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黙示録(アポカリプス) SS  作者: 天雨美姫
5/10

謹賀新年~新春座談会~ネメシス&作品の部屋+α Ver.

三が日などとうにすぎてしまいましたが……もし良かったら読んでやってください


【都内某所:地下施設】


「なぁなぁなぁ、オレの海老誰かとったやろ!」


「残ってたから食べた」


「ライラぁああああああ」



 やはり普段の彼らは賑やかです。任務外では本当に家族のようです。

 ……あ、申し遅れました。私はネメシスの構成員、ティナと申します。お見知りおきを。

 今日はお正月ということで、上層部からおせちが届いたので皆で囲んでいるのですが……



「ティナ、もういっぱ……」


「旭さん、ダメです」



 予想はしていましたが、おせちのセットにはお酒も含まれていて、旭さんが先程からずっと飲み続けているのです。お正月とはいえ、いつ出動要請がかかるか分からない私たちです。お酒は程々に……



「ティナさん、わたしも」


「ライラさんッ? 貴方ほまだ未成年……では?」



 そろそろ私もキャリーオーバーでしょうか。カオスです。無秩序です。どうにか苦笑いでやり過ごしますが……こんなのを菅谷さんが見たらどうなる事やら。



「菅谷先輩、遅いですね……」



 ダラスさんと伊達巻を頬張っていた輪堂さんが少し寂しそうに呟きます。



「じゃあ、今のうちに恒例のアレしとこうや」


「そうですね。遅ければ先に始めろ、と仰ってましたし」



 恒例のアレ、とは。新年の抱負を宣言するというこの国の風習に則ったもの。拠点を日本に置くネメシスではいつからかこれが習わしになっています。


「じゃあ、最年長の旭さんからお願いしますね」


「俺は……美人人妻を振り向かせる」



 室内、それも暖房の効いた地下施設なのに、この冷気のようなものは何でしょうか。輪堂さんやライラさんの顔を見ると……嗚呼、成程。冷笑でしたか。これは、最初に旭さんにお願いした私の責任ですね……。



「旭さん、それは無いわぁ。抱負ってのはな? 『今年も健康で長生きする』とか、そういうやつやで」



 なんと……!

 トネリコさんがいつになくマトモな事を……いえ、失礼しました。つい口が滑りました。腕組みをしながら旭さんを説教するトネリコさんが真面目な方に見えてきました。これが初夢だったらとんだオチですが。



「じゃあ、トネリコの抱負はそれなの?」


「え、んなわけないやん、ライラ」



 え、んなわけないんですか……?



「新しいファッションに挑戦するっちゅうのがオレの抱負やで」


「新しいファッションって言っても、もしかして、ちゃんと服着るの?」



 輪堂さん、ありがとうございます。私もそれを訊こうと思ったところです。いつも、ジーパン、上裸、その上に白衣という……いくら暗部とはいえ、公務員がする格好ではありません。

 もしやそれを改めてくれるのでしょうか……!



「ほら、もうちゃんと()うてきてんで。ほら、ちょっと薄ピンクの色ついた白衣やで。……なぁ、誰か突っ込んでえや」


「ケッキョクソレカイナ。ピンクヤノニハクイカーイ。はい、これで満足?」



 ライラさんが超棒読みで関西弁風に突っ込んでくださいました。誰にもノッて貰えないトネリコさんは今にも泣きそうですが、私もそこまで慈悲深くは無いので放置します。



「ダラスさんは?」


「穏便。これが一番だよね」



 面倒臭くなったのか、海老の殻を剥かずにそのままかぶりついているダラスさん。貴方のその食べ方が一番穏便じゃないですよ、ワイルドです。



「ねぇ、私のとてつもなくどうでも良さげに思われるだろうから先に言っていい? 茜さん」


「え、いいわよ?」


「新しいシューティングゲームでフルコンボする。今年こそは絶対して、全国ランキング一位になるの。以上」



 ……前振りをしたので良しとしましょう。全く。相当なゲーマーですね。ライラさんは。まぁ、感情を表に出さない彼女も年相応に興味関心等があるのは良いことです。



「では、最後に輪堂さん」


「最後? ティナさんは?」



 すっかり忘れていました。年功序列であれば、旭さん、ダラスさん、トネリコさん、私、の順でしたが序盤からズレてしまったせいで忘れるところでした。



「僕はもちろん、今年もしっかり皆様をサポートしていきたいと思います」


「わ、私も同じくです! 装備の整備とか、臨場の時とか、色々な場面でサポートします!」



 どうかしたのでしょうか。みなさんの視線が輪堂さんをロックオンしています。何かあるのでしょうか?



