ユールヴェル家の名に懸けて
レオン失敗する
私を抱きかかえて退場させようとしているのはおじい様。肩越しに伸びっとして後ろを見ます。まだフィリップは倒れたまま。
フィリップのお腹には慌てて起き上がったお姉様が、座っています。腰が抜けたのか、立ち上がれないようです。真っ赤な顔。
お父様は隣で、あちゃーやってしまった的に顔を覆ってます。
他は、唖然としています。
フィリップは、転がったまま頭をガシガシして大笑いしてます。
私、失敗しました。姉様が上に乗ってたら、襲い掛かったのは姉様の方になってしまうのでは・・・。
姉様ごめん。
やっぱり、私の出番です。
「おじいちゃま、ベリンダねえねが、立てません。じいじたちゅけるでしゅ。」
「ん、おぉそうか・・・。」
さっきの私の失態は忘れたらしい。さあ、行かねば。
ヨチヨチを卒業して、とことこ駆ける。
おじい様がベリンダを抱きおこした。
今度は、失敗しない。
フィリップの横に立って間違いを訂正する。
「ねえね、フィリップにキチュしましたね。責任取るでしゅよ。婚約しなしゃい!」
えへん!どうだ!
今度は間違えてない。胸を張る。
「責任取ります!婚約します!」
ベリンダが宣言する。
「まぁ、ぜひ責任取って貰わなければなりませんわ。このままでは、フィリップに嫁の来てがが無くなりますもの。ね、レオン様。」
エリーザおばちゃまが抱き上げてくれる。
周りのみんなが、結局そういう感じで行くのね。
という感じになって、うん、うん、と頷いている。もう、突っ走れベリンダ!
言ってやった。そんなベリンダは拳を握ったまま赤くなって下を向いています。
フィリップの返事待ちです。
降ろしてもらう。
上半身を起こして、首を傾げきょとんとしているフィリップ様。なんか髪が乱れて悩まし気。
「ぶちゅ。」キスしてみた。ファーストキスです!!!
「キチュしました。責任取ってねえねが結婚するですよ。」
ユールヴェル家全員で責任取ります。
いつもポーカーフェイスのフィリップが、ビックリ顔になっている。
「フィリップ、お返事なさい。」伯爵夫人が急き立てる。
お父様が手をかして、フィリップを立たせる。
そして、素知らぬ顔でフィリップにキスした。
え! ええええ!
学院の噂に拍車がかかるよ!
「責任は、ベリンダが取る。」
へ・・・私の真似?なんだか変お父様。
「足りぬなら私の口づけも付けようか?」
おじい様が聞いてくる。おじい様も変。
「いっ、要りません。」
「いや、ベリンダの失敗は侯爵家の恥。侯爵家全体で責任を取らねば。」
「「「「「ユールヴェル家の名に懸けて。」」」」」
合唱。
「私本当に、バランスが、そんなつもりじゃなくて・・。」
「フィリップ様にこのような・・・迷惑かける・・・」
そこだ!泣けベリンダ。
姉様の目から一粒涙がこぼれた。
グッジョブ涙。
「ベリンダ殿。泣かなくても。」
そこで、もう一押し。
周りのみんなが前のめりに拳握ってるよ。
「責任取らせてくださいませ・・・・」
涙ポロポロ。
「まぁ、フィリップ!このようにいたいけなお嬢さんを泣かせて。」
「うちのベリンダが責任を取ると言っているのに不足か!」
「ふーっ。」
頭を振るフィリップ。
「まさか、お母様の早馬の相談は・・・。まさかね。」
フッと笑う。
「ベリンダ殿、では責任をとっていただきましょうか。」
「ラウールや、レオン殿が責任を取る、と言ってくると大変そうなので。よろしくお願いします。婚約者殿。」
ベリンダの乱れた前髪を、フィリップの手が優しく直す。
「責任を取らせると言ったが、触って良いとは言っておらん!!」
お父様が怒っている。
お姉様が、泣きながら笑っている。綺麗だ。
趣味に走って書いているので
でも、実際ブックマークや評価って
思ったよりずっと嬉しい物ですね。
ありがとうございます。