ベリンダ興信所
エマはメイド調査員です。
涙目のお父様の泣き言はは続く。
「フィリップはおじさんだ。18も年上など親子では無いか。」
「もう直ぐ、私は13になります。」
「フィリップは、31になる。」
不毛。
「フィリップは、放蕩者だ。花街で遊んでいる。ベリンダは泣かされる。」
「泣きません!」
そこ?
「多勢の女性と付き合っている。女の噂が絶えない。」
「本命がいないから、きっと決めかねているのです。沢山の女の子と付き合わねば、自分に合うかどうかわかりませんもの。領地を守る責任があるのですから、慎重に選ぶのは当然ですわ。」
「20年も選べば充分じゃないか。長く付き合ってもらえない欠陥男に違いない!」
お父様、貴方の30年来の産まれた時からの親友になに言ってるんですか。
「ベリンダは、騙されている。目が曇っているのだ。フィリップめ、絶交だ!いや決闘を申し込む。」
お父さま突っ走ってます。
「お父様、お待ち下さい。お父様は間違っていますわ。」
「む、何だ。何が間違っていると言うのだ。」
「お父様の言っている事は、間違っていると申し上げているのです。」
「何が違うと言うのだ。」
「まず、フィリップ様は花街などに通ってはおられません。遊び仲間の方々のお話によると外での食事の後は殆ど1次会で帰られるそうです。女の方の居るお酒のお店には、どんなにお誘いしても来られないと伺いました。私自分でいろいろ調べましたの。独身のお友達の間では、朴念仁と言われおりました。フィリップ様は、恋も知らないお子ちゃま扱いされていましたわ。女の扱いも知らぬから、女性からも評判もあまり良くないと聞きました。私、いつも家に来るフィリップ様しか知らないし、お父様のお話しか聞いておりませんでしたから、調査結果に驚きました。」
「調査だと、12の子供にどんな調査ができると言うのだ。学院の図書館での調べ物が精々ではないか。」
「エマ、どうかしら。」
眼鏡に髪を後ろで三つ編みしたお姉様付きのメイドが前に出る。
ノートの様な物を広げると喋りだす。
「失礼いたします。私達お嬢さま付きのメイドが3名で協力しあって、学院方々の側仕えやメイドから情報収集いたしました。」
「まぁ・主人の事を軽々しく他所の使用人に話すなど何処の使用人ですか!」
ここで怒っているのは、お母様方女性陣。使用人の事は奥様方の管轄らしい。
「いえ、奥様違います。流石に自分の家のご主人の事を話す様な、使用人の風上にも置けないような者は、学院にはおりませんが。ご主人以外の者の事は、使用人同士のお茶の時間や、食事の用意や後片付けの時に台所の者達の噂に上ります。ご主人がなさった事は話には出ませんが、お家に見えたお客様がなさった事は聞けたりするのです。後は、「〇〇には、困ったものだな。」とご主人がおっしゃっていた。などと言うのはタブーではありません。」
その場の全員が、今後他所のお屋敷では気を付けようと心に誓った。
どうです!と言うようにベリンダ姉様が前にでる。
「私のメイドは優秀でしょう?それに私も自分で、フィリップ様のお屋敷に伺って調べたのです。」
あちゃ、姉様の鈍感。それは言っては駄目って感じが赤子でもします。
「何!勝手に未婚の娘が他所の屋敷に親の承諾もなく行っただとー!」
やっぱり、激おこ事案だった。
「だって、近くを通っている時に具合が悪くなって。フィリップ様のお屋敷がすぐ近くだったのですもの。仕方無いでは無いですか。お父様は道端で倒れる方が令嬢らしいと仰るの?」
確信犯だ。こわ。
「そのお話聞いていませんけど。」
今度は、お母様のまわりの空気がひんやりする。お父様の数倍怖い。
「エマ。どうして私の所にそのお話が届いていないのかしら。お礼状やお礼の品は誰が送ったのかしらねぇ・・・。
公爵家では、娘の手当てをしてもらってもお礼の言葉もなかったと、今頃は学院の台所で噂になっているかも知れませんね。」
部屋に吹雪が吹いてきました。