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天才少女の多才授業!  作者: 桃乃いずみ
Ⅱ 勉強開始!
17/43

金髪少女の秘密

 

 ミーシャの湯上がり事件の後、結芽も「大変お騒がせしました」と頭を下げて、追いかけるように部屋を後にしていった。

 本当、理解のある子でよかった。このご時世、あんな場面に出くわしたら普通、男で年上である俺が悪く見えて、通報だってされかねないからな。



「今度こそおまたせー!」

「ううん。まだ20時になってないし全然問題ないよ」


 軽快なステップと共に部屋へと戻ってきたミーシャ。今回はなぜか歌恋も同伴だ。


「何で歌恋まで?」

「一緒に来ちゃまずかったかしら?」

「そんな事はないけど、気になっただけだよ」


 今度はちゃんとパジャマを着てきてくれたので、しっかりとその姿を見ることができる。

 ミーシャは黄色の生地にうさぎの顔がいくつもあるパジャマを着ており、隣にいる歌恋も同じような装いで、青色のパジャマに犬の柄という組み合わせだ。

 結芽が着ていたのと似たようなパジャマだ。

 三人に、全く違うものを着せるよりもお揃いといった感じにしようという千尋さんの計らいかもしれない。


「ぴょんぴょん!」


 書いてあるうさぎをイメージしてなのか、軽く跳ねながら近づいてくるミーシャの隣で歌恋はじっとこちらを見てくる。


「な、何かな?俺、なんか怒らせるような事した?」

「つーくん。結芽ちゃんには言っておいて、私たちには何か言うことはないのかしら?」


 あ、なるほど。そういうことか。


「ごめん。あまりにも似合ってるから、感想を言うの忘れてたよ。二人ともすごく可愛いよ」

「ふふっ、ありがとう」

「ワーイ!ツカーサが褒めてくれター!」


 各々が喜びの声を上げる。

 結芽に言った時は完全に無意識だったとはいえ、二人に何も言わないのも失礼だよな。

 そう思って、素直に感想を述べる。


「結芽ちゃんが顔を赤くして戻ってきたから」

「えっ、大丈夫なの?」

「別に風邪とかじゃないわ。パジャマ姿を褒められて照れてるだけ。わたしも来て正解だったわ」


 ふふっ、と歌恋は事の経緯を話してくれる。

 そんなに急がなくても、いつでも褒めてあげるのにな。


「そ、そうだったんだ」


 結芽が照れていたかはともかく、その彼女を見て何があったのかを把握するその推理力に関心を持つ。


「それじゃあ、私は満足だから部屋に戻るわね。つーくん、ミーシャちゃん頑張ってね」

「アーイ!」


 歌恋は手を振って満足そうな顔をして出て行く。

 本当に俺の感想のためだけに来たのか。

 そう思うと、やっぱり歌恋も子供なんだなぁと安心する。


 学力が高かったとしても、こうして三人には子供らしい一面があるという事も、この一日を通して知れた。これからの二週間で、この子たちとの関係を良く保って行くためにも、知っておいて損はないだろう。


「じゃあ早速、始めちゃおうカ!」

「うん。お願いします」

「ふ、ふ、ふ、まかせんしゃイ!」


 そう言って、不敵な笑みを浮かべるミーシャ。

 今までの印象から言わせてもらえば、ミーシャがどのくらいの天才なのかは、予想がつかない。

 その自信がどれほどのものなのか、勉強を教えてもらいながら確かめさせてもらおう。


 その前に、


「ミーシャは英語を担当してくれるわけだけど、元々外国に住んでいたの?」


 教科書に手を触れる前に、気になっていた疑問を解消しておきたい。

 俺はそう考え、ミーシャへ問う。


「ンーンー。外国には行った事あるけど、生まれも育ちも日本ダヨ」

「そうなんだ。でも、ミーシャって名前は?」

「ウン、本名。パピーがアメリカ人でマミーが日本人だったんダ」

「ハーフだったんだね」


 その金色の髪も、水色の瞳もお父さん譲りって事か。


「……ウン」

「ミーシャ?」


 何故だろう。ミーシャの返事に元気がなく感じた。


「あっ、ごめん。無神経な事、聞いたよな」


 またやってしまった。

 ミーシャ達も俺と同様、親を失ってる。しかも、俺とは違い両親二人供だ。それを分かっていたのに親を思い出させるような事を俺は無意識にしていたのか。


「ウウン、だいしょうぶ。でもツカーサは、変に思わないの?」

「変?」

「実はね、ワタシのこの髪の色とかをよく思わなかっタリ、からかったりしてきた子達が小さい時にいたかラ」

「!?」


 あんなに元気なミーシャからは想像もつかない過去。

 つまりは、嫌がらせを受けていたという事。それを告白した。

 ミーシャは両親の事ではなく、その当時の事を振り返っていたようだ。だから、俺にハーフだと明かして不安そうな声を漏らしたのか。


「でも、今はユメにカレンもいて、嫌な事されたりもしてないから平気ダヨ」


 俺は、小さい笑顔で答えるミーシャの肩に触れる。


「俺も二人と一緒だよ。ミーシャはミーシャだ」


 会って間もないのに、こんな事言うのは信憑性無いかもしれないけれど、俺はありのままの気持ちを伝える。


「それに、その髪や綺麗な瞳はご両親からの大切な贈り物で、二人の子供だという証でもある。だから、俺も変だなんて絶対に思わないよ」

「……ツカーサ」


 彼女の顔色が、変わった。


「アリガトウ!そう言ってもらえて、ウレシイ!!」


 そう感謝の気持ちを伝えてくれたミーシャの表情には、もう不安な色はすっかりと無くなっていた。

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