婚約中に楽しむ事は?
仲良しなのは
フィリップ&ベリンダ
シャルル&エレン
穏やかな日常が始まった。はずなのに
あ!
数字覚えました。
10進法なので安堵しました。
これで過去のスキルが活かせる道が見出せました。
文字も、37文字が基本。後は大文字小文字。
文字は、殆ど発音通りなので安心しました。
しかし、もちろん書けません。
急いでもペンが持てませんでした。
でも、暗算スキルが錆びぬよう密かに練習中です。
『若様は、時々指を持ち上げて何かを弾く様な動作をしておられる。』と噂になっている事など知りませんでした。頭の中で算盤を弾いてました。
金勘定ではありませんよ。ちゃんとしたお勉強です。
ポッチャリ君改タイロンは毎日、ちゃんとお勉強に付き合ってくれます。
図書室で、(ちゃんとお屋敷には図書室がありました。)本を選ばせてくれます。
そして、丁寧に開いて指を添えながら読んでくれるので素敵です。
見惚れることもないので、文字に集中できます。
ん?だからのイケメンじゃないキャラ?
そして、お昼寝の後は色々な物の名前を教えてくれます。
外で、お花の名前や、鳥や虫の名前。
空や水、空気だって聞いてみなければそれがどんな固有名詞で呼ばれているのかは解らないから。
そういう事を何だかとても解っているのが、タイロン君。
子供の相手には何だか出来る家庭教師です。
そして、静かにひっそり側に控えているユーリエ。
石を手にして「石」と習い、戻すと、手を拭き拭き。
風で髪がホワってなったら、櫛でスキッと整えてって、過保護すぎませんか?
そんな平和なはずの日常は時々なのか、いつもなのか。
最近は、かなりというか頻繁にというか
もう、こちらが日常になっていますが
婚約者として、訪れる2人のイケメンによって乱されております。
フィリップが来る。ベリンダがはしゃぐ。
この2人は、学院の馬場で乗馬を楽しむ事も多いようで、フィリップに送られてベリンダが帰って来るとお父様の機嫌が少し悪くなる気がするのは気のせいじゃないよね。
シャルルが本を持って来る。姉上の本を持って帰っては返しに来る。
この2人が実は私の平和をとっても乱している気がするしてます。
大人しげなエレン。
はっきり言って、私はエレン姉様を見誤っておりました。
大人しく、優しく私を可愛がってくれるお姉様。
憧れのお姉様。
シャルル殿下との間に、貴族としての家と家との結びつき以外のものがあるのか悩んでいたお姉様。
愛に真っ直ぐなベリンダ姉様を羨ましげに見つめたお姉様。
そんなお姉様の力になりたいと思って、微力な幼児の力を貸したつもりになっておりました。
頬を染めたお姉様と耳を赤くしたシャルル殿下を微笑ましく見つめて
密かに「レオン、我ながら良くやった。」と自分を褒めておりました。
なのに、頻繁にやってくる殿下と姉上の会話。
そうです。
抱っこを強請って付いて来ました。
そうです。自分で選んだこの状態ですよ。
自業自得ですね。
でも、声に出しませんが幼児を抱っこしてこんな会話しないで欲しい。
甘い会話をちょっと将来の参考にしようかな?なんて考えが甘かったですね。
「エレン。この本面白かったよ。」
「まぁ、良かったです。どこが気になりました?」
ん?気になる?
気に入ったじゃないの?
「伯爵の秘密のお相手かな?」
「まぁ、そこはご存知ありませんでした?」
「そう、この間奥様にバレて少し大きめ宝石がついた指輪を買わされたと
嘆いておられたのがたった2ヶ月前なのだが、もう次のお相手が?」
「・・・男爵家の次女の方ですわ。少し口の軽い方なのでしょうね。化粧室で自慢げにお友達に話されておりましたから。」
「ふむ、それは時間の問題の様だから放置しよう。
しかし、貴族の令嬢にしては軽率ではないかな?」
「付き合いを自慢なさるのは、前の方と別れてまだ2ヶ月という事さえご存知ないのでしょう。
その位の情報も、手に入れられないのですよ。
あの伯爵とお付き合いしている事など、恥だと思えても自慢になど出来ませんわよ。」
姉上、辛辣です。
「それよりも、・・・子爵の奥様が最近よくお買い物をされてるそうなのですが
1年前よりもかなり良い物を手にされている様なのです。あそこの領地には何か税収が上向く様な・・・・」
「いや、それは伯爵の相手よりも興味深い。新たな章?いや本になりますね。」
「まぁ、少しはシャルル殿下の興味が引ける本を探せましたかしら?」
本じゃない気がする。
いや、本の話じゃありませんよね。
「もう少し早くから、エレン殿とはこのように本の話をしておけば
婚約期間がもっと有意義な楽しい時間になったのだろうな。
もう少し早くからエレン殿を知る努力をしておけば良かった。」
「まぁ、時間はこれからいくらでもありますわ。」
やっと甘くなった・・・。
って、その前の会話が怖いです。
気にしたら豆じゃなく負け。
もう、かなり負けてます。