「皆、と言うよりアレだよね……」


「せやな、()()()やな」



 みるみるうちに……輪堂さんの顔が赤くなっていきます。身近な物でお正月らしく例えるなら、お重の中の朱塗りのように。



「ばばばば、バッカじゃないのっ? 皆に決まってるでしょっ」



 私が思うに……いや、皆さん思うに。彼女の今年の抱負は……



「貴様ら……いい身分だな?」



 噂をすればなんとやら、お帰りになったようです。流石に菅谷さんのいる前では殆ど誰も冷やかしません。というより、今日は特に……菅谷さんの表情が強ばっているので、火に油を注ぐなんていう馬鹿な真似をする人は居ないでしょう。お正月ですし。



「ライラ? それは、何を持っている」


「トネリコに飲まされた」


「ぬわぁああああ?! さらにその仕打ち?! ライラちゃん?」



 菅谷さんの表情は全く変わりませんが……呆れたように大きく溜息を……。震えているトネリコさんを一瞥し、黒いコートを脱いで壁にかけました。その後から、いつの間に現れたのか、小さな少女が続きます。



「あけましておめでとう、(ぬし)よ。ほれ」



 菅谷さんのことを(ぬし)と呼ぶこの少女は、ハビさん。刀の精らしいのですが詳しい事は私もよく分かっていません。

 彼女は菅谷さんに小さな手をグイッと差し出してふんぞり返っています。どうかしたのでしょうか。



「ハビ、なんだその手は」


「大人は子供に渡すべきものがあるであろうが! さっさと寄越すのじゃ」


「ケッ……子供はわざわざそんなこと言わねぇよ」



 その一部始終を同じように見ていたダラスさんが小さく吹き出してしまいました。さらなる波乱が……。心の中で頭を抱えます。



「なぁにをいうか、この若造が!」


「分かったから、落ち着けハビ」



 しかし流石、菅谷さんです。ハビさんをなだめて……ズボンのポケットから何かを取り出しました。小さな封筒……でしょうか?



「いくらじゃっ! いくら入っておるのじゃ!」


「ハビさん、わざわざそんな事聞くものでは……」


「でかぱいは黙っておれ!」



 ハビさんは、子供なのかお年を召しているのか、時々分からなくなります。まぁしかし、これも日常茶飯事です。



「なぁなぁ、オッサンにもあったりしねーかなー?」



 旭さん、貴方、肩書きは一応刑事さんですよね? ただの酔っぱらいにしか……って、いつの間に!

 お酒が半分以上減っている……!



「酒臭い奴にはやりたくない……と言いたいところだが」



 なんということでしょう、菅谷さんが……皆さんに小さな封筒を!



「ティナ、お前も。臨時ボーナスだ」


「え、貰っていいんですか?」



 私にまで……?

 皆さんはそれぞれに中身を確認していらっしゃいますね。……では私も。



「こ、こんなに……?」



 想像以上の額に同様を隠せません。元々危険なお仕事なのでお給料は良いのです。なのにこんなに貰っても良いのでしょうか。

 縋るような思いで菅谷さんに視線を送ります。

 すると、それに気づいた菅谷さんがそっと耳打ちしてくれました。



「いつもコイツらの面倒見てくれてるからな。少し弾んでおいた。めちゃくちゃな奴らだが、今年も頼むぞ」



 あぁ、この人に付いてきて本当に良かった。改めてそう思います。ぶっきらぼうで無口な人ですが、やはり彼は【良い人】だと私は思います。

 私がここに来る前、彼には相棒が居た、と聞いたことがあります。しかしその人物に裏切られてしまい今に至る、と。その人は非常に優秀な人で、今の私が担う策謀の任についていたそうです。

 何故菅谷さんを裏切ったのかは知りませんが、きっと彼は気づけなかったのかも知れません。菅谷さんの人間としての素晴らしさに。居場所のなかった私に居場所をくれた彼の器量に。



