夜の訪問者
第二夫人の巻
そして夜。
お母様は、エレン姉様と実家にお泊りに行っている。
実家はお城。
シャルル殿下との婚礼の打ち合わせ。
そんな夜はお父様が寂しいらしい。
食事の後、ベリンダ姉様と良く話をしている。
そして、お風呂に入れられパジャマを着せられた私を部屋に迎えに来る。
書斎で仕事の時は、ユーリエに抱かれて待つ。
本を広げてもらう。
仕事中は静かに!が基本なので、図鑑を見せてもらう事が多い。
お仕事が終わるとお父様のお部屋で寝るまで本を読んでもらう。
そのまま、朝までお父様のお部屋で眠る。
もちろん、おねしょはしない。
ふと目覚めると、イケメンのどアップに未だに驚く。
毎回、心臓が止まりそうになる。情けない。
でも、その後はしばらく、ほぼ毎回綺麗な寝顔を堪能している。
イケメンは、寝顔も素敵。
長いまつ毛は、髪と同じ金色。
乱れた金髪がゴージャス。
唇は、閉じていても少し開いていても、きゅっと引き締まってセクシー。
間違っても、ぱかーんと口開けて、よだれたらしたり前世のお父ちゃんみたいに鼾をかいたりしない。
そして、お部屋のベッドでウトウトしていると、あの方が来る。
第二夫人の側仕えマクシム。
「旦那様。レベッカ様が寝酒でもご一緒しましょうか?とお伺いをされておりますが。」
「今夜はレオンが寂しがって一緒に寝る事にした。残念だ。
今度こちらから迎え行かせよう。とレベッカには、言ってくれ。」
「マクシム、使用人に言うことではないが毎回、すまぬ。」
「旦那様、かまいません。私は仕事でございますから。
ただ、使用人の身分で言わせて頂いてもよろしいでしょうか?」
今夜は、マクシムが粘っている。
「何か心配事か?」
「なかなか、母屋の方にお伺いできず報告が遅れましたが、レベッカ様のことでご相談が。」
「相談?」
「旦那様はレオン様が誕生されてから、いえリザベータ様のご懐妊以降一度も、レベッカ様とゆっくり時間を取られておりません。」
ん?私一才になったよね。
放置?プレイ?
「そうか?」
お父様に見事に自覚なし。
「リザベータ様がお忙しい、とお嬢様方が話されてからは
『旦那様がお寂しいでしょう。』
『やはり私がお相手を勤めて差し上げねば』と、お呼びを楽しみにされておりまして。
お留守にされると聞かれた時には、夜通し待たれていることも度々あります。
お呼びがないので、お嬢様方が『嘘をついた。母を揶揄って何が面白いのか。』
とキツく当たられておられます。
メイドでは抑えられないほどの事がありまして。
ジュリア様を庇った側仕えが今日怪我をいたしました。」
「怪我?聞いておらぬが。」
「奥向きの事ですので本来なら、リザベータ様にお話しさせていただきご指示を仰ぐのですが・・。
今日はお留守にされておりますので、奥向きのことで旦那様を煩わせるのは心苦しいのですが
お嬢様に取り返しのつかない事があってはいけませんので、相談させていただきました。」
「怪我は、ひどいのか?医者には?」
「医者は呼ばせていただきました。突き飛ばされたジュリア様を受け止めた時に
家具にぶつかり、腕を骨折いたしました。」
「骨折・・・。それは・・・。」
「明日でも宜しいので、ぜひレベッカ様とお話を。」
「その様な事なら今夜にでも。」
「いえ、レベッカ様には夜よくお休みになっておられませんで
今日お医者様に頂いたお薬をお飲み頂きました。
もうお休みになられているいる頃だと。」
一服盛りましたね。
「そうか・・。娘たちが怖がってはいないか?」
「今夜は、ビヴァリー様がジュリア様キャロル様とご一緒されております。」
「ビヴァリーが。そうか、しっかりしているな。」
「マクシム。そのような事があれば直ぐ知らせろ。遠慮などして何かあってからでは遅い。」
「申し訳ございません。」
「では、下がらせていただきます。」
「明日は、私がそちらに行こう。その様にレベッカに伝えてくれ。」
「はい。そのようにレベッカ様には申し上げます。」
「ふぅ〜。」
お父様が深くため息をつく。
お父様、放置はダメです。
貴族ではないので言葉が難しいので
間違っていると思います。