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艶女ぃLIFEは眠れない  作者: メバ
8/30

第8話:愛島さんはエロティック

1階玄関横の階段から2階に上がると、そこは1階同様に廊下だった。


壁に備え付けられた窓の向こうには、人工芝の敷かれた広場が見える。


1階にある共有スペースの真上は、広場になってるんだね。

広場って言っても、広さは下のリビング・ダイニングと大きさは変わらないんだろうけど。


隅の方には小さな灰皿がちょこんと置かれていた。

ちょっとした洗濯物なんかはここに干しても良さそうだけど、すぐ近くに灰皿があるようなところに干したいとは思わないよね。


そう思っていると、酒谷さんは広場への扉からスタスタとその灰皿目掛けて進んでいき、窓越しにチョイチョイと僕を手招きした。


誘われるままに広場へと進む僕は、扉から出て足を止めた。

ここって、雨ざらしになってるけど、裸足?


そう思って周りを見てみると、スリッパが4足。

そして酒谷さんの足にも。


それぞれ違う物だから、共有のものではないらしい。


仕方なく僕は、裸足のままいつの間にか煙草を吸い始めていた酒谷さんへと近付いた。


「そ、それで、御用はなんでしょう?」

「そんなに固くなんなよ!ただ、1人で煙草吸うのが寂しかったから、付き合ってもらいたかっただけさ」


えぇ〜、そんな理由??


「幸太、煙草は吸うのか?」

男っぽい口調でそう言った酒谷さんに、僕は首を振って答える。


「い、いえ、吸ったことありません」

「じゃぁ、ここらでデビューしてみなよ」

そう言って差し出される煙草を断ることができず、僕は煙草とライターを受け取った。


煙草を咥えて慣れないライターに火をつけて、その火を煙草へと近づける。


え、全然火がつかないんですけど。


「あっはっは!火を近づけるだけじゃダメだよ!ちゃんと吸いながらつけないと」

笑って言う酒谷さんの言葉に従って、僕が煙草を吸いながら火を近づけると。


「ゴホッゴホッ!」


思いっきり咳き込んだ。


「あっはっは!まぁ、最初はそんなもんだよ!そのうち慣れるって」

そう言って酒谷さんは、プカプカと煙草を吸っていた。


いやいやいや、慣れたくないし!これのどこがいいの!?

なんかちょっと、頭クラクラするよ!!


そう思いながらも僕は、煙がなるべく肺に入らないように煙草を吸って、手に持っていた缶ビールを口にする。


「おっ、いいもん持ってんじゃん!私にもちょうだい!」

酒谷さんはそう言うと、僕の手から缶ビールを取り上げて、当たり前のようにそれを口にした。


いやいや、えっ、間接キス!?

酒谷さん、そういうの気にしない人!?


僕が呆気にとられていると、

「ごちそうさん」

酒谷さんはまた当たり前のように缶ビールを僕へと返そうとしていた。


「あ、残りもどうぞ」

「そう?悪ぃな」

ニカッと笑って、酒谷さんはそのままビールを飲み干し、吸い終わった煙草を灰皿へと捨てて歩き出した。


「付き合ってくれてありがとな。おやすみ〜」

そのまま酒谷さんは、手を振りながら去っていった。


え、ほんとに煙草付き合うだけだったの?


僕は、歩き去る酒谷さんの後ろ姿を、まだ長い煙草を持ったまま見守っていた。


「戻ろう」

なんとなく、そのまま捨てるのがもったいなくてもう一息煙草を吸って、僕はその場をあとにした。

お陰で、またせき込んだけどね。


あー、頭がクラクラする。

広場から出て階段を降りようとした僕は、クラクラする頭のせいで少し立ち止まっていた。


「あ、あの、大丈夫?」

僕の背中に、そんな声がかけられた。


振り向くとそこにいたのは吉良さん。


「だ、大丈夫です」

片手を挙げてそう僕が答えると、


「ひぃっ」

吉良さんは小さな悲鳴を上げて頭を庇っていた。


「ご、ごめんなさい!」

吉良さんは、そう言ってそのまま部屋へと走り去っていった。


えっと・・・僕、悲鳴出されるようなこと、何かした?


クラクラする頭にモヤモヤする気持ちを抱えて階段を降りると、これから出かける様子のばっちりメイクの愛島さんと遭遇した。


「あ、あの、愛島さん。先ほどは、本当にすみませんでした!」

僕は咄嗟に、そう言って頭を下げた。


もちろん、愛島さんのむ、胸にダイブしたことを謝るつもりでね。


「もう、本当よ~。あなたのお陰で興奮しちゃって、これから仕事に行くことにしちゃったんだから~」


愛島さん、もう全然意味が分かりません。


まぁその、興奮したっていうのは置いておいて、興奮したから仕事に行くってどういうこと?

しかも、仕事に行くことにした、ってことは行かなくてもいいってこと?

仕事って、そんなラフな感じでいいんだっけ??


芦田幸太、現在大混乱中です。


その時、愛島さんがグイっと僕に近づき、そのまま僕の耳元へと顔を近づけてくる。


いきなりのことに反応できなかった僕が、ただただその場に立ち尽くしていると。


「行ってきます」

愛島さんは僕の耳元で優しくそう呟き、そのまま外へと出かけて行った。


「い、行ってらっしゃい」

僕は、閉まった扉に向かって、呆然としながらそう呟いた。


吐息が、吐息がぁ~~~~~~!

愛島さん顔近い!!吐息めっちゃかかった!!

なんなのあの甘い声!?

あれで母さんより年上なの!?

なんであんなにエロいの!?


悶絶しながら僕は、やっと部屋へと戻ってきた。


目の前には、乱雑に積まれた段ボール。


「はぁ。今日はもう、寝よう」

僕はそう呟いて、お風呂にも入ることなくそのまま直接床に敷かれた布団へと倒れこみ、深い眠りに・・・


つけない!眠れない!!


愛島さんのせいだ!!



結局僕はその後、しばらくの間部屋の片付けをすることにした。


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