………単語だけはな。


「ツカーサ!お疲れさま!!」

「うん。……あのさ」

「ん? まだ分からないスペルある?」


 ミーシャが不思議とばかりに首を傾ける。


「いや、そういうわけじゃないんだけど。俺、英単語の書き取りしかしてないんだけど」

「ウン!それでバッチリだよ!!」


 そう。この四時間もの間、俺はミーシャの言いつけを守り、ひたすら英単語の書き取りに費やした。

 中間テストに出てきた単語、教科書の範囲内で出てくる単語。分かるもの分からないもの関係なく、現在形から、過去形、過去分詞と三つに分けて一つ一つの単語を時間の限り、意味も含めて書き取った。

 意味が分からない単語だけならまだしも、なぜ分かっているものまで?

 それが俺には分からなかった。

 途中途中、会話を挟みつつもその理由についてミーシャが教えてくれる事はなかった。「明日までの秘密〜」という一言だけを残して、それ以上のことは何も話してくれなかったのだ。


「意味もなくこんな事をさせるとは思えないんだけど。どうしても理由は教えてくれないの?」

「秘密だよ。実感してもらった方がいいと思うカラ」

「実感?」

「そうダヨ。この数時間での集中力。それは、立派なツカーサの強みだとワタシは思ってる。だから明日になれば、今日やった事が何に繋がるのか分かるはずダヨ」


 これ以上話していても、一向に話してくれる気配はない。諦めて明日を迎えるしかなさそうだな。

 確かに集中はしてたと思うけど、本当にソレだけだ。授業の内容といっても、英単語の書き取りをしただけで、特別他に何かする事もなく初日の英語の授業は終わりを迎える。

 強いて何かをあげるとしたら、「脳を休ませるため」というミーシャらしい提案での、雑談の時間を設けたくらいだ。

 でも、それが励みとなって、この四時間は単語の書き取りだけに臨むことが出来た。


「大丈夫だよ。集中できていないなら、意味のない事だったかもしれない。けど、ツカーサは頑張ってたもん」

「そうかな」

「ウン!今日やった事は絶対明日からの糧になるから、ワタシを信じなさイ!」


 ドンと仁王立ちをして胸を張りながら彼女は言う。

 結芽は、分かりやすく教えてくれる安心さがあるけど、ミーシャはそれに勝るとも劣らない頼もしさがある。

 自分で頑張ってると思っていても、自分以外の人からその頑張りを認められると余計に嬉しいものだな。

 褒めて伸ばす事。結芽とミーシャ、二人と話して見つけた共通点。それが今までの授業から伺えた。


 俺にはまだミーシャの言う、この四時間の意味が分からないままだけど、この子たちの事はちゃんと信じている。

 だから、このままでいい。ミーシャが明日分かるというなら、きっとそうなのだろう。気にはなるけど、俺はやれることを精一杯やっていく。今はそれに頼るしかないんだ。


「分かった、ありがとね。こんなに遅い時間まで」


 時刻はすでに零時を回っている。完全に深夜だ。


 俺ら高校生からしたら、まだそれほど大した時間ではないが、子供からしてみれば十分に遅い時間だ。俺のためとはいえ、体調を崩すようなことだけはさせたくない。


「ダイジョーブ! ワタシも勉強とかで遅くまで起きてることは普通にあるから慣れてるし」


 ビシッと親指を立てるミーシャ。

 やっぱり、いくら天才でも日々の勉強や努力は欠かせないようだ。でも、まだまだこれから成長していく年齢だろうに、この時期から夜更かしに慣れているというのは心配だ。


「それにまだユメたちも、センセーの課題とかやるために起きてると思う。ワタシはお昼にソッコーで終わらせたケドね」


 鼻息をふんっ、と鳴らして自信あり気にそうミーシャは言い放つ。


「そっか。あのさミーシャ」

「ン?」

「もしかして、普段遅くまで起きてるのって、親父からの課題のせいだったりする?」


 ミーシャは課題を済ませたようだけど、ユメは現在行っている最中だと言う。

 もしそうなら、普段の生活でも親父が出す課題に夜遅くまで費やしているのかもしれない。

 いくら進学校とはいえ、そんな事は子供に強要させるべきことではない。親父の意向はどうであれ、俺は反対だ。即座にやめさせるべきだろう。


「全然センセーの課題は多くないヨ?一日の課題もプリント一枚くらいだし」

「でも、遅くまで起きてるのは、課題をやってるからじゃないのか?時間かけないと終わらないとか」

「ワタシも今日の分は、見直し入れても30分くらいで終わったよ?」


 どういう事だ?課題自体には夜更かしの原因が無いと言う事なのか。


「でもさっき、結芽たちが今それに取り組んでるはずだって……」


 ミーシャは俺の質問に対して首を振る。

 三人が風呂を上がってから四時間以上が経った。マイペースを貫きそうな歌恋は分からないが、結芽なら上がってからすぐに課題へ取り掛かっていそうなのに、まだ終わってないというのはどういう事なんだ?


