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訣別

 リシンとウラ、卯堂も手伝い、鬼達を集める。


「まったく、相変わらずだね! 集めるだけで一日費やすってのは、どうなんだい?」


「……そうだな」


 リシンは、「ああ、グテツはあっちだったね」と思い

苦笑いを浮かべる。


「ウラ。グテツのヤツ、何を言うつもりかは分からないけど、久し振りに良い顔していたよ」


「そうか」


「グテツ殿は、自分のを通さず、シキョウ殿が残した枠組みを良く守ってくれている。今はそれだけでも有り難い」


 卯堂は、グテツを評価する言葉を口にする。

 リシンはその言葉に頷き、冗談めかして言う。


「アイツの事だから、狩りだ戦だ! とか言いそうな物だったけどね」


 ウラや卯堂も、確かにと同調する。




 やがて、鬼達が揃う。

 シキョウの時よりも明らかに時間がかかった。

 それはグテツが、首領としての

役割を果たしていないと感じる鬼が増えた為である。


 しかし、グテツはあれほど愚痴を言っていた

集まりの悪さを、全くと言って良いほど意に介さない。


 謡は……、来てくれたか。


 ──あんな顔をさせるのは、これで最後だ。


 グテツは心の中で呟く。

 そして、頭を上げ、聴衆達を睨みつける。

 そこには、威圧感というよりは

殺気に近い雰囲気を纏っていた。


「俺はよ……正直、首領なんてもんはやりたくねぇんだ!」


 ──嘘だ、小せえ頃から憧れてた。


「神仙桃? そんなもんは俺には必要ねえ!」


 ──確かに、俺には(・・)必要ねえ。


「製鉄? 金なんか稼がなくたって、俺は狩りで充分だった。それを、首領なんてもんに縛られて、好きなことも出来ねえ!」


 ──俺は、狩りが好きだった(・・・)


