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女優と結婚できる……?
おそらく、このチャンスを逃せば2度とそんな経験できないだろう。
夢があるじゃないか。
今後俺がお金持ちになることは努力次第で可能かも知れない。だが、女優と結婚ってのはお金持ちになろうができるってわけではない。
いやいやダメだ、ダメだ。
これは9才の自分がくれたものだ。そんな私利私欲のために使っていいものだろうか。
かつての俺が喜んでくれそうな使い方、喜んでくれそうな使い方……
9才、その頃の俺には夢があった。今はすっかり忘れてしまっていたけれど。
「ヒーローになりたい」
9才の頃の夢、いつの間にかその夢は忘れてしまい、今となっては夢すらない。悲しいけれど、大人になったんだな。
そう、9才の頃の俺はヒーローになりたかったんだ。なら、俺が願うべきことは、女優と結婚したいや自分だけ大金持ちになりたいで はないはずだ。
「決まったよ。サンタクロースさん。どうか、俺の願いを叶えてください」
「決まったか……何にしたんだ? お金かい? 美女かい? 才能かい? 名誉かい? 何にする? お主はいったい何を願う?」
「それは、安定した世の中をお願いします……今 世の中がピンチに陥り、正直、嫌なムードが続いています。 どうかここで、安定した世の中に戻って欲しいなと……」
「本当にそれでいいのか? もったいないとは思わぬのか?」
「大丈夫です、後悔はしません。元々これは9才の俺が使えるはずだったチャンス。そのチャンスをあいつのために使ってやりたいんです!」
「9才の頃の俺はヒーローになりたかったんです」
「ですが俺は、結局今までヒーローではなかった。だから、俺はこの願いで少しでもヒーローのような活躍ができたと9才の俺に誇りたいんです」
「どうですか? できますか?」
「少し、時間はかかるけど大丈夫。安定した世の中ってのは絶対にくる。だってこの世の中には、たくさんのヒーローで溢れているからな」
「感染予防のためマスクを付けて外出するヒーロー、会食や旅行を控えるヒーロー、時短営業に応じるヒーロー、自分を犠牲にして誰かのために動ける者はみんなヒーローだ」
「大丈夫じゃ、お主ももう、十分ヒーローじゃ!」
「俺がヒーロー?」
「そうじゃ。お主は十分、人のために動けているじゃろ?」
「ま、まあ……」
「ヒーローでなければ、あんなお願いしないだろう?」
「現在進行形で、たくさんのヒーローが見えない敵を倒そうと戦っている。正直、ヒーローというのは遅れてやってくる。効果が出るまでに少し時間がかかっているようじゃ」
「わしも年じゃからの~願い事をすぐに叶えてやることが出来ないんじゃ。力不足で情けないが、必ず約束は守る。だからお主たちもう少し辛抱してくれ。お主の願いをわしが叶えるその時まで……」
「あ、はい」
「邪魔したな……」
サンタの移動手段は、トナカイでもソリでもなかった。瞬間移動という超人的力を使った移動であった。
「あの時、お主を選んで正解じゃったな。ありがとうな」
去り際にサンタが笑ってそう言った。