フィリップは置いてけぼり
堀は知らないうちに埋められます
明日がお披露目誕生会という日。
前の日までの話し合いに同席した事で、私はすごく頭を使ってしまいました。
恋愛関係の経験値が低くて、活躍の場も、口挟むタイミングもわかりませんでした。
できる子レオンのつもりだったのに。
転生大活躍をしていません。
今度、料理のレシピでも・・・。
でも、お城の料理マジ美味い、まだ離乳食ですが。
ケーキだって下ごしらえ見ました。明日に備えてもう5段スポンジがかさなっておりました。
私の出番はどこでしょう。そしてここはどこでしょう。
地球の中世ヨーロッパ?世界史の知識はフランス革命とか薔薇戦争とか、ナポレオンやヒットラー。帝政ローマ帝国。都市国家ギリシャ。
マリーアントワネットに会ったら「パンが食べられない人は、ケーキを見たことも無い」と教えてあげる事は出来ると思う。経済の事は少しわかる、簿記1級でそろばん10段もってます。暗算は得意。経理課20年のスキルしか使い道はなさそうだから。
ん?この世界魔法はあるの?
すごい魔法が使えるとか…。
今度、現実放棄して、意識を手放し神の御許に呼ばれた時に、聞いておくことにして、心にメモする。神の御許に召されるって、召喚じゃなく限りなく死に近い感じがするのでもっと違うように表現したいな。
返事を待つどころか、馬を飛ばして伯爵夫人がやってきた。
「もう、お手紙をいただいて嬉しくて、いてもたってもいられず、来てしまいましたわ。お嬢様はどちらかしら?」
他の領地に乗馬服は、ダメダメ案件ではなかったでしょうか?
「まぁ、エリーズ。側仕えは?」
「馬車で後から来るでしょう。」
「フィリップ様は?ご一緒ではありませんの?」
「フィリップがいたら、詳しい話ができませんでしょう。私今回は、背水の陣。後がないつもりで参りましたのよ。」
「ユールヴェル伯爵の奥様から緊急の相談があると、早馬が来たので。私先に行きます。今回は宴の後もゆっくり滞在するつもりなので、貴方もそのつもりで準備してお披露目に間に合う時間にいらっしゃい。フィリップには言い置いてきましたわ。」
「さぁ、明日の昼までしか詳しい打ち合わせができません。まず何から話しましょうか?」
伯爵夫人は前のめり。
「エリーズ。うちのメイドを行かせますから、まずお召し替えを。」
「まぁ、私とした事がが・・・・。フィリップの嫁の事となると自分を見失ってしまって…。」
緊張した面持ちベリンダが立っている。
私の位置は今回お母様の膝の上。女性ばかりの集まりで私以外は全部女性。子供はベリンダ姉様だけ。
「リザベータの2番目の娘、ベリンダと申します。」
「ブロワ伯爵夫人。先日は急にお屋敷に伺いご迷惑をおかけしました。ありがとうございました。」
「まぁ、おいくつになられるのかしら?」
「もうすぐ、13になります。」
「お加減はもうすっかりよろしいのかしら?」
フッフッフッとおばあ様が笑う。
「それが、エリーズ。この子仮病でしたのよ。フィリップ殿の屋敷に意中の女性がいたら・・と気になって仕方なくて。自分の眼で確かめに行くなんて貴族のお嬢様失格でしょう?」
「それが、フィリップを慕うあまりの事でしたら、私は歓迎いたしますよ。恋ですものね。」
「恋ですからね。」
ふふふ・・・。
若いっていいわね的な笑いが広がる。
「で、ここからですが皆さま。どのよう進めるのが良いでしょうね。」
「フィリップ様以外に、嫁がないと言っているというのは最後の手段でしょう。」
「そうですわ、こっちが惚れている、なんて弱みを見せるのは駄目です!」
「お披露目が終わってから、まず侯爵が話すことになっております。ラウールの娘のベリンダだが、13にもなって婚約が決まっていない。本人はまだ結婚などしたくない!とわがままを言っているらしいのだが・・・。第1夫人の娘としては外聞が悪い。ラウールとも親しく領地も近い、身分差も問題のないあなたが仮の婚約者になってくれないだろうか?と、持ち掛ける事になっております。」
「私は本当に嫁ぎたいのです。」
「まぁ、待ちなさい。」
「仮でも良いのでフィリップ様が婚約を認めれば、解消はいつでもできます。と言いながら15の成人まで待ち、成人してからの婚約破棄等、ベリンダの疵になって可哀そうではないかと、なし崩しに結婚まで持って行けば良いのですよ。」
「それから、ラウールが、『若い娘など直ぐに気が変わる。同じ年頃の好きな殿方が出来れば、婚約を解消したいと言い出すにきまっている。其方のような年上の男と間違っても、そのまま結婚することにはならぬ。2年もあるしな。安心していい。ベリンダが自分で、相ふさわしい若い男を見つけて来るに決まっている。その時は其方には悪いが、悲しい顔をして振られてくれ。』と言うそうです。」
お父様なんだか、悪い顔してませんか。
「それから、返事はその場でなく考えてくれないか。と即答はさせない事になっています。」
ふむふむ。
「それで、エリーズ様が。」
「私が。」
「フィリップ様が相談されない時には、このような話を伺いましたがどうされるつもりです?と尋ねられて。」
「それで?」
「多分断るつもりだと言われた時には、2年の間には他の方と結婚するつもりはあるのですか?と聞いてみてくださいませ。」
「きっと、先の事などわからない。明日にでも結婚したい人が現れるかもしれませんよ。などと・・・。」
「フィリップ様ならいいそうですね。」
皆また、ふむふむ頷く。
「で、エリーゼ様は、『母は、次々に来る貴方の縁談を断るのにうんざりしているのです。内々に婚約の話が進んでおりますの。と他の方からの縁談を、2年間断れるのでしたらその話受けてください。』と後押ししていただければ。ますます良いかと。」
エリーズ様が拳を握って決心を語る。
「私、ベリンダ様はお若いから、おなたのようなおじさんとの婚約は可哀そうですけど・・。直ぐに若いお相手を見つけられて。残念ながら貴方と結婚という事にはならないでしょう。あなたが自分でいつも言うように、明日にも婚約を解消されて1日婚約者と貴族院で噂になるかもしれません。それでもラウール殿に恋焦がれていつまでも独身でいる、という噂よりはましでしょう・・と言ってやります。」
母親なのにひどい。
でも噂フィリップ母様も知っていたのですね。