4,黒死病
再開します。1週間に1話位の投稿になると思います。
俺たち5人は、ここにチームを結成した。
「さて、いつまでもここにいたってしょうがないな」
俺〈シユウ〉が言うと、みんな頷いた。
地図に沿って東へ俺たちは歩き始めた。
最初は草原ばかりだったが、3時間ほど歩くと、2~3k先に森らしきものが見えてきた。
さすがに今野は、自衛隊だけあってまったく疲れていないが、女性陣の方には疲れが見えている。
「向こうに森らしきものが見えるのわかるかい、森の入口まで行ったら休憩しよう」
「ここじゃダメなんですか?」
疲れた顔で、和恵さんが尋ねてきた。
「ここは、見晴らしが良すぎるし、森の入口の方がいいと思うよ。 何がでるかわからないからね」
「もうちょっとだから頑張ろう」
俺はそう言って先頭に立って歩いた。
1時間ほど歩くと森の入口にたどり着いた。
「よし、ここで10分ほど休憩しようか」
「多分、バンドの中に水が入っていると思うから、水分補給をしておこう」
「みんな大丈夫かい?」
「大丈夫です。」
「なんとか・・」
「平気です」
「私も」
順に、タダシ、カズ、リオン、シャルロットが答えた。
「神様も言ってたけど、この世界には魔物もいると言ってたから、これからは注意して進もう」
「俺が先頭で、次が君たち姉妹、それからカズ、最後尾をタダシに頼めるかい」
「それと一応ライフルも準備しておいてくれ」
「わかりました、シユウさんは武器持ってます?」
「ああ、俺はこれを使うよ」
そう言って、50cmの長さのくの字に曲がっているククリナイフを見せた。
「大きいナイフですね」
リオンがびっくりして呟いた。
「ああ、これとは長い付き合いだし、色々と便利だよ」
「みんな、バンドの中に食べ物って入ってるかい?」
「俺の中には、固形栄養食糧が1個だけだな・・」
俺が尋ねると、みんなの答えは、
「シユウさんと同じですね」
「そうか、本当、非常食だけということだね」
「この地図によると、多分、この森を抜けると村があるみたいだね」
「多分、あと5~6時間位はかかるかな」
「暗くなる前になんとか村にたどり着こう、たどり着けなければ、野営になる」
「タダシは大丈夫だと思うけど、他のみんなはつらいだろう」
「よし、出発するよ」
そう言うと、俺は立ち上がり、皆をうながした。
「さっき、言ったとおりの順番で行くよ」
シユウ、中村姉妹、カズ、タダシの順番で進んでいく。
日本でいう松のような木が茂り、松林の様相を示している。
木と木の間を、シユウは廻りの様子を伺いながら進んでいく。
途中で小休憩を挟み、5時間ほど歩くと、前方が開けてきた。
「よし、森を抜けるぞ。」
5人が森を抜けると、そこは草原が広がっていたが、500m先に、木の杭で囲いを
作っているのが見えた。
「多分、あれが村だな」
慎重に近づいていくと、3mほどの木の杭が地面に立ててあり、むき出しの丸太が木の杭に打ち付けられてある柵が作ってあった。
その長さは、門のある所より両側に100m伸びており、その先は直角にまがっているようだった。
「シユウさん、これってやっぱり外敵防止の柵ですかね?」
タダシが俺に尋ねてくる。
「そうだろうな、獣や魔物なんかいるみたいだからね、ここまで来るのに、俺たちは会わなかったのは幸運だったのかな」
「ここでじっとしていてもどうしようもないから、門のところに行こうか」
俺たちは、頑丈な丸太で作られている門の前にたどり着いた。
「さて、何が出るやら、君たちはちょっと離れていてくれ」
俺はそう言うと、一人門の前に立ち、大肥を張り上げた。
「おお~い、誰かいるかい」
しかし、返事は無い。
何度か声を張り上げたが、返事はない。
「おかしいな、これだけ大肥で叫んでるのに返事がないな」
そう言って、俺は門のところに行き、門を押すと、門はゆっくりと開いていった。
「なんかおかしいな、ちょっと調べてみるか」
タダシたちも俺のところに集まってきた。
「シユウさん、なんか変ですね」
「ああ、そうだな、中に入ってみるか」
「俺だけ入ってもいいけど、どうするかい」
「離れるのは駄目でしょう、一緒に行きましょう」
「そうだな、じゃあ、さっきの順番で行こうか」
そう言って、俺を先頭にして、門の中へ足を踏み入れた。
村の中には、一本道の道路があり、その両側に木造りの1階建ての家が
立ち並んでいた。
ただ、人の気配はしない。
「なんか嫌なにおいがするわ」
カズが呟いた。
俺が良く知っている匂い、これは死臭だ。
その時、3軒ほど先の右側の家の柱から、人影が出てきたと思ったら、その場に倒れた。
「みんなはここにいてくれ」
俺はそう言い、その場に駆け付けると、10代と思われる女の子が倒れていた。ただ、普通の人間と違うのは、兎のような耳が生えており、短いしっぽがついている。
「おい、大丈夫か?」
俺が声をかけると、その娘は、顔をあげて、「★☆▽▽」
「何語だよ、これ」
俺が困っていると、皆も駆け寄ってきて、カズが一言。
「お父さんを助けてって言ってるわ」
「カズさん、言葉わかるのかい」
「ええ、スキルのおかげか、言ってることは分かるわ」
「この奥の大きな家にお父さんいるみたい」
「高熱で、意識が無いんだって、この娘も熱ありそうね」
「そうだな、とにかくその家まで行ってみよう」
俺はその娘を抱えて、その娘の家の前までやってきた。
「カズさん、この娘のお父さんどの辺にいるのか聞いてもらっていいかい」
「ええ、わかったわ」
「一番奥の寝室に寝てるって言ってるわ」
「そうかい、じゃあ俺が様子を見てくるよ、疫病かもしれないから」
「タダシ、皆を頼むよ」
「わかりました」
俺は一人、家の中に入って行った。
ドアを開けると、そこは8畳ほどのリビングがある。木で作られた丸いテーブルと、丸い
椅子が4つあり、その奥に木の扉がある。
扉を開けると、細い廊下があり、片側に部屋が3つ並んでおり、それぞれ扉がついている。
「一番奥って言ってたな」
俺はそう呟きながら、一番奥の部屋の扉をノックした。
何の返答もない。
「まさか、もう死んでるって事は無いよな」
「失礼するよ」
俺はそう言いながら、扉を押し開けた。
中は薄暗く、奥にベッドがあり、誰か寝ているようだ。
俺は持っていた布をマスク代わりに口につけ、注意深く中に入って行く。
「おい、大丈夫か?」
声をかけるが返事はない。
ベッドに近づくと、50歳くらいの細身の男性が寝ている。
この男性も、頭に兎耳がついている。
なんとか息はしているようだが、顔は赤らみ、苦しそうだ。
「これは大分熱が高いな、しかも意識が無い」
「失礼するよ」
俺はそう言って、脈を診ようと、男性の手を取ると、男性の皮膚は黒紫色の斑点がや腫瘍があった。
しかも、身体が熱く、額に手を当てると、焼けるように熱い。
「まさか、これはペストじゃないだろうな」
ペスト、黒死病とも呼ばれています。
中世ヨーロッパで大流行したのは、1347年から1349年
持ち込んだのは黒いクマネズミとも言われている。