おりもの の くに の くろぞめ しょくにん
ここは、おりもの の くに。
ひとびと は みんな、おりもの を しています。
おりもの に つかう、ぬの を つくる ひと。
ぬの を きって、かたち を つくる ひと。
きった ぬの を、ぬいあわせる ひと。
いろ を つけて、もよう を つける ひと。
ひとびと は みんな、すてきな しょくにん です。
みんな、ちから を あわせて、おりもの を つくって います。
でも、ひとりだけ きらわれもの の しょくにん が います。
くろぞめ しょくにん です。
くろぞめ しょくにん は、ぬの に、くろいろ を つける しょくにん です。
ひとびと は、くろいろ が ついた ぬの を みて、いいます。
「これは、きたない いろだ!」
「よごれて いる みたいだ!」
「せっかく きれいに つくったのに。」
それでも、くろぞめ しょくにん は、くろいろ を つけます。
ひとびと は、くろぞめ しょくにん から、はなれて いきました。
ひとびと が、はなしあって います。
「いちばん きれいな いろ は、なんだろう?」
「やっぱり きんいろ だよ。」
「そうだね! きんいろ は、きらきら して、とっても きれいだね」
「でも、いろ は ひとつ より、ふたつ つかう ほうが きれいだよ」
「あかいろ と あおいろ とか、きいろ と みどりいろ とか」
「それじゃあ、きんいろ に いちばん にあう いろ って、なんだろう?」
「うーん、きらきら している から、ぎんいろ で もっと きらきら したら きれい かな?」
「あかるい いろ だから、あかいろ だと おもうよ」
「きんいろ は ひとつで きれい だから、しろいろ が いいよ」
いちばん にあう いろ は、なかなか きまりません。
「そうだ! おおきな ぬの に、きんいろ を ぬって、たくさん の いろ を、すこしずつ つけて みよう」
「それが いい。いちばん にあう いろ が、きっと みつかる よ」
くにじゅう から、ぬの が あつめられ ました。
しょくにん たち が、ちから を あわせて、ぬいあわせて いきます。
やがて、そら の はんぶん くらい の、おおきな おおきな ぬの ができました。
「さあ、きんぞめ しょくにん の でばんだ」
きんぞめ しょくにん が、ながい じかんを かけて、ぬの を そめて いきます。
きらきら の、まぶしい、おおきな おおきな ぬの が できました。
そして、いちばん にあう いろ を きめる ために、しょくにん たち が、いろ を つけて いきます。
あか、き、あお、だいだい、みどり、しろ、ちゃ、ぎん。
そして、いちばん にあう いろ を、さがし はじめます。
「うーん。どれも きれい だけど、いちばん は わからないよ」
なかなか、にあう いろ は、みつかり ません。
そこに、くろぞめ しょくにん が やってきました。
そして、ぬの に くろいろ を、つけて いきます。
あかいろ が、ぬりつぶされます。
あおいろ が、ぬりつぶされます。
きいろも、みどりいろも、ぬりつぶされます。
ひとびと は、おどろいて さけびます。
「ひどい! なんてこと を するんだ!」
「いますぐ、やめなさい!」
「ああ、だいだいいろ も、くろいろ に ぬりつぶされて しまった。」
それでも、くろぞめ しょくにん は、くろいろ を つけて いきます。
しろいろも、ぎんいろも、くろいろ に ぬりつぶされて しまいました。
やがて、おおきな おおきな ぬの の、ほとんど が くろいろ に なりました。
「やっと、きれいに なった」
くろぞめ しょくにん が、いいました。
そして、ぬの の はし を つかんで、ふわりと ぬの を うかせます。
その て を はなすと、おおきな おおきな ぬの は、ふわふわ と、うかんで いきます。
そのまま ぬの は、そら に はりつき ました。
それ を みていた ひとびと は、きがつきます。
「わあ! とっても きれい!」
「ほんとうだ! こんなに にあう なんて おもわなかった」
ぬの は、ほとんど が くろいろ で、ほんの すこし だけ、きんいろ が のこって います。
「きんいろ に いちばん にあう いろ は、くろいろ だったんだ」
「いままで きたない いろ だと おもって いたけど、まちがい だったよ」
「これから は、くろいろ も ちゃんと つかう ことに しよう」
ここは、おりもの の くに。
ひとびと は みんな、おりもの を しています。
ひとびと は みんな、すてきな しょくにん です。
みんな、ちから を あわせて、おりもの を つくって います。
この くに の しょくにん たちは、おおきな おおきな よぞら を つくりあげ ました。
いちにち の はんぶん は、しごと を して、
いちにち の はんぶん は、きれいな よぞら を ながめて います。
つい思いついて書いちゃった。こんな絵本があったらいいな。