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歴史に関連する作品

宮本常一について   もっと広く知ってもらいたい、と思う方です

作者: 恵美乃海

民俗学者、宮本常一について、以前書いた文章です。

 03.09記


 近年知った人で、「ものすごい人だ」と思ったのは宮本常一。


 ひとことで言えば民俗学者ということになるが、そのひとことで言い切ってよい人物とは思えない。


 氏の出身地は、山口県の周防大島。実は私も本籍地は山口県大島郡久賀町。

すなわち、周防大島なのである。 


 私は出生地は岡山県久米郡柵原町で、大島に行ったのは、赤ちゃんの時と 13歳のときの2回にすぎない。


 後者では、そのとき関西に住んでいた、父方の祖父母、我が家及び父の四人の妹とその家族と、大挙して大島に行った 。  


 久賀は、私の先祖の地であり、父の出生地でもある。私が本籍を移していないのは、自分のルーツを忘れないようにしよう、と思っているからだ。  


 先祖の地に、そんなすごい人がいた、ということを40歳を過ぎるまで知らなかった というのは、忸怩たるものがある。


 名前だけは、それ以前にも、何らかの本で見覚えは あったような気はするのだが、どういう人生を送り、どういう業績を残した人 であるかを知ったのは、西暦2000年の1~3月に、NHK教育テレビの「人間講座」で、佐野眞一氏が、宮本常一についての講義をされたのを視聴してからである。  


 この講座については、1,2回抜けてしまったことがあったが、それ以外は視聴した。 講座のテキストも購入して読んだ。


 この人のやったこと。歩いた距離。話を聴いた人の数。残した著作を思うと、ただただ すごいとしか言いようがない。


 その視点は庶民のレベルを決して離れない。

氏自身が

「自分はまぎれもなく農民、庶民である」

ということを生得的に思われてもいた。  


 抽象的な思考、概念とは無縁で、ただただ、物と、生活を基盤に語る。  


 学界ともほぼ無縁に過ごされた人だが、

「これこそが実践的な本当の学問だ」

という思いは、この人に触れているとき、私の脳裏を去らない。  

 テキストの中で忘れられないのは、まず、常一の祖父の人間としての優しさ。  

 そして、郷土を離れることになった、まだ少年といってよい年齢の常一に対して、父が送った10ヶ条だ。


 この父も上の学校に行って学んだ人ではないが、この10ヶ条は、昔の人は特に学問がなくても、ここまで高い観点から世の中を見ているのか、と思わずにおれないような、深い観察力と洞察力に裏付けられたことばだった。これこそ真の生活知というものなのであろう。  


 司馬遼太郎も、宮本常一という人間と業績に対して、大変な賛辞を送っているが、当然の評価と思う。  

 

 さて、かくも宮本常一という人に捕らえられてしまった私だが、氏の著作については、上記のテキスト以外は、

「民俗学の旅」を読み通したのみである。

(この著作については、 父にも読ませたいと思って、読んでもらった。少年時代の郷土の年中行事など、

「うん、あのとおりだった」と読後、懐かしそうに語っていた)。  

 宮本常一はすごい、こんな人生を送ったら、という憧れの気持ちもある。しかし、能力、資質は無論言うまでもないことだが、性格において、私は氏と本質的に違う、と感じてしまう。  


 宮本常一。 

それは私にとっては、最大級の賛辞を捧げつつも、近づくことはで きない人、そう思う。  


 ところで、今の日本で、宮本常一、と聞いて、すぐにその人物と業績の概略を語れる人が 何%くらい、いるのだろうか。


もっともっと、一般的に知られるべき人、と思う。


 しかし、こういう筆者のことばを、今、冥界におられる氏が聞かれたとしたら、

氏は

「そんなこと、どうでもいいじゃないですか」

と、あの滋味溢れる温顔で、言われるのだろう。


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