「だから! こんな下らねえ生活は止め、島を出て、俺は好きなことをして生きる! だから……俺は、お前らを見捨てる! 勝手に滅びやがれ!」


 グテツの言葉に、鬼達の不満は爆発した。

 日頃の不満や、グテツを貶める言葉

様々な誹謗中傷まで飛び交い、場は騒然とした。


 しかし、グテツは満足していた。

 信用を無くせば無くすほど、自分の思い描いた

『行く末』に到達しやすい。


「グテツ……嘘、だろう?」

「グテツ殿……」


 リシンと卯堂は愕然とする。


 だが、ここで想定外の事が起きる。

 グテツの意見に同調する者達が現れたのだ。


 それは、狩りを好む者達。

 桃の使用を進めている中、

未だに、相手に選ばれない男鬼達。


 その数は、決して無視できる物では無い

数に達していた。

 このままいけば、鬼同士の抗争に発展するのは

目に見えている。


 そんな時、グテツの前に一つの影が躍り出る。


「ウラ……か」


 グテツが呟く。

 ウラは、グテツを真っ直ぐ見据え、問いただす。


「グテツ、どういうつもりだ? お前が本心(・・)で言っていないことは分かっている」


「ケッ、何でもお見通しってか? 俺が、この生活にうんざりしているのは事実だ!」


「逃げるのか?」


「何だとっ!?」


 ──図星だった。

 あれこれと理由を付け逃げようと(・・・・・)していた。

 それを指摘され、認めたくないがゆえに

声を荒らげた。


「そうだろう? だが、四鬼の流れを汲む我らが、その責から逃れるわけにはいかない」


 グテツは、見逃してしまいそうになるほどの一瞬

悲しそうな表情を浮かべるが、すぐさま

いつもの様に、不敵な笑みに持ち直す。


「だったら、どうするって言うんだ? どのみち……もう後戻りは出来ねえよ!!」

「俺が止めてみせる!!」


 二人は同時に叫び、拳を交える。


 同時に放たれた拳は、互いの顔面を捉え

二人を吹き飛ばす。

 規格外の二人の衝突は、周りへの衝撃も相当なもので、

暴動寸前だった場に、静寂しじまをもたらすには充分だった。


 その身体能力による機動力で相手の攻撃を躱し、

巨体から生み出される破壊力を、相手に叩きつける。


互いに互いを、組み伏せようと拳を振るう内に

感情が昂ぶり始める。


「てめえに何が分かるっ! 登り詰めたと思った首領の座が、登ったんじゃ無く、置かれただけ(・・・・・・)だった、俺の気持ちが!」


 グテツの感情の乗った一撃が、ウラを捉え、吹き飛ばすが

ウラは、すぐさま体勢を立て直し、距離を詰め、

相手の攻撃を上手く避けつつ、拳を繰り出す機会をうかがう。


「そんな事は無い! お前は良くやっている! リシンや卯堂も、それは認めている! それに謡だって……!」


「……!!」


 僅かな時間、グテツが動きを止める。

 その隙を突いて、ウラの拳が、グテツに突き刺さる。


 その巨体を大きく吹き飛ばす。

 グテツは余りの衝撃に、意識を手放しそうになるが

すんでのところで、持ちこたえる。


 グテツが、すぐに立ち上がらなければと、手をついたところに

『潰尽』があった。


「俺は……もう、止まれねえんだよ!!」


 追撃を加えようと迫る、ウラの腹部目がけて潰尽を振るう。


 ──どうっ!! と、鈍い音が響き渡る。


 ゆっくりと、ウラが膝から崩れ落ちる。

 ウラが意識を手放す直前に見た、グテツの顔は……泣いていた。




 それから数日後、ウラが意識を取り戻す。


「ウラ殿、目が覚めたようですな」

「卯堂……と、謡?」


 目を覚ましたウラの傍らには、卯堂と謡が居た。


「ごめんなさい! 私のせいで、こんな事に!!」


 謡は涙を流し、地面に頭をこすりつけながら謝罪する。


「……どういう事だ?」


「私がもっと早く、グテツを赦していれば! こんな事にならなった! でも……グテツのせいじゃ無いって、頭では理解できても! 『心』がそれを許さなかったの!」


 一度も頭を上げない謡に困惑しつつ、卯堂に問いかける。


「卯堂、今の状況はどうなっている?」


 卯堂から聞かされた言葉は、ウラの想像を遙かに越えていた。


 ウラが敗れた後、グテツは潰尽をウラの傍に置き

ふらふらとした足取りで、島を出て行った。

 リシンは、気を失っているウラと立ち去ろうとしているグテツを

何度も交互に見て、ウラを卯堂に任せ、グテツを追っていった。

 それを追って、狩りを好む者達、繁殖相手に選ばれなかった男鬼

続々と周りが子を成していく焦りからか、

桃を待ちきれない女鬼達が、島を出て行く。

 残ったのは、桃によって子を成した女達と、その子。

 狩りが得意では無い者が幾人か。

 男鬼は、ごく僅かしか残らなかった。

 今や鬼ヶ島の鬼の数は、二十に満たない程になってしまった。


「リシンが……」


 卯堂は、無言で一通の手紙を手渡す。

 ウラは、その手紙に目を落とす。



 ──ウラ、アタイも凄く悩んだんだけど

グテツに付いていく事にしたよ。


 勘違いしないでおくれよ? ウラの事が嫌になったとか

そう言うんじゃ無いんだ。


 アンタは、何でも上手くやるじゃ無いか。


 でもアイツは……グテツは違うんだよ。

 アイツは馬鹿だから……ほっといたら

どこで野垂れ死ぬか分かったもんじゃ無い。


 だから、アタイが手綱を握って、ゆくゆくは

アイツを説得して、鬼ヶ島に連れ帰って来るよ!


 だから……それまで、待っていておくれよ。


 ────泪秦リシン



 ウラは、全身から力が抜けるのを感じた……。

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