表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/67

黑金と

 鬼ヶ島の一角に、人影が五つ、四鬼と桃仙である。


「ホッホッホ、集まったな?これより、製鉄技術を教授するのじゃが」


 そこまで言うと、桃仙はウラを見る。


「一連の流れは、青鬼、おぬしだけに伝えよう」


「俺だけに?」


「ホッホッホ、そうじゃ、黒いのは、『黑金』の採取をおもにさせる、身体能力の高い黒鬼にはうってつけじゃろう、何より頭は弱そうじゃしのう。鬼術の得意な赤鬼は黑金を溶かすのに必要な火力として、しかし、それだけでは火力が足りんじゃろうから、緑はその補助、緑鬼も鬼術を苦手とはしておらんはずじゃからのう? 各作業はこれらで事足りると思うが、全体の流れを統括する者が必要じゃ、青鬼は緑鬼よりも身体能力に優れるが、鬼術は劣る。しかしおぬしは、頭が切れる、ならば作業に入れるよりも、全体の流れを把握させ、指示を出す立場に就かせた方が、効率が良いはずじゃ」


 グテツが荒ぶるのを、リシンがからかい

シキョウが諫めるという、よく見る光景を余所に

ウラは桃仙に、了承の意志を伝える。


「ホッホッホ、よろしい。先ずは『炉』の建設じゃが…」


 桃仙は、何やらぶつぶつと呟きながら思案を始める。


「木炭は用意出来るかの? 鬼術で賄えるとは思うが、あれば鬼術の使用が少なくて済む。他に必要な物は大量の粘土と、労働力じゃの」


「木炭かい?期待出来ないね、まぁ……あたってみるよ」


「労働力なら、狩りを止められた暇人共がいるから、そいつらにやらせりゃあ良い!」

「グテツ、アンタもやるんだよ」


「粘土か……沼が一つあるが、足りるだろうか?」

「大丈夫だ、儂に心当たりがある」


「ホッホッホ、では、頼んだぞ」


 桃仙は、材料調達を他に任せ、

ウラに、炉の仕組みなど細かな説明を交えつつ、

指示を出させる。


 そうこうしている内に、続々と材料が集まってくる、

流石は人間とは隔絶した力を持つ鬼と言うべきか。


 やがてウラが仕組みを理解した頃、

桃仙は、人目につかない様、仙界へ戻る。


 理解しただけあって、それでも作業が滞ることは無い。


「ここに穴を空ける。誰か頼めるか?」

「鬼術を使っても良いんだろう? アタシに任せな!」

「リシン、頼む。やり過ぎないようにしてくれ」


 リシンの鬼術で、地面を爆裂させ

一気に大穴が開く。


「次は、それをここに……」


 ウラが、淡々とした指示を出し瞬く間に仕上げていき

残るは粘土の乾燥と言うところまで来た。


「今日は、この辺りで良いだろう」


ウラの言葉を聞き、シキョウが皆を解散させ

鬼達がいなくなったのを確認してから近づいてくる。


「ウラ、これは一体どういう物なんだ?」


「確か『たたら製鉄』に鬼術を取り込み、組み替えた物……らしい。この中に、桃仙の言っていた黑金を入れ、そして……こちら側から火を入れ、鬼術で火を強める。その後は絶えず火の勢いを保ち、風を送り続ける。全て鬼術で賄えるが、かなりの長時間になり負担が大きい。だから、補助として木炭を入れておく」


