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あなたに  作者: 宮原叶映
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出会えたこと

 あなたに、出会えたことは俺の生きる証になった。

 叶翔は、すくすく成長した。生まれてから一年たっても、二年たっても、五年たっても、何一つ病気をしなかった。


 体が、俺に似ず丈夫で安心した。さなえちゃんに似て笑顔がとても可愛い。


「おとうさん?えほんよんで!」


「いいよ、どれ読もうかな?」


「これ、これがいい!」


「これ?うん、いいよ」


 俺の日課は、叶翔が夜寝るときと喫茶店の休みの日に絵本を読むことだ。


 その間に、さなえちゃんが家事をする。読み終わると、叶翔と遊ぶ。


 前までは、叶翔に絵本を読んだ後に家事の手伝いをしていたけど今は叶翔とたくさん遊んであげて欲しいとさなえちゃんから言われた。


 俺が、叶翔の記憶に残るかを心配しているからだ。二十歳を越えてから五年以上立つ。


 ここ最近、体に違和感を感じて来てる。体がだるく、高熱と咳が出てきた。


 俺のことを心配し、さなえちゃんは、お義父さん達に叶翔を預け、隼咲を呼んで病院に連れていってくれた。


 医者は、肺炎だと言った。俺には免疫力が少なく、ウィルス感染した可能性が高く、進行も速い。


 次に発作が出たら、今度こそ死ぬ可能性がある。一年後は、生きてない可能性があるという。


 元々、体が弱いこともあるので、今すぐ、入院して詳しい検査をした方がいい。


 たくさんの言葉が、俺に降り注ぐ。俺は、頭が真っ白になった。


 いつの間にか、病院のベットで寝ていた。


 さなえちゃんと隼咲は、たぶんお義父さんとお義母さん、じいちゃんとばあちゃん達に連絡しに行ったのだろう。


 突然、今までよりも、ひどい咳が出てきた。


 赤い血が、俺の手を濡らした。


 パニックになっていると、さなえちゃん達が戻ってきて、すぐにナースコールを押す。吐血した。


 発作が、出た。


「さなえちゃん、隼咲どうしよう?!俺、死ぬの?あの夢みたいに」


 俺は、咳をしながら二人に訴えるように言った。


「遼さん、落ち着いて!」


 さなえちゃんは、泣き出しそうな目で俺を見た。そして、手を握る。大丈夫と言うように。


「遼、落ち着け!」


 隼咲は、自分にも言い聞かすように言った。


「遼さん、しっかりして。目を閉じないで!」


 その言葉を最後に俺は、意識を手放した。

 

 後から、聞いた話だ。俺が手術室で、手術を受けているときに、家族のみんなが病院に来た。


 彼らは、辛い顔をしていた。それを見た、叶翔は、今にも泣き出しそうな顔でさなえちゃんに聞いた。


「おかあさん。おとうさんだいじょうぶ?」


「お父さんなら大丈夫!」


 さなえちゃんは、笑顔で叶翔やみんなに言ったらしい。


 数時間後、手術室を出た。俺は、まだ意識が戻らないままだった。


 二日後に目を覚ました。さなえちゃんは、俺の手を握っていた。

「遼さん、良かった・・・」


 と、涙を流しながら、でも笑顔で俺に何度も何度も繰り返した。


 その後、隼咲と叶翔が病室にお見舞いにやって来た。


 隼咲は、手に持っていた何かをバサッと落とした。


「おとうさん!」


 と、叶翔はベットに駆けてきた。

 

「遼!やっと目を覚ましたのか?良かった!」


 三人とも嬉し涙を流していた。

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