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暁の青年
日の昇る一瞬。
橙に縁取られた紅が水平線から這い上がる。それ迄の沈黙と暗闇を拭い去る力強さはどんな物にも代えがたい。
そんな景色を見た母は、息子にその願いを与えた。
【暁】
それが彼に託された想い。
6月28日、梅雨も明けない日々。
それでもその日は前日までの雨が上がり、世界全てがキラキラと輝いていた。天から降り注ぐ神の涙が浄化した地上はなお一層美しい。
そんな日の明朝に産声を上げた彼は、後に大きな使命を背負う事となる。その運命はあまりにも重く彼にのしかかった。
しかし彼にはこの名前の呪いがある。
混沌に射し込む、混沌を呑み込む【暁】としての希望が。