 ウラは案内しながら説明をし

その後、シキョウに向き直り


「明日は、黑金の採掘をおこなう。初日は四鬼と桃仙で採掘場所の選定、実際に採取する。桃仙によると、問題は無いだろうと言っていた」


「ところで、桃仙の使っていた『黒い壁』を使うのでは駄目なのか?」


「それは俺も思い、聞いてみたが、その場に留まらせておくことが出来ないらしい。例え出来ても、純度が高すぎて溶かすことも、加工する事も出来ないだろうと言っていた」


「成る程な。さあ、我らも戻ろう」


そして、翌日。


「ホッホッホ、集まったな? では、採掘場へ向かうぞ。なに、目星はつけてある」


 鬼ヶ島にある、山にはいくつかの洞穴がある

その中の一つ、近くに川が流れている場所。

 洞穴内は、入り口からなだらかに下っており

女鬼くらいの体格なら、行き来するにも問題にならない

広さがあった。


「ホッホッホ、良さそうじゃな」


「こんな狭い所に、入れるはず無いだろうが!」


 流石にグテツ程の体格を誇ると

入ることすらままならない為、桃仙に言い寄る。


「『巨大化』を解けば良かろう?」


「なっ!?」


 そう、男鬼も巨大化を解けば、女鬼と体格的には

余り変わらない、しかし──


「桃仙、男鬼に取って巨大化を解くのは、辱め以外の何物でも無い、儂らの気持ちを汲んでくれぬか?」


 男鬼が巨大化を解くのは、女鬼と交わる(・・・)時のみ

それ以外の平時は、常に巨大化を解かないことを

幼少時から叩き込まれる物だ。


「ホッホッホ、そうかそうか……ならば仕方ないのう。女鬼とて、身体能力は高い、掘削は女鬼にして貰おう。ただし、運び出した岩石は、黒いの、率先して運ぶんじゃぞ?」


「岩石ぃ? 黑金が取れるんじゃ無いのか?」


「ホッホ、あわてるな。黑金と言うのは岩石に含まれた、小さな砂粒の様な物じゃ。それを先日建てた炉で溶かし、大きな塊にする。そこまでが、第一段階じゃ」


「へぇ、結構手間がかかるんだねえ」


「ホッホッホ、当面は第一段階で止め、それを売った方が良いじゃろう、先ずは金銭を確保して、食糧を安定させるのが先決じゃ。その後、売るための鉄瓶や農具、鍋を作り……行く行くは武具を作ろうと思っておる」


 その言葉を聞いた、男鬼達はにわかに色めき立つ。


「武具だと!? へへっ、良いじゃねえか!」

「年甲斐も無く、心躍るものがあるな」

「農具か……この島でも作物が育つだろうか?」


 そんな男達を見て、リシンは大きくため息をつく。


「まったく、これだから男達ときたら……って、なんか違うのが聞こえたね」


「ホッホッホ、やる気になったなら良いじゃろうて。では、儂と赤鬼で採掘してくるから、おぬしらは今から説明する『水路』を作ってくれ」


「水路?」


 岩石と黑金の分別を行う『鉄穴流かんなながし』という行程があり、

その作業には水路が必要だ。

 居残り組の男鬼達に、つくりや仕組みを詳しく説明し

工事を依頼しておく。


 重労働ではあるが、やる気溢れる鬼達には

難しいことでは無いはずだ。




 そしてリシンと桃仙は、洞穴へと入って行く。


「暗いね、アタイの火で明かりをつけてやろうか?」

「ホッホッホ、安易に火を使うのは止めておけ、爆発する事もあるぞ。どれ、ワシが見てやろう……」


 桃仙は、辺りを見回すような動きで確認していく。


「ふむ、大丈夫な様じゃ。ほれ赤鬼、明かりをつけても良いぞ」

「まったく、人使いの荒い爺さんだね」


 そう言いつつもリシンは腰に下げた瓶から

酒を一口あおり、霧状に噴き出し

一瞬遅れて、指輪と腕輪に付いた火打ち石を

打ち鳴らし引火させる。


 その炎を鬼術で操る(・・)、鬼術とはそういう物だ。


「ホッホッホ、なかなか便利じゃの」


 そのまましばらく歩き、目当ての場所に着いた。


「ホッホ、着いたぞ。この辺りの岩を砕いてみてくれ」

「明かりはどうするんだい? 真っ暗になっちまうよ」


「ホッホッホ、ワシが預かろう。」


 ひょいと、リシンから桃仙の手に炎が移動する。


「なんて爺さんだよ……」


 両手の空いたリシンは思う存分

鬼術を用いて岩を操り、自壊させる。


「ホッホッホ、この位で良いじゃろう、持てるだけ持って行くぞ」

「なに言ってんだい? 一気に運ぶんだよ。転がせば出来るだろ? アタイ以外には出来ない技だろうけどねえ」


 潜っては岩を砕き、転がして戻るを繰り返し、

桃仙が充分と判断するまで続けた。


「ホッホッホ、もう良いじゃろう。さて、水路はどうなったかの?」


 二人が川の方を見やると、指示通りに出来た水路と

その傍らで、息を切らしている男鬼達が居た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