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「プレゼントは決まっているかい? 1つなら願い事でも叶えてあげられるよ。 女優さんと結婚したいだったり、宝くじで1等当選したい等、法に触れるものとモラルの欠けたもの以外なら可能だが」
願い事? 女優と結婚? 大金持ちになれる? いーやったー! ラッキー。
……いや待てよ、何故そんなチャンスが俺に? 真面目に生きてきたつもりではあるが、そんなチャンスをもらえるような実績は俺にはない。それに俺は1度サンタクジに当選している。そこまで運のいい人間ではない。今年俺 末吉だったし。
「あのーこれって本当に俺がもらえるんですか? 一応 俺 昔、あなたのお仲間にお会いしてるんですよね~」
「ああ、それはわしじゃ!大きくなったの~」
やっぱりか。俺が昔会ったのもこのサンタクロースだったのか。言われてみれば何となく面影が……
「あ、そうですか。お久しぶりです」
「すみません、正直、あの時は何をもらったのかは思い出せないのですが、おそらく、大切に使わせてもらったと思うんですよ……」
「何、覚えていないのか?」
「すみません、本当にすみません」
覚えていないんだよな。サンタクロースに会ったってことは覚えているのに、肝心の貰ったものを忘れるなんて。本物のサンタクロースに貰ったものなんて本当なら、家宝にすべきだろう。何やってるんだ俺は。
「あの時 お主はな……こう答えたんだよ」
「今の僕はプレゼントいらないので、20年後の僕に、プレゼントをあげてください! お願いします」
「いいのかって、再確認したのだが……」
「僕よりも20年後の僕の方がもっと大変だと思うので、20年後の僕にあげてください。お願いします」
「正直驚いた。こんなことを言う子どもがいるのかと……」
「初めての体験だったが、こんな優しい子の願いは絶対に叶えてあげたいと思い、わしは20年、何とか生きぬいた。わしをここまで生かせてくれたのはお主かもな」
「だから、これはお主にはプレゼントを受けとる権利がちゃんとあるんじゃよ」
……9才の自分がそんなことを言っていたとは。自分自身が言ったことなのに、涙が出そうになった。
あの時、欲しいものなんていっぱいあったろうに、我慢して、俺にその権利を譲ってくれるなんて……
これは、そう簡単に決められそうにない。少し、時間を貰おう。