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あなたに  作者: 宮原叶映
14/19

まだ、生きる

 夢をみた。さなえちゃんが泣いている。


 さなえちゃんの手の中に小さなものが泣いている。それは、赤ちゃんだ。


 何で泣いているのかなと、思って声をかけようとしても、喉から声が出ない。


 何でだろう?目の前にさなえちゃんがいるのに、俺はベッドの上で眠っていた。


 怖くなった。俺は死んだのかと思った。


 死にたくない。まだ、生きたい。


 でも、俺を呼ぶ、声が聞こえた。


「り・・・さ・・ん!りょうさ・・・ん!起・・・て!」


 あまりにも、今、俺が見ている景色ではない。違和感を感じた。まだ聞こえる。


「りょう・・・さ・・・ん起き ・・!遼・・さん!」


 声が増えた。


「さな、どう・・た?こ・・・な夜・・遅・・に」


「遼・・・さん・・が起きな・・・の!死に・・くないってうな・・・ているの!変な汗も出・・の!」


「遼!起・・ろ!大丈夫だ!お前は、まだ、生きてる!」


「生きてる?」


 見ていた、景色が変わった。


「よかった。遼さんやっと、起きた」


 目の前にさなえちゃんと隼咲が、ホッとして、ため息をついていた。


「遼さん、大丈夫?すごくうなされてたよ」


「遼、どんな夢を見ていた?」


「俺が、病院のベッドの上で死んでいて、さなえちゃんが泣きながら、赤ちゃんを抱いていた夢をみた。俺は、まだ生きる。俺は、まだ生きたいのに死にたくないって…怖くなった」


「そうか。だから死にたくないって、うなされていたんだな」


「うん。そうしたら二人の声が聞こえた。隼咲に『まだ、生きてる』って言葉が聞こえて、これは悪い夢だ。俺は、生きてる?目の前の俺は、死んでいるのに生きてる?疑問に思ったんだ。そうしたら、目が覚めたんだ」


「なるほどな。その疑問が、声に出て夢から覚めたんだな」


「さなえちゃん?」


「・・・」


「さな、どうした?さっきから黙って」


「遼さんが、死にたくないって、うなされてたの。声をかけても、起きなくてすごく心配した。それと、夢の中で私が、赤ちゃんを抱いているって聞いて嬉しかった。でも、その私は遼さんが亡くなって泣いているって聞いて辛かった。だから、これが、正夢にならないように生きて欲しいって思ったんだ。少し、複雑な気持ちにもなったの」


「ごめん。でも、二人の声が聞こえたおかげで悪夢から目が覚めたんだ。ありがとう」


「遼さん。なにか、悩んでいることがあったら教えてね」


「うん、ありがとう。そうするよ。何が原因でこの悪夢を見たのかわかないんだ」


「水を取っていくるな」


「うん、ありがとう」


「焦らなくてもいいからね」


「うん」


 さなえちゃんに嘘をついた。悪夢の原因は、分かる。昨日の晩に、さなえちゃんがいないところで、話したことが原因だと思う。


 隼咲は、喉が乾いて起きて台所に行く途中で、俺達が寝ている座敷の前を通っていたら、さなえちゃんが大きな声で、俺を呼ぶ声が聞こえて心配して来たらしい。


「遼、落ち着いたか?」


 隼咲は、俺にコップを渡した。自分のぶんとさなえちゃんのぶんも持ってきたようだ。


「うん。落ち着いた。ありがとう」


 隼咲の顔は、少し辛そうにしていた。それは、俺がなぜこの悪夢を見たのか原因を分かっていたからだ。


「お前ら、水を飲んで寝ろ。遼。悪夢をまた見るのが怖いのなら、俺が横で話すぞ。さなも心配するな。お前らが寝るまで、ここでいてやるから安心しろ。遼が、またうなされていたら、俺がすぐに起こしてやるからな」


「それは、隼咲に悪いよ」


「気にするな。お前のおかげで、目が覚めた。しばらくは、寝れそうにないからな」


「ごめん」


「いいから、お前ら水を飲んだな。それは、お前らが寝たら片付けるから布団に入れ!豆電球にするぞ。今から、俺のすぐ眠れる話をしてやる」


 隼咲の話の内容は、覚えてないけど本当にすぐ熟睡することができた。


 これは、あとから聞いた話だ。俺がうなされて、さなえちゃんが、俺を呼ぶ声が部屋の外まで聞こえてたらしい。


 次に、隼咲の声がしてトイレをしに起きていたお義父さんが心配して、部屋の外で待ってたらしい。


 俺達が眠ったあとに、コップを持って部屋の外から出てきた隼咲に、お義父さんは心配して声をかけた。


「隼咲。遼君は、大丈夫か?」


「あぁ。今は寝てる。ここだったら起きるかもしれないから、リビングで話す」


「そうだね」


「遼は、たぶんだけど。さなが風呂に入ってるときに、俺達に話したことが原因で悪夢を見たんだ」


 隼咲は、悪夢の話をした。


「それで、うなされてる遼の声に、目が覚めたさなが、起こしてたってわけだ。今は、俺が昔さなに話したら、すぐに寝れる話をしてやって、二人とも寝たから安心しろ」


「あぁ、安心したよ。ありがとう。私達が、遼君の心を支えないといけない」


「俺は、はじめからそのつもりだ」

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