「ええ、もちろんです。任せてください」


 □◆□


【――――:??】



「うふふふふふ……嗚呼、あの顔、声、立ち姿。思い出しただけで胸が高鳴るわ……」



 暗い路地の奥で月を拝みながらブツブツと呟く女が一人。

 死んだ筈の彼女がここに居るということは、ここは地獄かなにかだろうか。そう、言うまでもなく。彼女こそ第一の鬼バリッサである。



「新たな年の始まり……そして、世界の終焉の時は迫るのよ。リリー様の心臓を手に入れる日はもうすぐそこなのよ」



 割れた鏡を見ながらうっとりとした表情を浮かべる彼女。



「そして、レン様と私が結ばれ、契を交わす日も……うふふふふふふふあははははははははははははははははははははは。狙うハートが増えちゃって、大変よ、ねぇ、タラちゃん」



 女の高笑いはいつまでも、何処までも。暗い路地で反響しながら響き渡った。



 □◆□


【――――:作者の部屋】



「あけおめー」



 でた、やかましいやつがやって来たぞ。



「あけおーめーだよー!」



 え、ちょっと待て。なんで此奴らが此処に……!



「まのー、こだまとみきてぃ連れてきちゃった!」



 この黒髪でタレ目の少女は、こだま@のい(または、こだま=アプリコット)。私の作品『黙示録(アポカリプス)』の女子キャラを担当してくれているアートディレクターだ。あぁ、私? 私は総監督(プロデューサー)、つまり、執筆者。ペンネームは天雨美姫だけど、此奴からは【まの】と呼ばれてるし、私も彼女を【のい】と呼んでる。以後、お見知りおきを。


 そして、先程のいが言った【こだま】と【みきてぃ】は、お馴染み、本作品でのヒロイン【こだま=アプリコット】と、その姉である【天雨美姫】である。

 私たちと彼女達の関係。それは、同姓同名の我が子である。



「やっほ、あけましておめでとう」


「ねぇ、あんた達がメタ発言すると文学として成り立たないんだけど。分かってる?」


「そもそも、これって文学なわけ?」



 新年早々、辛辣な言葉を浴びせかけてくる、長い黒髪、額に白い布を巻いた女。此奴こそ、私の子供、天雨美姫である。本作の衣装である黒いコートのままだ。



「こら、みきてぃ。まのをいじめないの。ねぇ、ここならさ、メタ発言してもいいんだよね!?」


「……いつ誰がそんなことを言いましたか」


(わらわ)が言うたぞ」



 すると、デスクの上に人影が現れた。背丈は幼稚園児、いや、小学生程度。着崩したというか、奇抜な和服のようなものをきている。



「は、ハビ……? ネメシスVer.の所で出てたじゃん」


「妾の抱負を聞いてもらえなかったからのう」


「私とおねーちゃんもそうだよ!」



 あちゃー……。それでわざわざ乗り込んで……まてよ、そうなるとあと五人くらい押しかけてきそうな……! いや、もっとか、六人だ。



「あけましておめでとうございマス!」


「御機嫌よう、今年もどうぞ宜しくお願い致します」



 でた、辮髪の青年、(オウ) 鈴風(リャンフォン)と、こだまたちの同級生のお嬢様、次期生徒会長の神崎静だ。

 さらにその後には……



「酷いですよ、私もみなさんとお雑煮食べたかったです……」



 金色の髪、碧眼、スラリとした出で立ち。クレイス=エストラ姫である。少しお怒りのようだ。頬をぷうーっと膨らましている。



「おう! いい天気だな、ガッハッハッ! 今年もビシバシビシバシ鍛えて鍛え抜いて、健康に青春ライフをえんじょぃ……」




 バンッ




 何か喚きながら入ってきたから却下。佐和山先生(たいいくきょうし)に幸あれ。


 よし、もうこれで誰も入れない。あの二人はそれなりに主要キャラだから悩むが、いや、二人というか一人というか、まぁそんなことはどうでも良くて



「何が」


「どうでもいいの?」



 背後から消え入りそうなか細い声。初夢から悪夢なんていう縁起の悪い事じゃないといいんだけど……。

 恐る恐る振り返る。



「やぁ、終焉の鬼(リリー)始祖の鬼(リリー)



 二人とも人の形で出てきたもんだから、どっちがどっちか分からん。



「よーし、みんな揃ったし、抱負発表はじめよっ!」



 のいが何故か仕切り始める。もうどうなっても知らないからな?



