村のシンガーソングライター達
おじい様はスプーンを投げた。
王子様の突然の訪問。
やってきたのは、お母様の弟と甥。アルフレッド殿下とシャルル殿下。
お母様が嬉しそう。
「アルフレッド。シャルル殿下ようこそ。」
「直轄の鉱山の方に見回りに出たのですが、早めに終わったので。レオン殿のお披露目が終わってもしばらく領地にいらっしゃるなら、お会いできるかと。」
「お会いできて、良かった。」
「レオン殿おめでとうございます。」
「レオン、おめでとう。」
「ありがとうございまちゅ。」
「わぁ。レオン殿はおしゃべりが・・・できるのですね。」
ここは攻めるところ・
「シャルル殿下は、エレンねえねの顔を見にきたでしゅか?」
「え!あ!いや!」
駄目駄目王子!あ、でも耳赤いかも。
大人がみんな、頭振ってる。頑張れシャルル。
エレン姉様眉間に皺が。
「想っていても、口に出せないシャイな年頃なのですよ殿下は。」
フィリップ、なんだか判ったような事をいうなぁ。おじさんだからね。
「言わにゃいと、判りまちぇん!お父ちゃまはお母しゃまにいつも言うでしゅよ。会えなくてしゃびしいとか、愛ち。むぐ。」
シャルルに見習って欲しいお父様の話をしていたら、お父様に口をふさがれた。
「何を言っているのか、レオンは。」
「いつまでも、睦まじくていらっしゃる。お二人は。」
アルフレッド様が解っているよ・・・的に。周りはもちろん今更だよね。
「いやーまさかと思ったのですが。」
屋敷の中に入り、外套や手袋を取りながらアルフレッド様が言う・
「来る途中でなぁ、シャルル。」
「はい?」
「面白い唄を聞いたであろう。」
「あ!あれですね。」
「急に立ち寄ってもご迷惑では。お訪ねするかどうか悩んでいたのですが。」
「我が家に、遠慮など無用に。」
おじい様が笑う。私はおじい様の腕のなか。基本、最近は歩く理想の腕に抱かれて過ごすのが日課。もう直ぐ王都に帰ってしまうから。38+1年分の抱擁を堪能中。
「いや、途中の村で吟遊詩人語っていた唄が気になって。お城に寄る事にいたしました。」
あっ!
いっ!
ウッ!
えっ!
おぉ!だよね。
「ベリンダ殿と婚約なさったそうですが真ですか?フィリップ様。」
そっちならセーフ。
「もうご存じなのですね。正式に願い出るのは王都に帰ってからになりますが。」
「おめでとうございます。」
席に着きお茶が出される。大人の男性だけの席。私的に言うイケメンの花園。
「で、フィリップ様。ついにラウール殿への想いを断ち切ったそうですね。どの様な心境の変化が?」
「ぶっ!」フィリップがお茶を吹く。
「えっ!叔父上の聞いた話はどのような・・・?私が聞いたのとは違いますが。」
「どのような?と言われても。ラウール様が振られた様な悲恋話でした。年老いて容色が衰えて来たラウール殿に、見切りをつけて、ブロワ伯爵が若くユールヴェル侯爵似の娘子に心を移したと。侯爵似と言えば、ベリンダ殿でしょう?で、シャルルはどんな唄を聞いたのだ?」
年老いて、容色が衰えて振られた・・・お父様。
「私が聞いた唄は、勇者と姫君のような唄でしたよ。勇者がレオン殿でしたが。お父様の方ばかり見て、自分を見てくれない。と泣くお姉様のために、ブロワ伯爵に、ユールヴェル侯爵家の跡取りのレオン殿が闘いを挑み、お姉様の婚約をもぎ取ったと。1歳なのに。レオンは強いね。」
「レオンは、ちゅよいでしゅ。」
1歳なのに・・・どんな唄だよ。
「他にも私は、レオン殿でなくベリンダ殿が襲い掛かったと云うのも聞きました。そちらは、フィリップ様が悲鳴を上げて城内を逃げ回るとか、ラウール殿が好きだと口づけするとか面白可笑しかったですね。で、結局フィリップ様がお母様の伯爵夫人に捕まって。ベリンダ殿に差し出されて終わりましたが。」
「ほぉ・・・。」
おじい様怒ってますか。こめかみに青筋が。
「ラウールが見切りをつけられ、ラウールばかり見る、ラウールと口づけ・・。どの唄も結局ラウールとフィリップ殿か・・・。」
むむむぅ・・と考え込むおじい様。
ふっ、と顔が緩む。
「レオンの披露目も終わった。侯爵は譲る。引退する!ラウール頑張れよ!。」
おじい様が投げ出しました。