「ンーンー。課題はやってたと思うよ」

「だけど、それも数十分くらいで終わる範囲なんだよね?」

「ウン。ユメは私よりも早く終わらせられると思う。予想だと五分くらいで」

「じゃあ、もうとっくに寝てるんじゃないの?」


 現在も親父の課題をやっているのであれば、相当難しい課題を課せられているのではと、俺は考えたのだ。

 だからこそ、それが夜遅くまで掛かるような代物だとばかり考えていたのだが、どうやら違うらしい。


「まだ起きてると思う。課題をすぐに終わらせて、今は他の事してるハズ」

「他の事って?」

「講義の予習とか、復習カナ」


 そうか。彼女達は大学生だ。授業じゃなくて講義を聴くと言うのが正式な言い方だよな。

 って、それは置いといて。


 彼女の言う通り、課題を五分程で終わらせれるのだとしたら早く寝る事は可能なはずだ。

 しかし、課題が終わっても尚、普段から夜更かしをする理由。それが予習復習だとミーシャは教えてくれた。


「ワタシたち、いつも三人で同じ時間に寝るようにしてるんだけどね。寮に帰ってから、課題をすぐに終わらせるワタシと違って、二人とも寝る直前に勉強とかするんだよねー」

「直前に?」

「そう。その方が頭に入るんだって。ワタシは自分なりのやり方をしてるんだケド」

「二人は違うんだ」

「ウン。寝る前にやって、次の日の朝に昨夜勉強したことを覚えていられたら、しっかりと身についてる証拠になる、って言ってた」


 なるほど。つまりは、眠る前にすることで寝ている間も、脳を睡眠と勉強への意識に分けて身体を休ませることで、寝てる時間も学力の向上に活かしてるってことか。


「そうか。すごいね」


 ていうか、凄すぎじゃね?


 つまり、自主的な勉強で普段から睡眠時間を削って夜遅くまで勉強しているって事だろ。すごいとしか言いようがないな。


「だからツカーサも、明日の朝になっても今日やったことを覚えてられると思うよ。あっ、もう昨日だけどね」


 もしかして、英語をこの時間に設定したのにも、この事を考慮した上でなのかもしれないな。


「ふあ〜」


 スケジュールを組み立ててくれた結芽の意向を考えていると、ミーシャから大きなあくびが。


「ミーシャ、今日はありがとう。それじゃあ、結芽たちに声をかけて歯磨きしに行こうか」

「ハーイ」


 ミーシャはスイッチが切れたように、眠そうな目をして、今にでも眠ってしまいそうな様子。

 頭がフラフラしていてテーブルにぶつけたりしないか心配だ。

 ひとまず、手を貸して起立させ、背後から軽くぽんぽんと触れて前に進むように促す。

 部屋を出てから結芽たちに声をかけると、ちょうど二人とも勉強が終わったところだったようで、千尋さんが用意してくれた布団を部屋に敷いている最中だった。


 そこから洗面所に向かったのだが、


「ミ、ミーシャ」

「つーくん、もう遅いわ。ミーシャちゃんは旅立ってしまったみたい」


 洗面所の前でミーシャは力が尽きたのか、歯ブラシを咥えてモノの数秒で動きが止まった。

 鼻ちょうちんを出して立ったまま寝てしまっている。

 歯ブラシが喉に入ったりすると危ないので何とか頑張って起きてもらい、口を開けたり閉じたりするだけでいいからと言って、結局は俺がミーシャの前で膝をついて歯を磨いてあげた。


 もし俺に子供がいたら、こんな事してあげるのだろうかと磨きながら考える。俺はまだ15歳だけど。


 歌恋はそれを見て微笑むだけで、結芽は何度も俺に「すみません、すみません!」と頭を下げてくれた。大したことではないから、これくらい問題ない。

 二人が言うには、普段はもう少し意識ははっきりとしているようなのだが、お昼にゲームに熱中し過ぎたからか、疲れてしまったのではないかとの事。

 じゃあ、先ほどの勉強の間も眠いのを我慢して教えてくれていたのだろうな。こちらも頭が上がらないな。


 そして、無事歯磨きを終えて、リビングで洗濯物を畳んでいた千尋さんに声をかけて眠りにつくことに。

 もう限界のミーシャを抱っこして、結芽たちが寝泊まりする部屋に移動する。

 すごく軽くて驚いたけど、俺の寝間着をぎゅっと握ってくるのが愛らしく、大変微笑ましかった。


「それじゃ、何かあったら遠慮なく言ってね」

「はい。ありがとうございます!」

「おやすみなさい。つーくん」

「うん、おやすみ」


 布団にミーシャを寝かせてから、結芽と歌恋が布団に入るのを確認して明かりを消す。


「ふぅ、今日はすごい一日だったな」


 自分の部屋に戻り、テーブルの上を片付けてから、ようやく俺もベッドに横になり、目を瞑る。

 ちいさな家庭教師に、親父のむちゃぶり、久しぶりの幼馴染と、その他色々。


 あっという間だったようで、長い一日だった。でも、ここ数日の中では一番楽しい時間だったな。テストへの不安も、それなりに小さくはなってきている。それくらいの自信が付いてきた証拠だ。


 こんな時間がずっと続けばいい。この時の俺はそう思っていた。


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