「じゃ、まずは始祖リリの方から!」



 あぁ、始祖リリというのは始祖の鬼(リリー)のことである。



「ふっふっふ、大暴れしてやるよ、ヒャッハー!」


「テンション高いねー。じゃあ、終リリは?」



 言わずもがなだけど、一応、終リリとは終焉の鬼(リリー)の事である。



「終わらせる……(リリー)が始めたこと全てを!」


「ちょっと待てーい!」



 すかさず止めに入る。何故かって?

 ネタバレ禁止だから。うん。この辺で止めておかないとね。



「ネタバレ厳禁。OKかな? 諸君に言っているんだよ」


「じゃあ、妾は……もうちと出番を増やしてはくれんかの。(つい)でに、高給が欲しいのう……」


「メタ発言も禁止じゃあぁあああ!」



 正月早々、(プロデューサー)の声がかれそうです。



「あ、じゃあボクの抱負は、風太と新しい技に挑戦することデス!」


「では、私は皆さんに頼られる生徒会長になることです!」


「私は、皆さんに馴染めるように早くこの国の標準的な生活に慣れたいと思います」



 リャンフォンと静、そしてクレイスの力のこもった抱負に拍手が巻き起こる。私も他の誰よりも拍手喝采を浴びせかけた。

 流石優等生のお三方だ……!

 うちの子たちにも見習って欲しいんだけど……



「じゃ、こだまとみきてぃヨロシク」



 遂に、のいが我が子達に。……賽は投げられた。静かに見守るしかない。

 すると、二人は何故か向かい合った。空間に静寂と、ピリリとした緊張感が漂う。何故だ。パチパチパチと何かが弾けるような音まで。


 部屋の照明が点滅を始めた……おかしい、何が起こっている?!



「私の抱負はね、おねーちゃんを倒すことだよ」



 風もないのに、こだまの杏色の髪がふわりと揺れる。



「私の抱負は、(こだま)を取り戻すことだ……!」



 風に煽られたコートがバサバサと音を立てる。

 嫌な予感しかしないんですけど。


 そして次の瞬間、二人は衝突した。二人の間から閃光が(ほとばし)る。

 スパークだ……!


 双方の手には刀と光る鞘が握られていた……。おい、リリーも参戦してんじゃねぇぞ!

 しかし、もうこうなってしまえば作者、総監督(プロデューサー)である私やアートディレクターの()()であっても止めることは出来ない。

 硬いものがぶつかり合う音、そこから少し遅れてやってくる衝撃波。

 高く飛び上がったこだまが美姫の脳天をめがけて鞘を振り下ろすが、美姫は身体を少しずらすだけで避けてしまう。そして、息をつく間もなく刀を水平に薙ぐ。

 それをしゃがんで避け、篭手を狙ってこだまが鞘をぶん回す。

 美姫は避けるのを諦めて刀で受け止めた。鍔迫り合いになる。



「ねー、まの」


「なに?」


「これさ、ドカーンってなる?」


「お約束ならね」


「お約束かぁ」



 のいは、まるで人事かのように、こだまと美姫が戦う姿を眺めている。巻き込まれるとは思っていないのだろうか。



「こだまに……バニーガールの衣装着せたいなぁ」


「はぁ?」


「これ今年の抱負」



 真顔でそんなこと言われても私は困ります。

 中一の頃から同じクラスだが、やはり此奴は変な奴だ。



「まの、まのの抱負は?」


「えー。取り敢えずは大学受かって……『黙示録(アポカリプス)』更新することかなぁ」


「変なの〜」


「は?」



 いや、至って普通だろ。

 と、突っ込もうとした。




 刹那




「うわぁああああああああああああああ」


「らぁあああああああああああああああ」



 こだまと美姫の咆哮と共に、空間が爆ぜた。強い熱線と爆風に見舞われた。

 上も下も右も左も分からない。



「まの〜大丈夫?」


「夢であってほしい……」



 どのくらい吹き飛んだか分からないが、暫くすると背面に強い衝撃が走り、運動不足気味の体がバウンドする。

 ちらりと見ると、のいも同様に地面に倒れ込んでいた。


 これは夢じゃないのだろうか、夢だとすれば悪夢だが、現実だったらもっと恐ろしい。



「でもさ、現実(リアル)もそんなに甘くないよね、あと、一週間だよ? センター試験」



 夢も現実も、時に理想ですら甘くないのがこの世の中だ。



Happy new year………To be continued

本編はもうちょっとちゃんとした文章にしたいのでもうしばらく待ってくださいませ


では、受験(いくさ)に行ってまいります。

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